7話 白銀先生のわがまま
「まぁ君のことやし、なんか事情があるんでしょ。」
「また勝手に誰かを学園に連れてってあげるとか言ったんでしょ。」
図星である。
見られていたのかってくらい正解である。
「ほんで、どんな子なん?」
学長は少し呆れた様子ではあったが、普段の調子で僕に質問を投げかける。
「例の施設の中にいた子ですよ。」
「式霊に取り憑かれています。」
学長は普段の表情を崩し、珍しく真面目な顔をした。
「討伐はせんかったの?」
「戦闘にはなりましたよ。」
「ただ、攻撃を受けてわかったんです。」
「あれは倒せないと。」
あの子が言うお姉ちゃんは恐らく、等級としては一番上かそれ以上。
式霊は基本5つの等級に別れる。等級は「式等級」と呼ばれており、入学試験として課される討伐試験は一番下の「五式」に分類されている。1年生の定期試験として「四式」の討伐が選択制試験に含まれている。その後は「三式」「二式」と上がっていく。ここまでは学生でも討伐可能とされている。式等級で最も高い「一式」は、学生のみでの討伐は原則禁止となっているため、一式の依頼は教師1名の同伴が絶対となっている。一式の依頼はフリーで活動してる式者が受けるからあまり来ないけどね。力試しやグループでの討伐で挑む、好戦的な生徒がいるから少し分けてもらっている。今回、出会ったお姉ちゃんはおそらく、一式に分類されるはずだ。
ただ、僕は一式以上だと思う。一式の上には特殊な式等級として、「零式」が設けられている。式等級零式は、一式の式霊を3体以上討伐した経験がある者のみに、式者の零式を含む、集団戦への参加する許可が降りる。式等級零式は年に2、3回現れるか現れないか位の等級である。今回の式霊のことはまだわかっていないことがほとんどであるが、数回の攻撃だけでここまで怪我を負わされたことはない。
「君がそこまで言うのは珍しいやないの。」
「数発の打撃だけで、ここまでの怪我ですからね。」
「かなり強力な式霊ですよ。」
「零式に分類されてもおかしくないかと。」
学長は深く考えている様子だった。
「どうして、それほどの式霊が今まで見つからなかったのかね?」
「式を隠すことは出来ひんはずやろ?」
「よくわからないですが……」
「あの式霊は式を隠せなくても、式を見つかりにくくする事は出来るみたいです。」
赤羽さんに接近した時のお姉さんの式力は、五式あるいは五式未満だった。
五式程度の式霊を見つけることは式力が弱いため、砂金を目視で探すくらい難しい。それがより弱くなるともっと難しくなる。今回の調査が困難を極めたのは、それが大きな理由だった。
学長はますます難しい顔をする。
「そんな式霊がおるんかいな……」
「零式クラスねぇ……」
学長は迷っている様子だった。
「流石にまずいですか……?」
「いや、まぁ……」
「どちらにせよ、いつか暴走する可能性も考えられるわけやん……」
「ただ、そのクラスの式霊を学校に置いとくのもねぇ……」
言う通りである。
戦う意思があまりないとはいえ、万が一あのお姉さんが暴走すれば、クラスだけではなく学園ごと破壊される可能性すらある。そうなれば、学園以外にも被害が及ぶ。
「式霊の特徴とかないん?」
「特徴は……」
「2メートル程の身長があって、人型ですね……」
「あとは、こちらが戦う意思を見せない限り攻撃はしないかと……」
「好戦的ではないんやね。」
「他はある?」
「式霊は取り憑いてる子の話はよく聞くみたいです。」
あのクラスの式霊は会話ができたとしても普通、話なんか聞かない。ただ、お姉さんは赤羽さんの話をしっかりと聞く様子だった。
「嘘やろ??」
学長は目を大きく開いた。
「それほど強い式霊は会話が出来ても、会話にならんでしょ?」
「詳しいことはあまり聞かなかったので分かりませんが、少なくとも彼女にダメと言われたら普通に話が出来ましたよ。」
「会話できるんかい!」
学長はツッコミをいれた。
「その様子なら……いや、ダメやな……」
学長はまだ悩んでいる様子だった。




