3話 式を持つ者
「白銀先生、随分とお急ぎですが、お出かけですか?」
隣の先生に声をかけられる。
「ちょっとね。」
「いつもの零式様の我儘ですか?」
隣の先生は冗談混じりに言った。
「今回は違いますよ。」と言いながら時計を見た。
11時13分。普通に校門を出ていけば、確実に間に合わない。
僕は職員室の窓に身を乗り出した。そのまま外に飛び出した。
頭がおかしくなったわけではない。数年前に編み出された「飛行式」。
内容は至って単純。空を飛ぶ式。
式の基本として、この学校では1年生の1学期には取得することになった。
色々ルールもできている。
飛行機の付近では飛行式の使用は禁止。
夜間飛行時は「発光式・赤」を併用して飛行するなど。
ちなみに校則として、窓から飛んで飛行式を使用することは禁止されている。
要するに校則違反である。多分帰ってきたら怒られるだろうね。
僕はそのまま予定のある地域まで飛行した。
…………………………
「ここら辺で降りようか。」
減速し、地上にゆっくりと降り立った。
「時間は……」
「11時25分か。」
間に合いそうである。
今回の目的地は児童養護施設。
以前からこの地域では強力な式力な観測されていた。
ただなぜかその式は不安定な式なのか、式者が近づくと式力が弱まるため、調査が難航していた。
何度か地域の探索をしている時に式の所在がわかってきた。
その結果がこの児童養護施設だ。
「相変わらず感じないねぇ。」
とはいえ、式を完全に隠すことは不可能。
おそらく、ここにいる誰かに近づけばわかるはず。
集中しながら歩いていると、施設の前についた。
「先日ご連絡させていただいた白銀です。」
職員の方に声をかけた。
館内を案内してもらえるらしい。
館内は賑わっており、少なくとも式力を一切感じなかった。
(勘違いだったかな……)
そうこうしていると案内が終わってしまった。
とりあえず許可をもらって、館内を回ってみることにした。
(おそらく勘違いだろう……)
前から二、三冊の厚い本を抱えた高校生くらいの女の子が歩いてきた。
すれ違う。
「…………っ!」
感じた。
式力を。
探し求めていた力を感じた。
僕はゆっくりとその高校生の後をつけた。
感じた式力から、等級はかなり上の方だと言える。
(事情はよくわからないけれども……)
(話を聞いてみるか……)
その子は図書室に入って行った。
僕は少し間を空けてドアを開けた。
(どこ行った……?)
見失ってしまったが、その図書室はあまり広くないためすぐに見つけることができた。
高校生に声をかけた瞬間、微弱だった式力が解放された。




