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兄といじめっこ

 沢山の方に前作を読んで頂いて感謝感謝ですm(_ _)m


 調子に乗って続編を書いてみました。


 ヒロインな兄から見た妹のお話。お楽しみ頂けると幸いです。


 

「お~い。総司そうし~。お客さん」


 俺が食パンくわえて公道を突っ走ったその日の昼休み。名前を呼ぶ声を聞いて机に伏せていた顔を上げた。教室前方の入り口に目線をやるとそこには俺の妹の相澤あいざわ みやびがいて、無邪気な笑顔でこちらに右手を振っていた。左手には女の子が食べるにはいささか大きい弁当をさげている。

 

 俺は慌てて窓際一番後ろの自分の席を立つと、教室のあちこちから雅に向けられる野郎どもの視線にイライラしつつ雅の元に向かった。俺の妹を変な目で見るんじゃねぇ。と叫びだしたい気持ちを抑え、野郎どもを睨みつける。途中あちこちに体をぶつけ地味に痛い。


「悪いな。わざわざ弁当届けてもらって」


何故か俺を見てニヤニヤ笑っている雅を無視してそう伝えると、気にしないでと軽い返事が返ってきた。

 

 俺の妹である雅は教室の状況を見ても分かる通りモテる。背中まで伸ばした艶々ストレートの黒髪に整った涼しげな顔立ち。150センチ強の小柄な身長から繰り出される上目遣いは、兄である俺ですらヤバい時がある。見た目の涼しげな印象に反して誰とでもすぐに打ち解ける気さくな性格は、老若男女問わず誰からも好かれている。

 しかし本人はいたって無自覚でところかまわず繰り出される上目遣いと振りまかれる笑顔に哀れな被害者が続出している。そしてその被害は俺の身近な人間にも及んでいるわけで…。


 肩をたたかれて振り向くとそこに哀れな被害者その一がいた。


 城戸きど かける。俺の昔からの親友だ。明るい茶髪に鋭い目つき。見た目はヤンキーくさいが以外と面倒見がよく俺がどじ踏むとよく助けてくれる。



 こいつは幼稚園児の頃から雅が好きだ。雅に近付こうとよく俺に絡んできていた。近づけたくなかった俺は頑としてそれに抵抗し、しばしば殴り合いにまで発展していた。今でこそ186センチという巨体の俺だがその頃はずいぶん華奢で一見女の子の様にも見えていた。さらにこいつは尋常じゃなく目つきの悪いガキだったため、パッと見俺が一方的に虐められている様に見えていたようだ。実際は単なるガキの喧嘩だったわけだが雅を誤解させるには十分だった。

 ある日雅はいつものように俺に絡んでいたこいつの襟首をひっつかむと、どこから持ってきたのかヌメヌメとした大量の蛙の卵を服の中に流し込んだ。当然辺りは大パニック。翔は泣き叫び、俺は慌てて翔の服を脱がしにかかり、周りの大人はどうしてこんな事をするのかと雅を問いつめていた。雅はそんな周りをすべてスルーして翔の前に立つと


「これ以上そーちゃんをいじめたらゆるさないから。」


と一方的に宣言して颯爽と去って行ったのだ。何とも男らしい態度であった。後に残された俺と翔は呆然と雅の後ろ姿眺めているしかなかった。ポツンと残されたバケツの青さが嫌に目に焼き付いた。


 しかしそんな事件があったにもかかわらず翔はますます雅のことが好きになったという。

 ゲッこいつ変態マゾかよ。と俺は若干引くわけだが、翔は暴力的な態度を改め俺に復讐するでもなく変わらぬ友情を示してくれた。そんな翔の心の広さに俺は心の底から尊敬の念を抱いたものだ。こうして翔を危ない性癖に目覚めさせ、心に巨大なトラウマを残した事件は終息した。




 そして現在。あれから10年ほどの月日を経た今でも翔は雅に変わらぬ愛を注いでいる。今も何とか雅と話そうと必死である。 


「雅じゃん。なに総司、弁当忘れたの?」


 対する雅はというと微妙に嫌そうな顔を翔に向けている。俺を虐めた嫌な奴という印象が色濃く残っているのだ。


「そうなんです。お兄ってばうっかり者だから…。誰かに虐められないかほんとに心配で」


 雅はそう牽制をかけると汚物でも見るような冷め切った目で翔を見る。


 雅…お前は俺の母親か。そしてそこ!恍惚とした顔を雅に向けるな!雅が汚れる。


 恍惚とした表情で熱い視線を送る男と冷め切った表情で絶対零度の死線…いや視線を送る女。あまりの温度差に二つの視線の中間地点でヒビが入りそうだ。


 あらやだ何このカオス。


 誰か助けて~と心の中で叫んで見るも、都合よく救世主が現れるわけもなく俺は意を決して二人の視線の間に割って入った。


「雅。昼休み終わるから早く弁当くれ。お前もまだ飯食ってないだろ?もう戻った方がいいんじゃないか?」


 間に入った俺を見て一気に和らいだその視線にホッとしつつ、後ろからグイグイと押してくる男を押さえ込む。バスケ部スタメンなめんな。お前程度のぶつかりなど俺のディフェンスにかかれば屁でもないわ。俺の平穏の為にもしばらくは雅の視界に入んじゃねぇ。


 俺は弁当を受け取ると後ろの男を押さえ込んだまま雅の背中を見送る。その後翔から恨めしげな視線をガンガン浴びつつ弁当に舌鼓を打つのだった。

 いじめっ子はいじめっ子ではなかったようです(笑)

 意外に鬼畜な雅なのでした。兄と翔くんは未だにヌメヌメした物と粒々した物が苦手です(;´Д`)


 少し長くなりそうなので分けることにしました。次回もよろしくお願いします。

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