シェイクスピア
「ジョウ様!ハルカンダ家初の舞踏会の準備が整いました!」
「舞踏会…だって⁉︎いいなぁ!
豪華絢爛、煌びやかの象徴!
僕の憧れそのものだ!あぁ、なんて素晴らしい!」
「ジョウ様?宝塚のような喋り方でございますね。」
「宝塚。そうだね…確かに似ているかもしれない。」
「そしてその髪型…ハウルみたいですね。」
「ハウル…あぁ、スタジオアリスか。」
「ジブリです。」
「スタジオアリッス♪」
「…え?」
「スタジオアリスのCMだ。
もしかして…知らないのかい⁉︎」
「そう…ですね。申し訳ございません。」
「この世にスタジオアリスのCMを知らない人がいるだなんて⁉︎僕は信じられない!
これは夢なのか?そうだと言ってくれぇ!」
「今度のジョウ様はオーバーリアクションですね。」
「ふっ…はっはっはっはっは!
そうとも!僕はシェイクスピアの演劇を学んできたんだ。ハムレットにマクベス、リア王、オセロー!」
「四大悲劇ですね。」
「おぉ、ロォミオ!貴方はどうしてロミオなの!」
「…その劇団では主役をお務めに?」
「いや!その他大勢役だ!」
「モブってことですね。」
「モ、モブ⁉︎なんてひどいことを言うんだ!
僕は君の言葉で深く傷ついた…この傷をどう癒せばよいのかわからぬ…」
「…申し訳ございません。」
「モブ…いや!私はやはり私だ!ルジョウナでなくなっても!ルジョウナってなんなんだ?手でもない、足でもない。腕でも、顔でも、人の身体のどこでもありはしない!
あぁ、何か他の名前にしてくれないものか…」
「…ジョウ様。」
「ジョウ…ジョウ…それだ!さっきから君が僕のことをジョウ様と呼ぶそれ!今日から僕はジョウだ!」
「え?」
「え?」
「もしや…ジョウ様少しタイムトラベルを失敗なされました?ここ数日のジョウ様は変でございます。」
「…そうか。確かに正確な日時まで覚えてタイムトラベルしたことはあまりない…」
「え?」
「え?」
「それってかなりまずいのでは…?」
「なぜだい?」
「やや!わたくしなんだかおかしくなってまいりました。昔のことが思い出せなく…」
「…僕もだ!なんと言うこと!」
「ジョウ様はどこか触れてはならない何かに触れてしまったようですね。」
「…僕もだ!なんと言うこと!」
「どうされました?」
「…僕もだ!なんと言う…こと…」
「ジョウ様!ジョウ様!しっかりしてください!ジョウ様!…おや⁉︎空が崩れてきています!時空の捻れが発生した…とかそれに近い現象なのでしょうか⁈」
「…いいかい、ガラム。今から僕はこの崩壊の原因を見つけ、止めてくるよ。時計を見せてくれ。」
「はい!」
「うん。10分経っても僕が戻らなかったら、もう諦めなさい。いいね?それじゃあ…さらばだ!」
「ジョウ様ぁぁぁぁぁ!!!」
「何を叫んでいるの?」
「え?なぜわたくしの後ろに…?」
「そうね。崩壊を止められた…とでも言っておきましょう。」
「本当ですね。空が戻っています。」
「今後は少し自重するわ。タイムトラベルもほどほどにする。どうやら私が原因でパラレルワールドが過剰に存在しすぎて世界の大幅な収縮が始まっていたみたい。」
「何を仰っているのかさっぱりです。」
「だから、他の世界をいくつか滅ぼして来たわ。」
「え?」
「これでしばらくは大丈夫よ。
誤った選択を繰り返さない限りはね。
私たちの世界を守らなきゃいけない。
そして、私は次期当主としてしっかりしなきゃいけない。もう過ちは侵せない。」
「…」
「さぁ、舞踏会…だったかしら?」
「…はい。ジョウ様。ワルツは踊れますか?」
「え?ワルツなの?聞いてないわ。
折角世界滅ぼすついでにロボットダンスを練習してきたのに。」
「えぇ。残念ながらワルツです。」
「そう…修行してくる。少し待ってなさい。」
「ジョウ様…行ってしまわれました。
自重すると言ったのは誰でしたっけ。
まぁ、あれがジョウ様。過剰に縛り付ける必要はありませんね。元気ならばそれで良いのです。」
「全部聞こえてるわ。」
「ジ、ジョウ様⁉︎」
「さぁ、行くわよ。セムラ!」
「…ガラムです!」