③そこにある不幸
世界がまだ静かな時間帯
キィ
大きな音を立てないようにドアを開ける
(なんで、私が気を使わないといけないの?)
誰よりも早く仕事を始めなければいけない愚痴が薄く溢れた
気分を切り替え深呼吸をする
すー
はー
朝の空気は気持ちが良い
(今日も頑張りますか!)
いつもの様に元気よく伸びをして、固まった体をほぐしていく
水汲みへと向かう為に
空の桶を両手に持つ
(この村柵が低くないかしら?)
(発展途上の村だからしょうがないけど、安全はもっと確保して欲しいよね)
取り留めの無いことを思いながら、井戸へと向かう…
(やった!一番乗り!)
(いつもより早くきて良かった)
鼻歌交じりで井戸から水を汲んでいく
あっ!
少し手が滑り、釣瓶桶が下に落ちる
(あちゃあ、失敗したな)
(もう一回やらなきゃ)
少し赤くなった手を見ながら、
気分を切り替えていく
その直後、すっと影がうごいた
オオカミだ!
(えっ?えっ?)
(そういえば、昨日ハンスさんが近くでみたって…どうしよう?)
オオカミはジリジリと距離を縮めてくる
すぅ…き!
叫ぼうとした瞬間に喉笛に噛みつかれる…
(あ、あ、…)
(もう、ダメかも…意識が…)
きゃあああ!
誰かの悲鳴が聞こえるが、
それの声はだんだんと遠くなっていった…
本作は、「物語として成立させること」を意識した短編実験です。
雰囲気だけではなく、キャラクターの行動と環境がどのように結びつくかを試しています。
日常の延長にある不幸を、できるだけ静かに描くことを目的としました。




