世紀末
【食う寝る所に住む所】 世紀末
「ジョウ様!ジョウ様!
…ここにおられましたか。
中庭で何をされているんですか?」
「エドヒガンとオオシマザクラを交配したらソメイヨシノができるだろ?
ならHey!Say!JUMPとマーシャル諸島を交配させたらどうなるのか。気にならねぇか?」
「何を仰っているのかさっぱりです。」
「そうか。気にならねぇのか。これだからプレミアムは。このままだと一生オレの世話人だぞ。」
「ガラムです。ハッ!…ジョウ様、その髪型は…」
「これはモヒカンだ。イケてるだろ?
これは先ほど29XX年で教わった流行りの髪型だそうだ。」
「ハルカンダ家のご令嬢としてふさわしくありません。すぐに元の髪型にお戻しください。」
「オレの元の髪型とは?」
「…そう言われますと…ジョウ様は2日に一度は性格ごと髪型が変わられますし…
たしか、ジョウ様がタイムトラベルに目覚められる前はギブソンタックでございました。」
「ギブ…なんだ。」
「ギブソンタックです。髪を低い位置で纏める髪型です。」
「ほう。オレはそんな髪型だったのか。」
「ちなみにジョウ様は一度のタイムトラベルでどのくらいのお時間を過ごされるのですか?」
「そうだな。1つの行き先に5年は滞在するようにしてるぞ。その年代を理解することができる最低限の長さが5年だと計算した。」
「…とすると、ジョウ様は相応に歳を取られるはずでは?」
「甘いな。3万1321年の技術により、オレはトラベル中に歳を取ることはないだぜ。
ま、精神年齢は取るけどな。」
「…毎回リセットされてませんか?」
「オレが幼いと言いたいのか?
上等だ。オレとお前でタイマン張って勝った方の意見が正しいということにしよう。来い!」
「お待ちください。まず、タイマンなどという下品な言葉を使ってはなりません。そしてわたくしはジョウ様に勝つことなどできません。」
「そうか。あぁ。そういえば足を改造したぞ。見ろ!」
「…なんですかこれは。」
「分離式多脚歩行ユニットだ。
普段は人間のように一対の足だ。
だが、オレが思えば6本の足に変形し、壁や天井も自由自在に歩ける!すげぇだろ。」
「正直気持ち悪…なんでもないです。
すごいですね。すごいですが、どこを目指しておられるのかわかりません。」
「…インターホンがなっているぞ。」
「どなたでしょうか。わたくし見てきますね。」
「何やら巨大な荷物が届きました。
ジョウ様が注文されたのですか?」
「あぁ。それはオレがAmazonで注文したバイクだな。」
「バイクですって?」
「あぁ。さぁ、早速サーキットへ行くぞ。
スラムにはタイムを測ってもらう。」
「ガラムです。ジョウ様はバイクの運転など出来るのですか?というより、危険です。
わたくしが許可しません。」
「あぁ?オレを阻むか?タイマン張るぞ?」
「ジョウ様がなんと言おうとだめです。
ジョウ様の身に何かあったらわたくしもう耐えられま…ジョウ様?ジョウ様?行ってしまわれました…追いかけねば。」
「3周のタイム、4分半。そのバイク速すぎませんか?」
「だな。オレの加重力システムと運転テクニックでここまでの速度を実現している。」
「バイクの性能では?」
「いや、オレでなきゃこの速度はでねぇ。
お前もやってみるか?」
「わかりました。ではバイクをお借りしますね。行って参ります!」
「お父様!ガラムが私のバイクを盗みましたわ。」
「え?」
「うーむ。けしからん。ガラム!減給だ。」
「い、いえ、ジョウ様が…」
「ガラムは私の娘が嘘をつくとでも言いたいのかね。」
「…申し訳ございません。」
「ちゃんと謝るのね。偉いわ、テレル。」
「…ガラムです。」