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暗黒大景 / ANKOKU TAIKEI【パイロット版】  作者: 火山 千
第1部

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97話 イアとの別れ

 僕とイアはご飯の時間なのでリビングに向かった。そして遅めの朝ご飯を食べた。食べ終わると再び、僕らはソファーに座った。


「お父さん、もうさよならの時間が来たみたい」

 イアがそう言うとみんな察し、集まってきた。イアの身体は少し光り出した。もうこの世界には居る事は出来ないみたいだ。みんなイアが居なくなる事を悲しんだ。イアは悲しむ僕の子供を抱きしめ、別れの言葉を言った。


「お父さん、言ってない事があるの」

 イアは僕に言った。

「何?」

僕は聞いた。


「お母さんはお父さんに会うために何年も何年も魔力をためていたの。天国から現世に行くために。本当はね。私じゃ無くてお母さんがお父さんに会いに行くつもりだったのに私が行きたそうな顔をしたからお母さんは私を現世に送った」


「ごめんね、お父さん。お父さんもお母さんに会いたかったんでしょ」

 イアは泣いていた。


「僕はイルに会いたかったけど、イアにも会いたかった。僕はイアが僕に会いに来てがっかりなんてしなかったよ。僕は自分が会いたいのに娘に譲る母さんの優しさに胸を揺さぶられたよ。僕は母さんの事がもっと好きになったよ。だからイアは何も気にすること無いんだよ」

 僕がそう言うとイアは涙を沢山流していた。


「ずっと悩んでいたんだな。気づいてやれなくて済まなかった」

「うん」

 僕はイアの頭を撫でて(なだ)めた。


 イアの感情の高ぶりは落ち着いた。


「イア。三途の川に行ったら、母さんにこれを渡してくれ」

 僕はそう言い、イル宛てに書いた手紙とある品を渡した。


「これって…」

「大丈夫だから」

 イアは渡された品を見て戸惑った。皆も少しザワついたが僕の言葉を信じた。


「じゃあ、みんなまたね。天国で会おう」

「「イア、お姉ちゃん!!」」

 イアは皆にそう言い、別れを悲しむ皆を見て少し笑うと天へと消えて行った。



 イアは三途の川を木の舟で渡り、陸に辿り着いた。そこから真っ直ぐ行くと天国だ。イアは三途の川に沿って歩いた。歩いていると他の人が何人かいた。多分、みんな誰かを待っているのだろう。そしてイアは自分の家族を見つけた。


「ただいま」

「お帰りなさい」

「「お帰り」」

 イアは自分の家族にそう言うと皆そう返した。


「母さん、どうだった?お爺ちゃん達との暮らしは」

 イアの息子が聞いてきた。

「うん、楽しかった」

「そっか。良かったね」

 イアの返答に息子も心の底から良かったと思った。


「お母さん。これ、お父さんから」

 イアはイルにお父さんからの手紙を渡した。


「ありがとう。もう一つ、お父さんから私宛てに何か贈り物がなかった?」

 イルは聞いた。


「えっ、無いけど」

 イアは後ろにある品を隠していた。


「イア、あるじゃないか。その手に持ってる…」

「あっ…」

 イアの夫がそう言いい、夫はイアの持っている物をよく見るとお義母さんには絶対見せてはいけない物を持っている事に気がついた。


(馬鹿あああああああ)

 イアは夫の失態を心の中で罵った。


「イア、見せなさい」

「はい」

 イルがそう言うので泣く泣く後ろに隠していた品を見せた。


「………」

 イルはその品を手に取ると涙を流した。その品とは手の掌サイズの透明な六角柱が集まり一つになっている物であった。その透明な物の中には一輪の白い花が入っていた。


「「………」」

 皆、イルに何て言葉を掛ければ良いか分からなかった。イルの夫はイルの妹分の力で作った物をイルに送ったのだ。イルの内心は穏やかでは無かった。


「曾祖母ちゃん。ちょっとそれ見せてくれる?」

 ひ孫にそう言われ、イルは渡した。


「……、これ氷で出来ていないよ」

「「!」」

 イルの曾孫はそう言った。皆、驚いた。


「ちょっと見せて」

「祖母様、これ氷で出来てませんよ。祖母様の力で作られた物ですよ」

 イルの孫はそう言い、手に取り触った。


「………」

 孫はイルにその物を渡した。イルは眺めていた。


「その水晶の中に入っている花はスノウと言う花です。スノウの花言葉は愛。祖父様はスノウを水晶に閉じ込める事で永遠の愛を表したかったんだと思います」

 孫がそう言うとイルは泣き崩れた。皆、イルが泣くので慌てた。



「皆、長い間私のために一緒に居てくれてありがとう。もう私は未練は無いわ。だから天国へ行きましょ」

 イルは立ち上がった。


「お母さん、お父さんから貰った手紙は読まなくて良いの?」

 イアは聞いた。


「また泣いちゃうから天国に行ってから読む」

 イルはそう答えた。


「天国がどういう所か楽しみだね」

「そうだな」


「僕はちょっと怖いけど」

「みんないるから大丈夫だ」

 怖がる息子を父は手を握りしめた。決して離さぬようにと。父も手が震えていた。天国とはどういう場所か分からないので天国に行くのは誰でも怖いものだ。


「大丈夫だよ、父さん」

 息子は父にそう声を掛けた。


 イル達は天国へ続く広い大地に向けて歩き出した。

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