98話 イチョウ並木
僕は現在、通院しているので診察と薬を貰いに遠山先生が勤務している病院に行った。
いつも病院に行く時は誰かしらが付いてくるのだが今日は一人で行きたいと僕はそう言ったので僕一人で来た。
「久しぶりだね、折部君」
遠山先生はそう言った。
「お久しぶりです、遠山先生」
僕はそう挨拶を返し席に座った。
「今日は一人なんだ」
「ええ、そうです。遠山先生と一対一で話したくて」
僕は答えた。
「聞かれたくない話?どういう話だい?」
遠山先生は僕に聞いた。
「僕は遠山先生にはもう会わない方が良いと思うんです」
「何で?」
「最近、僕が戦う敵は僕では無く家族や友人、知り合いを狙うんです。その方が有利に事が運ぶ。僕は守る物が増えすぎた。もし遠山先生や先生の家族が敵に狙われたら僕は守り切れないと思うんです。だから今日限りで病院にはもう行かないし、遠山先生とも会わないつもりです」
僕は聞かれたので本心を話した。
「遂にこの時が来たか…。君がいつかそう言うと思ってずっとその言葉を待っていたよ」
遠山先生はそう言った。
「すいません、先生。僕を助けた事で関わり、僕の戦いに巻き込む形になってしまって」
僕は謝った。
「良いんだよ、僕が君を助けると決めた事だ。後悔はしてないよ」
遠山先生はそう言った。
「じゃあ、もう通院は終わりね。最後に出す薬はちゃんと飲んでね。今回は四ヶ月分出すから」
「分かりました」
僕はそう答えた。
「一つ聞いて良いですか?」
僕は遠山先生に聞きたいことがあるので聞いた。
「何だい?」
「遠山先生はこれからどうするんですか?他の世界に家族で身を潜めるんですか?」
僕は聞いた。
「んー、そうだね。当分はこの病院で医者として勤務するつもりだよ」
遠山先生はそう答えた。
「大丈夫ですか。僕と過去に関わっている事で命が狙われるかもしれないですよ」
僕は遠山先生の言葉を聞き少しばかり焦った。
「君がいるから大丈夫だと思っているよ」
「そうですか」
僕はそう答えるしかなかった。。
「急な話ですけど、何か僕に今後の事でアドバイスとかってありますか?何も無ければ無いでいいですけど…」
「………」
遠山先生は少し考えていた。
「君にアドバイスをするとしたらあまり人に恨まれる事はしないように気をつけた方が良いと思うよ」
「君はあまり人に恨まれる事はしないと思うけど、君は子供が沢山居る、沢山いると過ちを犯す子も現れるのかもしれない。君はそうならぬよう正しい道を示さないといけないっていうのが僕が君へ送る最後のアドバイスだ」
遠山先生はそう僕に最後のアドバイスをした。
「アドバイス、ありがとうございます。僕の子供に正しい道を示します」
「先生、話が長くなってしまってすいません」
「良いよ。今日が君と会う最後の日だから」
僕と先生は立ち上がった。
「僕、先生には感謝しているんです。あの時、先生が僕を助けてくれなければあの永遠の夜を今もずっと過ごしていた。助けてくれて本当にありがとうございます」
僕は心からの感謝を遠山先生に伝えた。
「良いんだよ、君はよく頑張った。あの永遠の夜を脱出したんだからね。あの経験で今の君がある。もう病院に来ないように生涯を全うするんだ。二度目はもう無いからね。私はもう君を助ける事が出来ないから」
「怖い事、言いますね先生。ふふ」
「そうだね。ごめんごめん」
僕も遠山先生も互いに笑った。
「先生の事、ずっと忘れません」
僕は思いを伝えた
「僕も君の事、忘れないよ」
そう遠山先生も返した。
「ありがとうございました」
僕はそう言い遠山先生に手を向けた。遠山先生も僕に向けて手を出した。そして僕らは握手した。もうこれで僕は遠山先生と会うのは最後になった。
イアが居なくなって十ヶ月以上の時が経ち十月の下旬になった。リリアはルークの子供をすでに身ごもっており一ヶ月前に出産した。出産は大変だと聞くが何事も無く子供は生まれた。生まれた子は女の子だった。リリアが退院したので外で皆で食事をする事になった。
「綺麗だね」
「ああ」
僕達はイチョウが立ち並ぶ中を歩いていた。地面には黄色いイチョウの葉が沢山落ちていた。
今回の食事に遠山先生とその家族以外のいつものメンバーを呼ぶと皆、集まった。僕らは今日の目的地に向けて歩いていた。
「もう着くね。あそこみたいね」
エリナがそう言うと僕らは神社に辿り着いた。そこには大きなイチョウの木が立っており、地面は黄色で染まっていた。今日は神社の宮司さんにお願いしてイチョウの木の下でご飯を食べるのを許可して貰った。
僕らはレジャーシートを引き、弁当と飲み物を出した。
「今日は皆、集まってくれてありがとう」
僕は皆に最初にそう言った。
「皆に集まって貰ったのは皆知っての通り、私に可愛い初孫が出来たからだ。みんな、頑張った私の娘のリリアに拍手!」
僕がそう言うとみんなリリアに『おめでとう』と言った。
「僕は皆が笑顔で暮らせるようにこれからも頑張りたいと思う。まあ、黒十字騎士のみんなや阿修羅、僕の子供達がいるから大丈夫だな、みんなでこの幸せを守って行こう」
僕はそう言った。
「みんな乾杯の準備は出来たかな?」
「「出来たよ」」
皆はそう答えた。
「これからのみんなの明るい未来に乾杯!!」
「「乾杯」」
皆で乾杯し、食事を始めた。
子供達は食事を食べ終わると美しい景色の中で地面に落ちたイチョウ沢山手に取り、散撒いて燥いでいた。僕はその光景を見ていた。僕はこれからもこの幸せを守っていきたいと思った。
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