友達
【食う寝る所に住む所】
「ジュネーブ!私のクローゼットはどこ?」
「ジョウ様!こちらです。
…最早指摘するのも面倒になってきましたが、わたくしはガラムです。」
「…大きいわね。ダークライクローゼットだったかしら。」
「多分ウォークインだと思います。」
「そう。多分それね。」
「それにしてもなぜいきなりクローゼットなどお探しに?」
「今日私は友達と竹下通りとやらに行くのよ。若者文化とやらの中心地から少しズレた場所よ。」
「ご友人がいらっしゃったのですね。
てっきり、時とゲジだけが友達なのかと。」
「と〜き〜と、ゲ〜ジだけ〜が〜と〜もだ〜ち〜さ〜♪失礼ね。友達くらいいるわよ。まぁ、ゲジ達よりは親交度は低いけれども。」
「ジョウ様のご友人からはその頭のクレーンはどう映っているのでしょうか。」
「最先端のファッションだと説明しているわ。私の通う学校は超名門。上流階級の国民ばかりよ。ゆえに頭はいいけど馬鹿ばかり。経験が伴っていないのよ。」
「…ジョウ様が申されると説得力がすごいですが…あまり上流階級を馬鹿にしないほうがいいですよ。逆にジョウ様には経験しかないですからね。」
「私の友達は参議院議長の娘らしい。」
「…⁉︎それは…それは…ものすごい。
口答えしたら消されそうですね。」
「えぇ。何度かその娘の父からの刺客に殺されかけたわ。」
「え。ジョウ様は参議院議長から命を狙われたことがあるので?」
「そうなるわね。だからお父様に議長の派閥への協力をなくすようおねだりしたわ。
議長が泣きついてきて非常に快感だったわ。」
「なんと言う所業…刺客は大丈夫だったのですか?」
「えぇ。ギャフンとしか言えない体にしてやったわ。今頃おうちでギャフンギャフン言ってるはずよ。」
「…そういえばお約束の時間は大丈夫なので?」
「そうだったわ。キャロル。貴方も服選びを手伝いなさい。」
「ガラムです。わたくしのセンスは壊滅的ですが、よろしいのですか?」
「ええ。でも、私よりは幾分マシであるはずよ。」
「そうですか。ジョウ様自覚あったんですね。」
「そういうあなたも否定しないのね。
まぁいいわ。
さぁ。選びなさい!」
「え⁉︎今ですか?」
「今よ。4分33秒以内に選びなさい!」
「えぇ…」
「うーん。地味ね。」
「地味ですか?ジョウ様には…その…
付属品が多いので…あ!例えるなら…」
「付属品なんて失礼ね。」
「そうです!ジョウ様は派手な色の携帯電話でございます。ですがストラップを派手派手にしてしまうと携帯電話本体の派手さが霞んでしまいます。そういうことです。」
「どういうこと?」
「…ジョウ様はどのような服をお召しになりたいのですか?」
「本音を言うと、紅白歌合戦の小林幸子のような服を着たいわ。」
「…ジョウ様はすでにそれに近い出立でございます。」
「それは本当なの?なら私は普段着で行っても問題ないわね。」
「…そうですか。ならば普段着でお出かけなされば良いと思います。」
「そうするわ。変に着飾るよりも、ありのままの方が良いわよね。服は人の趣味は色濃く現れる。でも、結局は内面。見た目はただの皮にすぎない。その皮に囚われてつまらない人間になってしまうのは避けなければならないわ。」
「ジョウ様が仰ると説得力が皆無ですね。」
「そうね。やっぱり前言撤回よ。」
「…ちなみに竹下通りでは何を?」
「キャッサバのデンプンをミルクティーに入れたものよ。」
「タピオカミルクティーですね。
それかなり前にブーム終わってませんか?」
「ええ。タピオカミルクティーの店の列が短くなる日を待っていたらこうなったわ。」
「完全にタイミングを間違えましたね。」
「ええ。時代は、地球グミよ!」
「…それも遅れてません?」
「え。」
「きっと、ジョウ様の耳に入る頃にはもうそれは時代遅れなのです。」
「…この私が…時代遅れ⁉︎
令嬢ショック‼︎ 立ち直るのに30分はかかりそうね…」
「ではジョウ様。少し未来に飛んで流行を掴んできてはいかがでしょうか。」
「それ名案ね!いざ、1ヶ月後へ!」
「1ヶ月後ですか。中々いいチョイスですね。」
「今帰ったぞ。ズバリ発表しよう!
1ヶ月後の流行りは!」
「ドゥルルルルルルルルルルルル…ダン!」
「食べ物です!」
「なんの⁉︎」
「ここまでがテンプレートよ。
本当に発表するわね。1ヶ月後の流行りは!」
「ドゥルルルルルルルルルルルル…ダン!」
「カラフルなやつです!」
「だからなんの⁉︎」
「…」
「…」
「うん。キュレム。貴方のドラムロールが原因ね。それのせいで頭の中がピスタチオよ。」
「ガラムです。そうですか。
ドラムロールはやめますね。」
「コホン…気を取り直して!
1ヶ月後の流行りは!」
「3 2 1 GO!」
「キニュゲニです!」
「なんそれ!」