22話 海を知る
「やっぱり来たか。」
私は寝る前に海の世界に来ていた。
今日は何となくスムーズに入れたような気がした。
「今日はここに来るまで早かったような気がします。」
「イメージが上手くいってるんじゃないか。」
「練習の成果が出ているな。」
普段なら2、3分かかっているような気がする。
ただ、今日はここに来たいと思ったらすぐにくることが出来た。
「……で、どうかしたか?」
「あ、イメージを増やすために来ました。」
「勉強熱心なやつだな。」
「ほどほどにな。」
私は海の前に座り込み連想を始めた。
海、水鉄砲、魚、波…………
思いついたものを砂に指で書いていく。
……………………
「あんまり出なかったけど、とりあえず使えそうなものを選びながらイメージしてみよう。」
まずは最初に出た水鉄砲。
私は手を指でっぽうの形にし、水鉄砲をイメージした。
「出た……!」
私の指先から出た水は数メートル飛んで地面を濡らした。
威力はおもちゃの水鉄砲程だったが、技がもうひとつ増えたことが嬉しかった。
「色々やってみよう……!」
水鉄砲から思いついたものはホース。水やりに使うやつ。
ホースをイメージしたところ私の指の太さの水しか出なかった。
そういえば、ホースの先ってなんか着いてたりするよね。
名前分からないけど。
確か威力がいちばん強くて細かったものがあったような気がする。ストレートって名前だったっけ。
私は指先からストレートを出すイメージをした。
さっきの水鉄砲より数倍強い水が射出された。
「これならまだ使えそうかな。」
ただ、これでは勝負ができないことは自分でもわかる。
まだまだ練習が要りそうだ。
「色々出来るようになってきたね。」
お姉ちゃんが笑顔で私に話しかけた。
「お姉ちゃんは何か強い技とか持ってるの?」
お姉ちゃんは少し困っている様子だった。
「使えない訳では無いけど……」
「危ないよ……」
白銀さんと争った時にお姉ちゃんが少し見せた力。
この砂浜に深い穴を開けた一撃。
「クロの式はただの肉体強化だよ。」
「まぁ、素の力もあるんだろうけれど。」
零式さんが答えた。
「わかるのですか?」
「わかるよ。」
「おそらく、クロは肉体強化の式を常時展開している。」
「そもそも普通に殴ったくらいじゃ、あの防御式にヒビを入れることなんか出来ない。」
「後はその地形のへこみ具合かな。明らかに威力が桁違いだ。」
「肉体を強化する式だけなのですか?」
「あぁ。」
「後はクロが使わない限り、他の式は私には分からない。」
「まだ2つある。」
「でも1回試しで使ったきりだよ。」
「どんなの?」
私は思わず聞いてしまった。
お姉ちゃんは海の方に体を向けた。
「離れててね。」
お姉ちゃんは打撃の姿勢をとった。
次の刹那、何かが爆発したような轟音が鳴り響いた。
私は耳を塞ぎ、閉じてしまった目を無理やり開いた。
「海が、割れてる……?!」
海が半円形に切り抜かれていた。
海は荒い音を立てながら、ゆっくりと元の形へと戻った。
「街で使われたら一溜りもないな。」
「それもう1回打てるか?」
零式さんはゆっくりとこちらへと歩いてきた。
「やめておいた方がいい。」
「私は大丈夫だ。」
「それに威力を確認しておかないともっと危ないだろ?」
お姉ちゃんは少し考えたうちに、さっきと同じ構えをした。
零式さんはお姉ちゃんの前に立ち、紫に輝く盾を展開した。
先程と同じ轟音が鳴り響いた。
零式さんは海上に浮かんでいた。
私は血の気が引くのを感じた。
しかし、遠くから笑い声が聞こえた。
それと同時に零式さんは動き出し、空を飛んでゆっくりとこっちに来た。式って飛んだり出来るんだね。
「やっぱり強いなお前。」
「なぜその力を隠し続ける?」
確かに不思議だ。
これだけの力があれば、全てを壊すことだってできる。
私の近くにいる必要もないだろうし。
「別に。」
「争いに興味が無い。」
「私は麻希の近くに居れればどうでもいい。」
「本当に変わったヤツだ。」
「でもお前が暴れるような式霊じゃなくて良かったよ。」
「ここまでの力を持った式霊は止めるのが難しいからな。」
私が知らなかったお姉ちゃんの力は、強いはずの零式さんが驚くほどだった。
「そういえばもうひとつあるんだよな?」
「そっちも試そう。」
「本当に知らないよ……」
お姉ちゃんは左手に、黒く小さい球体をぷかぷかと浮かばせた。
「麻希はもっと離れた方がいいよ……」
「あのビーチパラソルの下くらいかな……」
「わ、わかったよ。」
私は小走りでビーチパラソルの辺りまで離れた。
零式さんは再びお姉ちゃんの前に立ち、防御を始めた。
お姉ちゃんは腕を振りかぶり、ものを強く投げる仕草がここから見えた。
二人の間に小さな光が現れたのが見えた。
小さい光は瞬きをした間に私の目の前を青白く覆った。
それと同時に、先程以上の轟音が鳴り響いた。
「大丈夫かな……?」
2人が心配である。
砂煙が辺りを濃く包み込んでいるため、全く周りが見えない。
「麻希。」
お姉ちゃんの声がどこからか聞こえた。
「お姉ちゃん、大丈夫だったの?」
「私は大丈夫。」
「ただ、零式が分からない。」
また不穏な空気が流れる。
「勝手に殺すんじゃねえよ。」
「吹き飛ばすからなにかに掴まった方がいいぞ。」
お姉ちゃんが私の手を掴む。
目が開けられないほどの強い風が数秒間吹いた。
「えっ……?」




