21話 式
「式の使い方ですか?」
「そんな簡単に教えられるようなものなのですか?」
「あぁ。」
「努力次第ではあるが、一般の人間より式が流れているお前なら不可能では無い。」
「昔、好きだったものをイメージしてみるといい。」
イメージ……
昔好きだったものはなんだっただろうか。
記憶を隅々まで探る。
幼少時好きだったこと。幼少期にした遊び……覚えているものを片っ端から思い出そうとする。
しかし、断片的な記憶しかないものがほとんどで、上手くイメージができない。
記憶として思い出せるのは、お姉ちゃんである。
初めて会った時はクローゼットだったような気がする。親が教育と言って、閉じ込めていたんだっけか。
いつもより早く扉が開いた日があった。その時がお姉ちゃんとの出会いだ。
黒いワンピースを着た、背の高いお姉さん。見たことがない人だった。当時の私はかなり警戒した。
…………………………
「どうしてここにいるの?」
「ママが気に入らないからって……」
「そう……」
「また来るね……」
当時の私は誰か分からない人と話したとしか思わなかった。
両親にも知らない人と会った話はしなかった。怒られそうだし……
お姉ちゃんはその日から毎日現れるようになった。
いつも少し話をしておしまい。そんな感じだった。
好きな食べ物とかやってみたいことみたいな話をするだけだった。
ある日突然お姉ちゃんは見せたいものがあると言い、私をあの世界に連れていってくれた。
昔、1度か2度行ったことがある海に似たような景色。
「来たい時はいつでも言ってね。」
嬉しかったな。
…………………………
海か……
私は昔、海が好きだったのかもしれない。
ゆったりとしたあの景色が私の中に一番残っている記憶なのかも……
そんなことを考えていたら、ひんやりとした感覚が足にあった。
「……えぇ?!」
私の足元には真っ青な水たまりができていた。
私の足はその水たまりに完全に浸かっていた。
「イメージができたみたいだな。」
「やっぱり海だったか。」
「わかっていたんですか?」
「いや、何となく。」
「クロの式からは少なくとも水のようなものは感じなかった。」
「まぁ、それを確定とするのは難しいから何も言わなかっただけだよ。」
「それで……ここからどうすれば?」
「んー……」
零式さんは深く考えている様子だった。
「こればかりは説明が難しいんだよな。」
「海に関連してイメージできるものとしか言えない。」
「後は水かな。物質的に似ているから。」
海……水……
ふと思い浮かんだものは噴水だった。
噴水を思い浮かべたと同時に、私の前に新たに水たまりが生まれた。
しかし、その水たまりは私の足元にあるものとは違い、何か生き物がいるかのように揺れていた。
私は引き続き噴水をイメージしたが、それ以上は動かなかった。
「高さを決めてないんじゃないか?」
「思いつかないなら手を使ったりするといいぞ。」
私は言われたとおりに右手をゆっくりと上にあげた。
そうすると私の前に現れた水たまりは、大きな泡を立てながら柱のようになった。
「いいじゃないか。」
「自分がイメージできるものであれば、大抵のものは技となる。」
「止め方は止めたいと念じれば止まる。」
私が止まれと念じると水の柱はゆっくりと低くなり、水たまりと一緒に消えた。
「自分がイメージ出来れば、どんな技でも使えるのですか?」
「いや、ベースとなるものは決まってる。」
「お前の場合は海。」
「海に関係するか、水に関係していれば技として成立する。」
「式が分かったら、あとは練習あるのみだな。」
そういうと零式さんは黒い霧と一緒に消えた。




