11話 対面
目をゆっくりと開けると、私の目の前に映った景色は住宅街ではなかった。絵本で見たような城がそこにはあった。
私は景色に圧倒され、見とれてしまい足が止まってしまった。
「どうかした?」
白銀さんは不思議そうな顔をしてこちらを見た。
「あ、いえ。」
「壮観な景色だなと思って。」
空にこんなものがあったとは思わなかった。
「いい所でしょ。」
「そうですね。」
「絵本でしか見たことがないです。」
花壇には見たことがない花が植えてあり、大きな噴水があったりと、まさに童話の世界である。
「それじゃあ……」
「会ってもらいたい人がいるところに行こうか。」
景色で忘れていたが、今回の目的は人に会うこと。
私は白銀さんの後ろを景色を楽しみながら歩いた。
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……………
「ここだよ。」
最初にいたところから5分ほど歩いたところで、白い壁で円柱状の大きな施設の前で白銀さんは止まった。
「ここは?」
「祠の保護ならびに研究をしてる場所だよ。」
「祠?」
「そう。」
「式神が宿る祠を保護してるよ。」
「式神って?」
「あ、そっか。」
「まぁ、会ってもらう人に会うまでの間に説明するよ。」
そういうと、白銀さんはこの学園について語った。
私の中にいるお姉ちゃんは式霊というお化けのような存在で、式は魔法のようなものであり、この施設では式の力を貸してくれる式神を保護していることを分かりやすく教えてくれた。
この学園では、その式の使い方などを教えているそうだ。
そして、私が今から会う方は式神のなかで最も強い式神みたい。
「起きてるかな?」
白銀さんは大きな門をノックした。
相手は人だと聞いていたが、神様なのかな……?
失礼がないように気をつけないと。
「入っていいぞ。」
中からは若い女性の声がした。
白銀さんが門の横に名札をかざすと、門はゆっくりと異音をたてながら左右に開いた。
しかし、門は半分ほど開いたところで止まった。
「ごめんね……」
「零式が門を何度も壊したから、色々おかしくなってしまったみたいで立て付けが悪くなってるんだ。」
この門、丈夫そうだけど……壊したって……かなり強い方なんだろうね。多分。
門の先にみえた景色は、田舎にあるおばあちゃんの家だった。
「ほー。」
「お前か。」
中にいたのは中学生くらいの和服を着た少女だった。
見た目は小さいが、真っ直ぐこちらを見る目や立ち振る舞いからなんとなく強さを感じた。
「こ、こんばんは。」
緊張とオーラのようなものが混ざりあっているせいで言葉につまる。
少女は私の周りを歩き回り、まるで芸術品を見るかのように私を見た。なんだか少し恥ずかしかった。
「すごいなこりゃ。」
「私ですら式を感じ取るのが難しい。」
お姉ちゃんを探しているのだろうか。
白銀さんが言うには、お姉ちゃんは式霊の中でもとても強い部類に含まれるみたい。
ただ、お姉ちゃんは式を隠す能力が高いので、今まで私とお姉ちゃんを見つけることが出来なかったと言われた。
「力はお前が抑えているのか?」
私は今日まで式というものを知らなかった。
だから抑える方法など知らない。
「違います。」
「ほーん……」
零式さんは不思議そうな顔をした。
「お前に取り憑いている式霊は今呼び出せるのか?」
「分からないですが……」
「声をかけてみます。」
考え事をするように、心で想えばお姉ちゃんに声が届く。
(お姉ちゃん。)
「聞こえてるよ。」
「出てもいいんだね。」
(うん。)
お姉ちゃんは黒い霧を出しながら、私の影から現れた。




