第1話 最弱という役割
最弱という役割
「……今日で終わりだ」
そう言われた瞬間、
レインは不思議と、何も感じなかった。
怒りも、悲しみも、驚きすらない。
――ああ、やっぱりか。
それが正直な感想だった。
レインは、冒険者パーティの中で
常に足を引っ張る存在だった。
剣は鈍い。
魔法は使えない。
判断も遅い。
それでも追放されなかったのは、
彼が「雑用」を完璧にこなしていたからだ。
索敵。
罠処理。
撤退判断。
誰もやりたがらない役割を、
誰よりも真剣にやっていただけ。
「お前がいなくても、もう大丈夫だ」
リーダーはそう言って、
レインの荷物を地面に放った。
「分かった」
それだけ答えて、レインは背を向けた。
ソロになったレインは、
より危険な場所へ向かうしかなかった。
安全な狩場は、
パーティが独占しているからだ。
「……ここなら、誰も来ない」
辿り着いたのは、
冒険者の間で“割に合わない”と敬遠される区域。
魔物は強く、報酬は安い。
だが、レインに選択肢はなかった。
最初の戦闘は、
正直、覚えていない。
生き残るために動き、
気付いたら、魔物は倒れていた。
「……助かった」
そう呟いた瞬間、
身体の奥が、じんわりと熱を帯びる。
【スキル《回避》が成長しました】
【スキル《索敵》が成長しました】
「……?」
レインは首を傾げた。
成長通知は、珍しくない。
命懸けで戦えば、よくあることだ。
「運が良かっただけだな」
そう結論づけて、
彼は次の魔物を探しに歩き出した。
その時、彼はまだ知らない。
同じ戦闘をした冒険者が、
十人中九人、死んでいるということを。
そして自分のスキル成長速度が、
常識の何倍にもなっていることを。
レインがそれに気付くのは、
もう少し先の話だ。




