17話 朝
目を覚ますと、外は明るくなっていた。
時計を見ると7時くらいを指していた。
私はパジャマから昨日とは違う服に着替えた。
「白銀さんを呼ばなきゃ。」
(零式さん。)
「…………」
返事がない。
(お姉ちゃん。)
「どうした?」
さすがお姉ちゃん。いつ呼んでも返事をくれる。
(零式さんは今どうしてる?)
「寝てる。」
(起こしてくれる?)
「わかった。」
私は零式さんの声が聞こえるまで、外の景色を眺めていた。雲が動いてないから、ただの壁紙なのだろう。
「どうした麻希……」
零式さんは寝起きの声だった。そりゃそうか。
(白銀さんを呼びたくて。)
「壁に赤いボタンがあるだろう……」
「それ…………」
「…………」
多分もう1回寝たようだ。
「麻希。零式が寝たぞ。起こすか?」
(いや、知りたいことはわかったから大丈夫。)
赤いボタンを押せばいいらしい。私は辺りを見渡してボタンを探した。
玄関がある方の壁にボタンを見つけた。これだ。
ボタンの上には黒い枠があった。とりあえず私はボタンを押した。
少し待つと黒い枠が光り、綺麗な女性が映った。画面だったようだ。
「どうかしましたか?」
「白銀さんを呼んで頂けますか?」
「あぁ!」
「白銀さんから伺っております。」
「しばらくお待ちください。」
そう言われると、画面は真っ暗になった。
私は白銀さんを待つ間、縁側に腰掛けた。
おばあちゃんの家で見たことがあった風景だ。
「麻希。」
「随分と楽しそうだな。」
お姉ちゃんの少し嬉しそうな声が聞こえた。
「これからの新しい生活が楽しみって気分だからね。」
「友達出来たらいいなぁ。」
お姉ちゃんがクスッと笑う声が聞こえた。
「赤羽さん。」
「入りますよ。」
白銀さんの声が聞こえた。思っていた数倍早かった。
「はい!」
私は元気よく返事をした。
門は異音を立てながらゆっくりと開いた。
「おはよう。結構、朝早いんだね。」
「昨日は遅かっただろうから、もう少しゆっくり寝てて大丈夫だったのに。」
「目が覚めちゃったので……」
「それに、中学生の時はこれくらいに起きていました。」
「そっか。」
「今日は学園内と学園周辺を軽く案内しようか。」
「その後は軽く武器の扱う練習を挟もうかな。」
刃物は包丁しか握ったことがないのだが、大丈夫だろうか。
「武器の使い方とかわからないですよ?」
「大丈夫。刃はついてない、木製の剣だから。」
「零式にデモンストレーションをお願いするか。」
「それは後で決めるとして……」
「赤羽さん。これに着替えてもらえる?」
そういうと白銀さんは、私に紙袋のようなものを渡した。
「サイズは分からないから、一応全部持ってきたんだけど……とりあえず着替えてみて。」
「着替え終わったら、また呼んでね。」
すぐに白銀さんは部屋を出た。
私は脱衣所に行き、サイズを確認しながら着替えた。
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……………………
…………
「着替えました!」
私は部屋中に響くくらいの声で声を掛けた。
「はーい。」
「入るよー。」
「おぉ。」
「似合ってるね。」
「細かいサイズはまた今度採寸してもらうから、しばらくはそれを着てね。」
制服は黒を基調としており、アクセントとして赤いラインが袖や襟に加えられている。
着心地はかなり快適といえるだろう。
「それじゃあ、学園案内と行こうか。」




