5話 お姉ちゃん
「お姉ちゃんって?」
高校生が式霊のことをお姉ちゃんと呼んでいたことに疑問を抱いた。
「好きに呼んでいいと言われているので……」
彼女は恥ずかしそうに言った。
「お姉さんは話せるのかい?」
「はい。」
やっぱり話せるんだね……少し恐ろしいが、聞きたいことがいろいろある。
「お姉さんと二人きりにしてもらうことはできるかな?」
彼女は複雑そうな顔をした。
そのまま姉の方を見た。
「喧嘩しちゃダメだよ……?」
式霊はニコッと微笑んだ。
その顔に安心したのか、彼女は式域から出た。
攻撃を受けてわかった。
勝てない。
ただ、こちらに戦意がなければ、相手は攻撃をしてこない。
式霊は今もこちらを睨みつけている。
「一旦話をさせてほしい。」
式霊はゆっくりとこちらに向かってきた。
「先ほどは一方的に攻撃をしてしまったな。」
「申し訳ない。」
話は聞いてもらえるだろうと思っていた。
謝罪までしてくれるとは思っていなかったので、驚いた。
「いいよ。」
「だいぶ効いたけどね。」
式霊は申し訳なさそうにこちらを見つめた。
「あなたは一体何者?」
「わからない。」
「ただ、私は死んだ人間だということは覚えている。」
「あの子が住んでいた家はもともと私の家だった。」
なるほどね。
家が事故物件になった時に、元いた人間が式霊となるパターンはよくある。
ただ、その場合だとここまで力を蓄える例は珍しい。
「どうしてそこまでの力を持っているのかな?」
「あの子の暗い気持ちを吸収して過ごしていた。」
「家庭環境が最悪だったからな。」
「そうしているうちにいつの間にか力が強くなり、私の存在が人に見える様になっていた。」
強い式霊は式を持っていない人間でも観測することができるらしい。
式霊はさまざまなものを栄養にして成長する。
人間の嫌な気持ち。害虫。腐った食べ物。
人間が負の感情を抱くものは大体餌となる。
「そっか。」
「気になるのはそれくらいだよ。」
(家庭環境……ねぇ……)
ここにいるということで大体想像が付く。
学校でいじめを受けていた。よく両親が喧嘩する家庭の子供には式霊が取り憑くことがある。
大抵の式霊はある程度力を蓄えたら子供の元を離れ、新たな餌となるものを探しに行く。
突然式霊が口を開く。
「あの子をどうするつもりだ?」
式霊は鋭い視線を僕に浴びせた。
また雰囲気が悪くなる。
考えは正直、まとまっていない。
「今色々考えてるよ。」
「うちの学校に連れて行くかとかね。」
悪くなった雰囲気は次第に軽くなる。
「そうか……」
「どんなところだ?」
「君達の存在が認められるところかな。」
「君も自分が何者かがわかるようになると思うよ。」
式霊は理解してくれたのか、深く頷いた。
「また、来てくれるか?」
「呼んでくれたら来るよ。」
式霊は僕に微笑み、式域を解いた。




