第6話 Side カーミラ 激闘バジリスク!
それから私は町を離れ、魔獣の森と呼ばれている広大な森のある方へ向かった。
町を抜けるとそこには草原が広がっており、そのさらに先には森が広がっている。その森はたくさんの魔物が住んでいることから、魔獣の森と呼ばれるようになったらしい。
しかし森も広いが、草原もかなり広い。だから、森に行くまで結構時間がかかる。
そしてようやく森の入り口に差し掛かろうというところで、ぐーっという鈍い響き渡る。
「お腹空いた・・・」
私は腰袋から干し肉を一枚取り出し、口に含んでモソモソと租借した。
「もぐもぐ」
ん、美味しい。この干し肉もルミアが作ってくれたものだ。ルミアの味付けは基本的にしっかり味が付いているのにさっぱりと食べられる。この干し肉にしたって、味がしっかり付いているのに水がなくても食べられるくらいさっぱりしている。それでもここに来るまでに咽が渇いていたから水を口に含んで咽を潤した。
お腹がそこそこ膨れたところで森の中へと足を踏み入れた。とは言えこれだけ広いとそう簡単に敵とは会えそうにない。
しかしただ探し歩くだけというのもつまらない。だけど私はこのつまらない散歩を楽しくする方法を既に知っている。
それは歌だ。
この森の中で歌うのはとても気持ちがいい。木と木の間隔が広いおかげか、声がうまい具合に跳ね返って綺麗に響き渡る。
とは言え、私は幼い頃お母さまが歌ってくれていた歌しか知らない。しかも歌詞なんて覚えていない。
そんな私でも音だけはなんとなく覚えていた。だから「ああぁーあぁー」とお母さまの歌っていた音をなぞる。
ん、今日もよく響いて気持ちいい。
歌いはじめて1時間ほど経過したが今日もなかなか会えそうにない。小さな魔物には何度か出くわしたが、向こうから襲ってくる気配がなかったのでそのまま横を通り過ぎた。
いつからだっただろうか。魔物が向こうから襲ってこなくなったのは。
それからさらに1時間ほど経ったところで少し先にある木々がざわついているのが見えた。
その様子からしてかなり大きい魔物であることが分かる。歌うのをやめ、そっと近づくとその巨体が姿を現した。
竜のようなトカゲのようなその容貌。緑色の皮膚。間違いない、バジリスクだ。
ぎょろりとした眼がこちらを向いた。
視線が絡み合う。
「私と、戦おう」
バジリスクに向かって声をかけた。
私は魔物と戦うときに決めていることがある。
それはこれが生死を賭けた戦いだということを理解してもらうこと。
私が生きるためには魔物を殺すしかなく、魔物が生きるためには私を殺すしかないということを。
それを分かっていない相手を襲うことなんてできない。
だから、戦う前から私が本気であることを知ってほしい。
―――――― アナタ ヲ ――――――
―――――― 殺ス ―――――――
想いが空気に伝わり、空気が相手に伝える
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
バジリスクが空に向かって大きく吼えた。
ん、しっかり伝わったみたい。
これでお互いに戦闘態勢だ。心置きなく戦いをはじめられる。
さぁ、はじめよう。戦いのしらべを。
私は背中の剣を抜き放ち一息で間合いへと入り、その巨体へ叩きつけた。だが硬い皮にはじかれ、手に痺れが伝わってくる。
直後尻尾が襲い掛かってきた。私は跳びあがって避け、そのままの落ちる勢いを利用し背中へと剣を振り下ろしたが、またも硬い皮に阻まれる。
しかし攻撃は弾かれるものの、全く効いていないわけではないことを以前の戦いから知っている。斬りつけたときの衝撃が少なからずダメージとなっていたようだった。しかし、それではバジリスクを殺しきることはできない。
私はあえてバジリスクの正面に立ち、相手の攻撃を誘った。
右爪が私に向かって勢いよく振り下ろされる。私が右前に跳んで避けると、背後で打撃音が鳴り響き、大地が震えた。そこに待ち構えていた左爪をさらに振り下ろされる。左に跳んで避けるとまた目標を失ったバジリスクの攻撃が地面に直撃し、大地を震わせる。
私はそのまま体勢を限界まで低く下げ、喰らいつこうとするバジリスクの顎を掻い潜り胸元まで一気に潜り込む。
「はッッッ!!!」
地面を滑るように這わせていた剣を力の限り振り上げ、バジリスクの皮膚の中で最も柔らかい部分『腹』に向けて斬りつける。
私の剣はとても大きいが、元々切れ味はよくなかったうえ、長い間使い続けてきたせいで切れ味が非常に悪い。だから、腹とはいえバジリスクを切り裂くことは多分できない。でも・・・
剣が腹に直撃した瞬間腕にさらなる重みがかかる。しかし、私は思い切り力を込めて剣を振りぬいた。バジリスクの巨体が剣を叩きつけられた衝撃でわずかに浮かび上がる。
「たぁッ!!!」
私は剣の流れに逆らわないようにさらに力を加え、身体を一回転させて浮かび上がった腹を目掛けてもう一度剣を振り上げる。
バジリスクの腹に加わる二度目の衝撃。巨体がさらに浮かび上がり、二度の強い衝撃を受けた腹が激しく波打つ。
私はそのまま剣を振り抜いてバジリスクの下から飛びのいた。
「キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
バジリスクが悲鳴を上げる。
これでかなりダメージを与えられたはずだ。
今がチャンス。
私は剣を上段に構え、力を集中させる。
しかし、バジリスクはいきなり後ろを振り返り走り出した。
思いもよらぬ行動に反応が遅れる。
「待って!」
私もすぐにバジリスクを追って駆け出した。
速い。お腹にダメージを負っているはずなのに全然追い付けない。
しかし離されるほどじゃない。私はバジリスクを追ってずっと走り続けた。
程なくて森を抜け、草原に入る。こちらもまだ体力に余裕があるが、向こうも速度が落ちない。でも、このまま進んだらバジリスクが町にたどり着いてしまう。
ルミアがいる町に!
絶対止めなきゃ!




