第0話 大火事と雷様
この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
ーーーーー気づけば、燃え盛る炎の中にいた。だが、熱さや恐怖はない。代わりに、まるで10年来の友人かのような、隣にいて当然かのような安心感がそこにあった。そこでふと立ち上がり歩き始める。すると、鋭い痛みが全身に走り、すぐ後ろに倒れ込んでしまった。
どすんっと後ろに倒れ込んでみると、意外にも痛みはなく、むしろどこか心地いい。ーーーーーだが、その異様さに対して恐怖を抱いていないと言うことに、その時気づいた。
「...........ァ.....ッア...............」
瞬間。恐怖を覚えてすぐに起き上がる。その急な動きが悪かったのだろう。肋骨の辺りに痛みが走った。それでもそこにいてはダメだと、本能から忠告を受けたので、立ち上がり歩き出した。
ーーーーー燃えている。ただ。燃えている。異様ではあるが、先ほども言うように恐怖はない。ただただ、赤い熱が周りのものと、溶け合うように広がり続けている光景。それだけでしかない。元は家だったもの。あるいは、生き物だったもの。それら全て、燃え盛る炎に包まれ、ただ、母なる大地へ帰るかのように塵と化し、消えた。ーーーーー炎が腕にかかった。それだけなのに、自分は自分の命日を悟った気になった。
その時だった。ーーーーー轟音。頭の中を引き裂くような雷の音が、回転し続けていた。
「よぉ。少年。初めましてだが、.........穏やかじゃないねえ。全くあいつは」
「............」
「ありゃ。もしー、死んでるぅ?大丈夫そ?」
「.......あ、あなた、は?」
「ーーーーーあ?俺か?俺は〜〜〜。んー」
そのとき、俺はずっと頭の中がパンクしていた。それはそうだろう。大火事でも、割と一杯一杯であったのに、目の前に突然変な男が目の前に現れたのだ。全くもって意味がわからなかった。
その男は、しばらく黙り込むと、こう堂々と言い放った。
「強いていうなら。ーーーーー雷様?」
そう。一人の怪物が、名乗った。
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