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転生魔女のヤンデレ英雄譚  作者: ネクロノミ娘
第3章 学園生活
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第17話 Side カーミラ 体力試験

 着替え終え、食堂で朝ごはんを食べ終えた私たちは、今日試験を受けなければいけないらしい。

 私とルミアはそれぞれ違うクラスになるらしく、試験も別という話で離れ離れになっていた。レアはもうここの生徒ということだから、私たちのように試験を受けなくてもいいらしい。だから、食堂から出て、レアに案内された後みんなバラバラになっていた。

 今私は騎士クラスの先生であるバロック先生の後ろをついていっている。何でもこれから入学試験を行うらしい。

 バロック先生はいかにも騎士といった雰囲気があり、背も高く、身体ががっしりとしていて、顔がちょっと怖い。

 最初に少し自己紹介をして、付いて来るようにと言ってからまだ一言もしゃべっていない。

 その先生がある一室の前で足を止めた。


「ここが女子の更衣室だ。動きやすい格好に着替えなさい」


 一応着替えはレアから持たされていた。でも・・・私は自分で着替えられない。


「・・・このままじゃダメですか?」


 恐る恐る尋ねてみると、先生は眉を潜めて答えた。


「確か君は、巷では竜殺しなどと呼ばれているらしいな。騎士クラスの入学試験くらいそのままで格好で十分だと言いたいのか?」

「そういうわけじゃ・・・」


 騎士になるためのテストは私では合格が難しいかもしれないとレアは言っていた。だから本当はできるだけ動きやすい格好でやりたい。


「じゃあ、どういうわけだね?」

「私、一人じゃ着替えられなくて」


 私の発言に先生は驚いたように言葉を続ける。


「なら、君はその服をどうやって着たんだ?」

「これはルミア、妹が着せてくれました」

「はぁ・・・君は一体どこのお姫さまだというんだ?自分で着替えることもできない人間を騎士に推薦するだなんてレア王女は一体何を考えているのやら」


 先生は難しい顔をして眉をひそめた。そして呆れ顔で言葉を続けていく。


「まぁ君がそれでいいというのなら構わない。ただし、動きにくいからといって採点を甘くすることはないぞ」

「はい・・・」


 うぅ・・・いきなり怒られた。

 それから相変わらず怖い顔をした先生の後ろをついていくと、開けた場所に出た。硬い土の地面がずっと広がっており、草はほとんど生えていない。周りを見渡すと、何人もの生徒たちが剣や槍を持って素振りをしていたり、生徒同士で武器を持って戦っていた。


「ここが訓練場だ。今は騎士クラス1年の生徒たちがここで兵科の訓練を行っている。君も試験に合格すれば、ここでこの者たちと訓練を行うことになるだろう」


 訓練場の生徒たちを見るとみんな真剣そのもので強くなるんだという強い気持ちがこっちまで伝わってきた。

 やはり騎士様を目指す人たちはすごい。私がこの中に入って一緒にやっていけるんだろうか。いまいちそんな自分の姿を想像することができない・・・。

「彼らを見てどう思う?」


 先生が生徒たちを見渡しながら私に問いかけてきた。


「みんなすごい気迫・・・」

「気迫・・・か。そうだな、彼らはそれぞれ目的があってここにいる。甘い考えでこの場にいる者は一人としていないだろう。言いたいことは分かるな?」

「はい・・・」


 私は今までずっとルミアに甘やかされて育ってきた。きっと騎士を目指すなら今のままじゃダメだってことだろう。

 気を落としてしょんぼりしていると、一人の男が近づいてきた。


「お待たせしました、バロック先生。そちらの生徒が?」

「ああ、今回入学試験を受けるカーミラだ。カーミラ、こちらがもう一人の試験官であるコール先生だ。これから二人で体力試験を行う」


 新しく加わった先生はバロック先生より少し年齢が若そうに見える。それにバロック先生ほど顔が怖くない。


「よろしくお願いします」


 私はレアに習った通りお辞儀をする。


「それではまず体力試験を始める、試験内容は腕立て伏せ、腹筋、5メートル走、持久走だ」


 ジークたちから話を聞いた通りだ。体力試験は腕、腹、足の筋力、瞬発力、持久力を見るため、昔からこの4つで試験が行われるらしい。また、試験で行われるものは、基礎体力を作るために入学してからもよくやることになるらしい。どれも初めてするものばかりだったけど、王都までの道中にどうやってやるのかは既に教えてもらっている。5メートル走は5メートルの距離を制限時間内にどれだけ往復できるかというものだった。


「それでは、自分が記録をとっていきます」


 コール先生はそう言うと、紙とペンを出してさらさらと何かを書いていく。


「腕立て伏せ、腹筋、5メートル走はそれぞれ5分間、持久走は5km走ってもらう、何か質問は?」

「ありません」


 やることは分かっている。


「それでは腕立て伏せ準備!」


 私はバロック先生の声に従い、両手を大地について伏せた。準備は万端だ。


「始め!」


 バロック先生のはじめの掛け声とともに、私は一心不乱に腕を曲げ伸ばしする。初めて腕立て伏せをしたときは、胸が邪魔であまり腕を曲げることができなかったが、その欠点はサラシを巻くことで解決済み。

 腕立て伏せをしている最中に辺りにどよめきがはしったが、それを気にしている余裕は私にはない。私は何としても合格しないといけないのだから。

 それからようやく5分が経過し、バロック先生が終わりを告げる。


「それまで!」


 私は服を汚さないようにそのまま立ち上がり、ふぅっとため息をついた。思った以上に緊張していたらしい。それでも練習の時と同じくらいはできたと思う。


「きゅ、九百四十六回です・・・」

「ほう・・・」


 よかったんだろうか、悪かったんだろうか。バロック先生は黙ったまま何も言わない。私なりには精一杯やってみたつもりだ。


「次!腹筋準備!」

「はい」


 私はすぐに腹筋の体勢をつくって、あることに気がついてしまった。

 ・・・腹筋するときは座るから結局服が汚れてしまうということに・・・・・・。でも、そんなことを気にしている暇などあるはずもなかった。


「はじめ!」


 再び私は一心不乱に腹筋を行う。そして、5メートル走、持久走と次々と試験は進んでいく。

 しかし試験が進むたびにコール先生が唖然となり、周りがどんどん静まり返っていった。

 走っている最中に周りを見渡してみると、みんな既に手を止め、こちらの方を見ていた。もしかすると訓練が終わったのかもしれない。

 そして(つい)に持久走を終え、私は先生たちの前に立った。


「腕立て946回、腹筋431回、5メートル走256往復、持久走5分40秒・・・本当に人間ですか?!5メートル走なんて反復横跳びになってましたよ!」


 コール先生が声を荒げている。もしかしてやり方がいけなかったのだろうか?レアたちが5メートル走は魔物の攻撃を回避する要領で左右に跳べばいいって言ってたから、その通りにやったんだけどもしかして間違っていたのだろうか。周りの静まり返った空気に不安が募る。

 もしやり方が間違っていたのなら、もう一回やらせてもらったりはできないのかな。


「カーミラ」

「はい」

「今回の試験、魔法を使ったのか?」


 バロック先生が突然変な事を聞いてきた。

 でも私はレアに言われた通りマギは使っていないし、魔法なんて使えるはずもない。


「使っていません」

「そうか・・・」


 バロック先生は考え込むように顎に手を置いた。


「いや、でも魔法を使わないでこんな記録出せる人間いませんよ!」

「コール先生」


 バロック先生が静かにコール先生を睨む。

 コール先生はその眼光を受けて少しずつ落ち着きを取り戻していき、息を飲み込んで答えた。


「な、なんでしょう?」

「我々は魔法の発動を確認していない。それに例えマジックアイテムや魔法を使ってもこれだけの記録を出せる人物を知っていますか?」

「い、いえ・・・」

「ならば体力試験はこれでいいでしょう」

「分かりました・・・」


 よく分からないけど、先生たちの様子を見ると体力試験はこれでよかったらしい。

 私はほっと息をつき、緊張と不安を吐き出していった。


「では、次の試験に移る。次は戦技試験だ」

「せんぎ?」


 せんぎ試験とは何だろう。


「ああ、武器を使って戦ってもらう。確か武器はすでに持ち込んでいるんだったな」

「はい」


 せんぎ試験とは、実際に戦う試験のことらしい。

 先生の言うとおり、私は昨日のうちにレアたちとここに来てここの武器庫に普段愛用している剣を持ち込んでいた。もちろん訓練所にも訓練用の武器は置いてあるが、騎士クラスの生徒たちの中には自分で武器を持ち込んでいる人が何人かいるらしい。それでレアの話によると、私が使っているような武器は置いていないということだったので、普段の力が発揮できるようにと持ち込ませてもらうということになったのだった。


「取ってきなさい」


 私はバロック先生の指示に従い、武器庫に自分の剣を取りに向かった。

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