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お気に入り小説5

自意識過剰な王太子と、光栄ですわと微笑む公爵令嬢の逆襲の愛

作者: ユミヨシ
掲載日:2025/09/15

「ラディス王太子殿下だわ」

「なんて素敵な」

「ああ、わたくし選ばれたい」


10人の高位貴族の令嬢達が広間に集められている。

彼女達の歳は18歳。

皆、口々にラディス王太子に選ばれたいと、口々に囁いていて。

ラディス王太子は、令嬢達の前に立ちながら、その言葉を満足そうに聞いていた。



ラディス王太子は金髪碧眼の美男である。歳は18歳。

10人の令嬢達のプロフィールはあらかじめ、書類を渡されて解っている。

貴族達が行く王立学園では男女別なので交流がなかった。

だから、直接話をした事はないのだ。


公爵令嬢、伯爵令嬢の学業の成績の良い、見目麗しい令嬢達。

この中から自分で婚約者を選ぶのだ。


ラディス王太子は決めていた。

そして実際に彼女を見て確信した。


ヘルディーナ・アルド公爵令嬢。

家柄も良く、勉学にも秀でており、何より剣技も強い令嬢だ。


銀の髪に青い瞳。

とても美しくて、噂以上の美しい立ち姿に、ラディス王太子は満足したのだ。


だから彼女に近寄って。


「私の心は決まっている。ヘルディーナ・アルド公爵令嬢。そなたを私の婚約者に選びたい」


「選んで頂けて光栄でございます」


ラディス王太子は満足した。


「他の者達は帰ってよい」


皆、カーテシーをし、部屋を出ていく。

皆、さぞかし気落ちしたであろうと、ラディス王太子は思う。

自分程の美しく何もかも優れている王太子に選ばれなかったのだ。

今宵は枕を涙で濡らして眠れないであろう。



そう思って、皆を返した後、改めてヘルディーナを呼びよせた。


「改めて、アルド公爵夫妻を呼んで、婚約を結びたい。ヘルディーナ。私の婚約者に選ばれて嬉しいであろう。私もヘルディーナのような美しくて賢い女性が婚約者になってくれて嬉しく思うぞ」


「わたくしも光栄でございます」


「結婚式は来年になる。それまでに、色々と王宮で学ぶこともあろう。解らない事があったら教師に聞くがいい。私で解る事なら教えてやるぞ。なんせ、私は優秀な王太子だからな。見目も麗しく、皆から人気がある。だから、ヘルディーナも私の妻になるのだ。幸せであろう」


「はい。光栄でございます」


「ヘルディーナは本当に美しいな。そうだ、今度、ヘルディーナの為にドレスを贈ろう。私からの気持ちだ。遠慮しなくてよいぞ。私程の男から贈られるのだ。感謝するがいい」


「はい。光栄でございます」


「なら、下がるがいい。改めて公爵夫妻と共に来た時に婚約を結ぼう」


「光栄にございます」


ヘルディーナは帰って行った。


あれ?彼女、光栄でございますしか言わなかったんじゃ‥‥‥


姉のフィリア王女がやって来て、

「やっと婚約者を決めたのね。普通ならもっと早く決めるものなのに。まったく、お前は遊びまくっていたから」


「だって、姉上。婚約者が決まったら遊べないではありませんか」


「それはそうでしょうけど」


「令嬢達は口々に、ラディス王太子殿下だわ、なんて素敵な、ああ、わたくし選ばれたい って言っていたぞ」


姉は呆れたように、


「馬鹿ね。言わされたに決まっているじゃない。令嬢達は今頃、喜んでいるわ。きっと。やっと解放されるって」


「嘘だ。皆、落ち込んで今宵は寝られないはずだ」


「だったら、まだ、令嬢達がいるから、聞いてみなさいよ。本音を」



令嬢達がいる控室。

皆、帰りの馬車を待っているので、まだ令嬢達がいるようだ。

隣の部屋から中の様子が見える穴がある。

そこから覗いて中の様子をラディス王太子は見る事にした。

姉のフィリア王女ももう一つの穴から覗き見ている。


令嬢の一人が、


「やっと婚約出来るわ。愛しいバレットと。長かった。何で18歳まで婚約者を決めないのよ。あの王太子っ」


他の令嬢もお茶を飲みながら、


「本当に、下位の令嬢と遊んでいたんでしょ?まだ結婚したくないって。迷惑よね。お陰でわたくし達は婚約も出来ない。わたくしもやっと水面下で婚約を打診していたレイド公爵令息と婚約出来るわ」


「ヘルディーナ様はどうなのですか?選ばれましたけれども」


ヘルディーナは優雅に扇をあおぎながら、


「選ばれたのなら仕方ないわね。でも、光栄ですわって言っておけば会話は成り立つから楽だわ。だってあの人、自意識過剰なんですもの」


令嬢達は皆、笑って、


「本当に自意識過剰ですわね。確かに美しいですけれども」

「下位の令嬢達と遊びまくっていたとか?」

「病気の方は、まぁ王家の医師がついているでしょうけれども」

「優秀という噂ですけど、まぁ、あの自意識過剰は鼻につきますわね」

「オホホホ。そうですわね」


ヘルディーナは立ち上がって、


「迎えが来たようですわ。それでは皆様、ごきげんよう」




ショックだった。皆、私の事を自意識過剰だと思っているんだ。

私はそんな事はないぞっと言いたかったが、隣で姉のフィリア王女がぽつりと、


「自意識過剰。確かにそうだわ」


「姉上。私は当然の事しか言っていません。私程の男の妻になって幸せだろうとか、だってそうでしょう。こんなに美しくて、賢くて、剣技も強い。こんな凄い男の妻になるんだ。自意識過剰ではなく、事実でしょう」


「でも、皆、嫌がっていたじゃない?下位貴族の令嬢達と遊んでいた報いね」


「だって、遊べるのは婚約までだと思って」


「幸い子を孕んだ娘はいないようだけれども、いたとしても、闇に葬るでしょうね」


「それはおかしいでしょう。私の子を闇に葬るだなんて」


「結婚前に子を作るなんて、王太子としてあり得ないわ。わたくしが男だったら国王になるのに。本当に馬鹿な弟で頭が痛い」


そう言って姉は部屋を出て行ってしまった。

ともかく、これからはヘルディーナとの仲を深めなくては。

私程の男と婚約するんだ。きっと光栄に思っているに違いない。

だけど、返事が光栄ですわ だけじゃなんだかな‥‥‥



ヘルディーナと婚約を結んだ。


「今日も天気がいいね。私とデートが出来るんだ。幸せだろう?」


「そうですわね。光栄ですわ」


「手を繋ごうか。私達は婚約者なのだから」


「光栄ですわ」


「私の事をどう思う?美しいと思うか?」


「ええ、貴方と婚約出来て光栄ですわ」


「そうか。美しいと思うか。ヘルディーナも美しいぞ」


「そう言って頂けて光栄ですわ」


うわああああああああっーーー。頭が痛い。

全て光栄ですわで返すんじゃないっーーーー。

そう叫びたかった。


くそっ。光栄ですわ以外に言わせて見せる。


「ヘルディーナの好きな物はなんだ?」


「わたくしに興味を持って頂けて光栄ですわ」


「いやいや、だから君の好きな物は?ドレスか?宝石か?」


「お気遣い頂けて光栄ですわ」


「だから、君の好きな物は?」



互いの間に沈黙が訪れる。

ラディス王太子は焦った。


「ヘルディーナの好きな物を私は知りたい」


「そう言って頂けて光栄ですわ」


「怒っているのか?私が君を婚約者に選んで」



ヘルディーナに近づいて、


「不敬に問わぬ。本心を言ってくれ」


ヘルディーナはまっすぐラディス王太子の方を見つめて、


「18歳まで、わたくしも含めて10人の令嬢達が婚約者を持つことも叶わず、貴方の我儘に振り回されました。理由が貴方が下位貴族の令嬢達と遊びたいが為。政略で早く婚約を結びたい家もあったでしょう。好きあって婚約したい令嬢だっていたでしょう。貴方の我儘で皆、待たされた。わたくしだって‥‥‥」


「好きな人がいたのか?それなのに、婚約も出来ずに待たされて、私が選んだからその好きな人とも結ばれなかった???」


「初めてお会いした時からお慕いしておりました。貴方は王宮の庭を案内してくれましたわ。とても親切に。それがわたくしの初恋。でも、貴方は屑の美男だった。下位貴族の令嬢達と遊びたいから婚約を待てと?ラディス様なんて変…辺境騎士団へ行ってしまえばいい。屑の美男だとさらわれてしまえばいい。わたくしは貴方なんて大嫌い。大嫌いだわ」



女を泣かせる美男の屑が大好物な変‥‥辺境騎士団へ行けだなんて。

ああ、私は自分の事を最高の男だと思っていた。

なのに、ヘルディーナは最低な屑だという。

下位貴族の令嬢達と遊んでいた事で。


ヘルディーナは帰ってしまった。


結局、ヘルディーナと結ばれた婚約は解消された。

ヘルディーナに拒否されたのだ。


残り9人の令嬢達は、さっさと他の家と婚約を結んでいた。


姉フィリア王女に笑われた。


「王太子妃がいないだなんてどうするのよ。わたくし?わたくしはレドス宰相と結婚するからいいのよ。いっその事、女王になろうかしら。貴方を追い落として。今、この王国は女王を認めていないけれども、認めるように働きかけても良いわね」


王太子から引き下ろされてしまう。


父である国王に訴えた。


「姉上が女王になりたいって言っています。私が王太子なのに。父上、姉上を叱って下さい」


国王は呆れた様子で、


「お前がさっさと婚約しないからだ。アルド公爵令嬢や他の令嬢達に愛想をつかされたのだろう?婚約解消を受けざるを得なかった。とてもじゃないが王太子妃は務まらないとアルド公爵令嬢が。王太子妃がいない王太子ではな。自力で王太子妃にふさわしい令嬢を探してこい。でないと、フィリアを女王にするよう、私も考えることにする」


まずい。マジでまずい。

かといって、ヘルディーナ以外にもう、王太子妃にふさわしい女性は残っていないのだ。候補だった9人は皆、婚約してしまっている。


アルド公爵家に馬車を走らせた。

公爵家に着くと、公爵夫妻とヘルディーナに面会を求めた。


「王太子妃になれるのだ。私程の男の妻になれるのだ。どうかお願いだ。私と再び婚約してくれ」


「お断りしたはずです。屑の美男なんていらないわ」


「婚約前に遊んだだけじゃないか?不貞は働いていない」


「18歳まで待たされたんですわ。聞いていましたの?貴方の我儘で。お断り致します」



バンと扉が開いた。

ガタイの逞しい男達が、ガシっとラディス王太子を拘束した。


「屑の美男情報有難う」

「こいつを頂いて行く」

「屑の美男教育をっ」


ヘルディーナが情報を流したのか?


アルド公爵は笑って、


「我が公爵家はフィリア王女様を支持します。ですから安心して変…辺境騎士団へ」


ヘルディーナがアルド公爵に向かって、


「お父様。確かに変…辺境騎士団へ行くのがふさわしいと、わたくし言いました。でも、行かせるのは可哀そうですわ。ですから、王太子殿下が改心して下さると言うのなら、再び婚約を結んでもよくてよ」


「改心???」


「ええ、謝罪を求めます。わたくしと、他の家の令嬢9人に。それから二度と、他の下位貴族の令嬢達と遊ぶことは許しません。わたくし以外の妻を持つことも許さないわ。例え、わたくしに子供が出来なくても。それでよければ婚約して差し上げます。我が公爵家はラディス王太子殿下を支持致しますわ。どうします?このまま変…辺境騎士団へ行きますか?」


ラディス王太子は焦った。

周りのムキムキ達が怖い。

ギラギラした目で見られている。

このまま連れて行かれたら。


一人の金髪の美男が、ラディス王太子に声をかけてきた。

彼は変…辺境騎士団四天王の一人、名はアラフと言う。


「俺達としては連れて行きたいんだが、そっちの都合もあるだろう?」


ヘルディーナはアラフに向かって、


「そうね。連れていかれたら困るわ」


ラディス王太子は地に頭を擦り付けて、


「反省する。心を入れ替える。これからはヘルディーナの言う事を何でも聞くから、だから変…辺境騎士団は勘弁してくれ」


アルド公爵は、


「フィリア王女様を支持したかったんだが、娘が‥‥‥仕方ない」


「お父様。ラディス様が泣いて頼むのですもの。再び、婚約を結んであげましょう」


アラフは、


「そこまで言うなら仕方ない。俺達は撤退しよう」


変…辺境騎士団員達は帰っていった。





ラディス王太子はヘルディーナに言われた。


「わたくし程の女性と結婚出来るのです。感謝しなさい。王太子殿下」


「ああ、感謝する。助けてくれて有難う」


一生頭が上がらない。そう思った。




それからのラディス王太子は、心を入れ替えた。

自意識過剰だったなと反省をして、ヘルディーナに尽くした。


「ああ、ヘルディーナ。今日も美しい。君のような美しい人と婚約出来て私は幸せだ」


「まぁ、そう言って下さって嬉しいわ」


「ああ、そうだ。もうすぐ誕生日だな。盛大な誕生会を催そう。ドレスや首飾りもプレゼントしよう。愛しいヘルディーナ」


ヘルディーナが微笑んでくれた。

本当に幸せだ。そう思えた。



ラディス王太子は後に、無事、国王に即位した。

ヘルディーナ王妃との仲は良く、三人の王子と一人の王女に恵まれた。

姉のフィリア王女は宰相に嫁いだ。ヘルディーナ王妃とアルド公爵と政治的に衝突もあったが、後に和解して王国の力になった。


ラディス国王は一生、ヘルディーナに頭が上がらなかったと言われている。







アルド公爵「見事な芝居だな。ヘルディーナ」

ヘルディーナ「お父様こそ。でも、これでラディス様は一生、わたくし達に頭が上がりませんわ。王国もいずれ、わたくし達の言いなりに」

アルド公爵「ヘルディーナ。お前はラディス王太子殿下の事を愛しているのか?」

ヘルディーナ「さぁ。どうなのでしょうね」



愛しているわ。初めてあった時から。貴方が他の令嬢達と遊んでいるって聞いて許せなかった。だから一度は断ったの。でも‥‥‥やはり貴方の事が好きなのね。もう、一生離さない。貴方はわたくしの蜘蛛の糸にがんじがらめになって、一生、わたくしの事を愛して頂戴。いいわね


とある変…辺境騎士団


アラフ「公爵に協力しろと言われたからな」

ゴルディル「報酬も貰ったし、今回は仕方ないか」

マルク「しかし、なかなかの美男だったな」

エダル「次に行くしかないな。次だ。次」


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