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ミッドナイト・キャナル  作者: 河野 る宇
◆第2章~怪盗
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*黄金の閃光

「も~、折角のチャンスだったのに……」

 うなだれて部屋のドアを開いた。

「邪魔さえ入らなければ上手くいってたのに」

 ……と思うのに。

 コンビニの袋をリビングテーブルに乱暴に投げ置いて、深い溜息を吐き出す。テレビを付け、袋からおにぎりを2つ取り出した。

「そういや明日は休みじゃん。ゆっくり彼女を探そうかな」

 独り言をつぶやいておにぎりをパクつく。

「名前知らないからどう呼んだらいいのか……。! そうだ。『エメラルドの君』はどうだ」

 うん、我ながら上手いネーミング。

 テレビは相も変わらず『怪盗』について騒いでいるが、今の彼には右から左──頭の中では、しっかりと焼き付けた『エメラルドの君』の姿が延々と流れていた。

 明日は早く起きて『エメラルドの君』探しだ! まだ21時だというのにテーブルを端に寄せ、布団を敷き始める。

 しかしふと、

「そういや彼女って何歳だろう?」

 僕よりは年上っぽかったけど……外国人の年齢って、見た目じゃいまいち分かんないトコあるんだよなぁ。

 などと、ぶつぶつ言いながら潜り込んだ。


 深夜2時──「眠らない街」とは言うけれど、その路地裏は薄暗く誰1人そこに目を向ける者はいない。

 そんな、とある路地裏に一つの怪しい影が……暗闇に映えるのは金のショートヘア。黒い服に身を包み、目から下は黒いマスクで顔を隠して暗視スコープを装着している。

 音に注意しながら周囲を見回すと、およそ3mの高さに小さな窓あった。それを確認し、狭い場所を利用して飛び上がり窓のへりに手をかける。

 窓はもちろん閉まっているが、その影は片手で何かの作業を始めた。

 黒いベストのポケットに手を入れ、透明シールのようなものを取り出す。それを曇りガラスに貼り付けて、再びポケットに手を入れた。

 出したものを手にはめる──ナックルダスターだ──窓のへりにかけている手に力を入れ、透明シールの貼られたガラスに拳を叩きつける。

 窓ガラスは音もなく割れ、シールの端を持って剥がすと割れたガラスもついてきた。破片のついたシールをコンクリートの地面に捨てるが、高い音も立たずにペシャリと落ちる。

 穴の空いた窓から腕を突っ込んで鍵を開けるが、この窓は風を送り込むための外倒し窓のため、普通ならそんな隙間から中に入ることなど不可能だ。

 しかし、その影はポケットからまた何かを取り出すと、接合面のネジをいじり始めた。数秒後──道具を仕舞い、開いた窓に手をかける。

 窓はいとも簡単に大きく開かれ、するりと侵入した。


 薄明かりのなか、店内を探る。

 監視カメラの赤いランプが、威圧感を与えるようにいくつも点灯している。そこかしこにセンサーが設置されていることが窺えた。

「頼む」

 確認した影が左耳に装着している小型のヘッドセットにマスク越しで小さく発すると、微かに聞こえていたモーターらしき音が一斉に消えた。

 静まりかえった店内で、ペンライトのスイッチをONにして目的のものに近づく。影は、展示ガラスに収められている宝石を見つめてガラスカッターを取り出した。


 朝10時──

「うおおおっ!? 寝過ぎたぁ!?」

 健吾は目覚まし時計の示す時刻を見て飛び起きた。

「何やってんだよもう~」

 頭をくしゃくしゃしながら、とりあえずテレビをつけて洗面所に向かう。顔を洗って歯を磨きリビングに戻ると、気になるニュースが流れていた。

「! あの宝石店……」

 映されている店には見覚えがある──昨日、エメラルドの君が入っていったお店だ。まあ偶然なんてよくあることだけどね。

 人が集まれば自然と犯罪件数も増える。

 僕も何度かそんな経験あるし……と着替えを済ませ、アパートをあとにした。

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