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転生魔女のヤンデレ英雄譚  作者: ネクロノミ娘
第3章 学園生活
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第16話 Side カーミラ 王都での目覚め

「・・・ま・・・・さま・・・・」


 暖かなまどろみが私を包み込む。


「・・・さま・・・えさま・・・」


 呼んでいる。最愛の(ルミア)が。これはいつものこと。私はその呼び声をもっと聞きたくて意識を覚醒させていく。


「・・・えさま。朝よ。お姉さま」


 でもそんな優しい呼び声で優しく揺すられるといつまでも寝ていたくて。

 優しく揺するその柔らかな手をぎゅっと掴む。


「お姉さま?」

「きゃっ」


 その手を自分の方へと引っ張って相手の体勢を崩し、倒れてきたところをそっと抱きとめる。


「んー」


 そして私は目を閉じたまま顔を突き出して催促。


「はぁ・・・、カーミラったら毎朝こんな感じなの?はいはい、おはよう」


 そう、いつものこと。こうしてルミアのキスが降ってくるのは。


 あれ?


 目を開けるとそこにはいつもよりずっと広い部屋が広がっていた。ベッドは一つしかないが、机と椅子が3つもある。

 そうだった。私たちは家を出て王都まで来たんだった。私とルミアはこれからこの学園というところで色々と勉強をすることになるらしい。


 うぅ・・・勉強苦手。それしてもこの感触・・・・・・ふにふに。


「ルミアおめでとう。ちょっとだけおっきくなったね」

「お姉さまが今抱いているのはレア様です・・・」


 レア?あれ、本当だ。よく見ると黒髪の王女様レアが腕の中でなぜか震えている。

 そういえば、昨日から3人でこの部屋に住むことになったんだった。


「ちょっと!?ちょっとだけってどういうことですの!?こ、これでもBくらいは!」


 レアが慌てて抗議の声をあげる。ビーって何のことだろう?


「おはよう。二人とも」


 私が朝の挨拶をするとレアはため息を吐いて落ち着きを取り戻した。

 あれ?ここにいるのがレアということはルミアとはおはようの挨拶をしていない。


「ほら、ルミアも」


 そう言って手を差し伸べるとルミアが「もう、お姉さまは」と寄ってきて挨拶のキスを交わす。

 挨拶を終えるとようやく目が覚めてきた。頭がはっきりしてきたところで日常との違和感を覚える。


「ご飯の匂いがしない・・・」


 いつもなら朝起きたらルミアの作ったご飯のいい香りが漂っているはずだ。

 でも、今日に限ってそれがない。どうして?


「ほら、学園には食堂があるからご飯は作ってくれるんだって昨日聞いたでしょ?」


 そうだった。確か昨日の晩御飯もその食堂で食べたんだった。

 具材が豪華で確かに美味しかったし、量もいっぱい食べられたけど、やっぱりルミアが作ったご飯がいい。

 でもここにいる間は当分食べられそうにないらしい。そのことを思い出すと段々気持ちが沈んできた・・・。


「これからはルミアのご飯食べられないんだ・・・」


 つい不満が口から漏れる。

 ルミアの手作り料理を食べられないなんて人生の半分は損しているようなもの。

 朝から力が入らない・・・。


「ここには自分で料理できるように生徒用の調理場もあるのよ。また今度ルミアちゃんに何か作ってもらうといいわ」

「本当?」

「ええ、休みの日なら大丈夫だと思うわ」


 ちょっと残念だけど遊びに来たんじゃないから我慢するしかない。でも、もし作ってもらうならお肉が食べたいな。

 ルミアの作るお肉は肉汁がじゅわっとしててあぶらが甘くって想像するだけでよだれが・・・。

 ぐぅ~~~~~~~~~~~~~~。

 そんなことを考えていた所為か、私のお腹の虫が盛大に自己主張をし始めた。


「そのときはがんばるからね」


 ルミアはそう言って笑いながら腕を曲げ力こぶを作る。ルミアは子供っぽく見られるのを嫌がっているみたいだけど、こういう子供っぽいしぐさがとても似合っていて可愛い。可愛がりたい。


「それはそうと、今日のところは着替えて食堂へ行きましょう」


 二人を見るともう既に着替えを済ませてあった。しかもお揃いだ。茶色の綺麗な上着に赤いネクタイと真っ白いシャツ、そして膝上までしかない茶色のタイトスカートを着た二人は、心なしかいつもより少しだけ凛々しく見える。


「いいな、私もみんなと一緒がいい」

「お姉さま、学園の女の子はみんなこのお揃いの制服を着ることになってるのよ。ほら、着替えよう?」


 そう言ってルミアがいつもどおり鮮やかな手際で着替えさせてくれる。


「カーミラってば本当に何もできないのね・・・」


 レアがルミアに着替えさせてもらっている私を見ながら呆れたように呟く。

 そんな目で見られてもできないものはできない。ルミアがいないと生きていけない確信だけはある。

 そんなことを考えながらルミアに目をやると珍しく私の着替えに苦戦していた。

 というより、く、苦しくなってきた・・・


「ルミア、ちょっと苦しい・・・」

「でもっ、お姉さまっ、一番上のボタンを止めないとっ、胸っ、がっ」


 どうやら服がちょっと小さかったみたいだ。ルミアが力いっぱいボタンを止めようと引っ張ってはいるが、どう見ても無理そう。もしなんとか止められたとしても息ができなくなるかも・・・。ルミアの手で殺される・・・・・・それは最高に魅力的だけど、そんな幸せ体験は後に取っておきたいかな・・・うぐ。


「まさかこれほどとは・・・これが格差社会の弊害、というものなのね・・・」


 レアがまた何か難しいことを言いながら床に手をついて項垂(うなだ)れている。心なしかレアの周りが影を落としたかのように暗くなっているような気がする。

 これが前にルミアが言っていた影のある大人の女・・・なのかな。大人というのは何だかそっとしておいてあげたくなるものなのかもしれない。

 それからルミアは私に上着を着せるのを諦め、こうばいぶ・・・というところでサイズの違うものへと交換もらうこととなった。

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