19話 式刀
私達は学園の裏にある森林に来た。
「ここは?」
「戦闘訓練で使う山だよ。」
「しばらくはどこのクラスも使わないみたいだから、思う存分練習に没頭できるよ。」
武器の使い方は分からないので、少し心配だ。
「さすがに、いきなり戦闘訓練という訳じゃないよ。」
「零式のこと呼べる?」
「呼んでみます。」
(零式さん。)
「ん。」
(白銀さんが呼んでます。)
「はいはい。」
「すぐ行くよ。」
零式さんがそう答えると目の前に黒い霧が現れ、零式さんが姿を現した。
「なんだよ翔。」
「赤羽さんに武器の使い方を教えるために、軽く手合わせをお願いできる?」
零式さんは嬉しそうにニコッとした。
「久しぶりに戦えるというわけだな。」
「本気じゃなくていいからね?!」
「ここで本気を出されたら、この山大変なことになっちゃうから……」
白銀さんはすごく焦っている様子だった。
零式さんの強さはまだわかっていないけど、山が大変なことになるという言葉から強さというか恐ろしさを感じた。
零式さんは残念そうな顔をした。
「えー……」
「久しぶりに戦えると思ったのに……」
「それはそのうちね……」
「と、とりあえず、赤羽さんに武器の使い方を見てもらうだけだから。」
白銀さんは木の剣を零式さんに渡した。
「……なんだこれ。」
「子供の遊びでもする気か?」
零式さんはより顔を歪めた。
「……わかったよ。」
「式刀を使えばいいんでしょ。」
零式さんの表情は嬉しそうな顔に変わった。
「わかってるじゃないの。」
零式さんは木の剣を地面に置いた。
「こいつを使うのはいつぶりかな。」
そう言うと、零式さんは黒い霧を右手から出し、その霧を左手で払った。
すると、黒い刀身が姿を表した。
霧が完全に無くなると、黒曜石のように輝く刀がそこにはあった。
「なんですか……それ?」
「式刀だよ。」
「式結晶が含まれる刀は一般的に、式刀に分類される。」
「この式刀は、式結晶・零のみで作られた式刀・零だ。」
「式刀は含まれる結晶によって、式の威力を高めたりすることができるよ。」
「零式が持ってる式刀・零は使用者の式の威力を高めた上で、身体能力を向上させるよ。」
「私はこれしか使わんから、体感したことは無い。」
「ただ、使った人間が皆口を揃えて言うんだから、多分そうなんじゃないか。」
「……って、それ使われたら本当に怪我じゃすまないって。」
「お前も使えばいいだろ。」
「ほら。」
零式さんは、持っていた式刀・零を白銀さんに手渡した。
「いや、まぁ少しは近づいただろうけど……」
「怪我しないように願うしかないか……」
白銀さんは構えた。
「いつでもいいぞ。」
「それじゃあ、お先に。」
白銀さんが強く踏み込み、零式さんに斬りかかる。
金属がぶつかり合うような音がした。
「真正面では勝てないとわかってるのに、挑む精神……やっぱり嫌いじゃない……!」
零式さんはふわっと浮かび、白銀さんの顔目掛けて、横から蹴りを入れた。
しかし、白銀さんは片腕で足を止めた。
「そうくるって思ってたよ。」
「へぇ……」
「腕を上げてるようだな。」
「そりゃね。」
「生徒を守れないようじゃ、教師失格になっちゃうからね。」
零式さんはすごく楽しそうな顔をしていた。
「その考えはまだ変わっちゃいないようだな。」
「さすがだよ!翔!」
「だったら、これはどうかな?」
零式さんは刀の先に手を添えた。突き刺す構え方だと思う。
この場に緊張が走る。
瞬きをした瞬間に零式さんは、見たことがないほどの速さで白銀さんに突っ込んだ。
驚いた私は思わず目をつぶってしまった。
ゆっくりと目を開けると、あたりはうっすらと砂埃に包まれていた。
「防御したな……」
「今のは勝ったと思ったんだけど。」
零式さんは悔しそうな顔をした。
「やりすぎだよ……本当に……」
白銀さんは、もともと立っていた位置から後ろに1mほど動いていた。
「強くなったなぁ。」
「わかったか麻希?」
……何も分からなかった。分かるわけないじゃん。
「今ので分かったら逆にすごいよ。」
その通りである。
「ふむ……」
「今の何がいけなかったのか、全くわからん。」
「……まぁとりあえず、式者がどうやって戦っているかはわかったと思うから……」
式者の強さとともに、どれほど危険かってこともわかった。ただ、戦い方、剣の使い方は参考にならなかった。だって異次元じゃん。
「1年生では、ここまで豪快な戦い方する人間はいないから安心してね。」
その後、私は白銀さんに剣の持ち方から教わった。
ついでに刀の使い方も教えてもらったが、そっちはもう少し自分で学習した方が良さそうだった。




