あきらめ狂詩曲
好きよ、私はあなたのことが大好き。
でもね、あなたは決して私のことをそういう風に見たりはしないでしょう。だから、ねえ、せめて……。
事の発端は、一人の女の子が、一人の男の子に恋をしたことだった。
その女の子は男の子に相談に乗ってもらって、それから、彼のことが好きになってしまったのだった。
けれどその男の子は恋愛に興味のない男の子だった。自らが本気で好きになった人にしか心が向かない人であった。
その女の子は残念なことに、彼のその対象にはなれなかった。仲のいい女友達。それ以上でも、それ以下でもなかったのである。
その事実を知ったのは、その女の子と、男の子と、もう一人の男の子と三人で話していた時のことだった。
「本気で好きになったらなりふり構わず追いかけるけど、そういう人が現れなければ、一生独身かな」
その女の子は思いました。自分の感情のコントロールがうまくできてよかった、と。そうでなかったら、おそらく泣き出してしまっただろうと。その時、その女の子は思いました。自分はその男の子のことがこんなにも好きだったのかと。
その女の子がその男の子のことを好きだと自覚したのはつい最近のこと。直近にあった恋愛のごたごたを小説にしようと考えたとき、ラストは、その男の子とくっつくか、その男の子が亡くなって、それを慰めてくれた別の男性とくっつくかの二つしか思い浮かばなかった。それで彼女はその男の子のことが好きだと自覚したのだ。彼を差し置いてほかにくっつきたい人はいないと。
その後も何度か、その女の子は寂しいときにその男の子のことを思い出していた。つらいとき、怒られた時、そして、死の恐怖を感じたとき。
そういったとき、彼女の心の中には、彼がいた。しかし彼は彼女が彼を思うようにはおもっていなかったのだ。
その事実を目前にして、彼女は泣いた。その日の夜、部屋に帰って、一人で……。
好きよ、愛してるわ。でも、あなたは私の方を見てくれない。
ならば、せめて……。
彼女は、彼を永遠に自分のものにする……。