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暗黒大景 / ANKOKU TAIKEI【パイロット版】  作者: 火山 千
第1部

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92話 暗黒竜と氷白竜のお話

 夜の二十三時になった。話の雰囲気を出すためにリビングの明かりを消し、食事をする机の上に蝋燭を何本も並べ火を付けた。


「じゃあ、暗黒竜と氷白竜の話をするね」

 イアは話を始めた。


「むかーしむかし、暗黒の時代と呼ばれた時代に二頭の竜がいました。二頭の竜は暗黒竜、氷白竜と呼ばれ、暗黒竜の名はイル、氷白竜の名をネアといい、互いにそう呼び合い、その二頭の竜は互いに両親を亡くしたので二頭で寄り添って生きてきました」


「魔族が跋扈するこの時代も暗黒五強という存在のお陰で暗黒の時代も終わりに近づきました。そんな中、竜族はこの世を支配しようと戦争を人間に対して仕掛けました。竜族の中に戦争に反対する者もいたがその竜達もこの戦争に巻き込まれる事になりました。人間は竜と見るや否や攻撃してきました。竜達は人間に沢山殺され、暗黒竜と氷白竜は同胞が亡くなった事を悲しみました」


「ある日、氷白竜は食べ物を探しに人間の住む町の近くに来ました。氷白竜は木に実っている実を暗黒竜に食べさせようと持って帰ろうと採取していた時、兵隊達が大勢、氷白竜の前に立ちはだかりました。兵隊達は有無を言わせず氷白竜に矢を放ち、氷白竜は矢を刺されながらも暗黒竜の元へ逃げていきました。暗黒竜のいる巣穴に氷白竜は戻り、暗黒竜に数少ない木の実を上げました。眠っていた暗黒竜は氷白竜を見ると氷白竜の身体は沢山の矢で射貫かれ血が流れていました。暗黒竜は血を流しながら木の実を取って来た氷白竜の優しさに涙し、妹分をこんなにした人間に怒り狂いました。暗黒竜は氷白竜をこんなにした町を滅ぼしました」


「それでも暗黒竜の人間への怒りは収まらず、他の町をどんどん滅ぼしていきました。そして暗黒五強の一人、アルタイルは暗黒竜と対面しました。アルタイルは対話を試みるが暗黒竜の怒りにアルタイルにはどうすることも出来そうにありませんでした。アルタイルは暗黒竜に提案しました、人間の姿になり自分と戦えとそして僕が勝ったら僕の言うことを聞けと」


「暗黒竜は頷くと人間の姿となりアルタイルと戦いました。アルタイルは何故暗黒竜に人間の姿になって戦えと提案したのかと言うと竜が人型となって戦うなんてそうそう無いから暗黒竜が人型になった時点でアルタイルの勝ちは確定したようなものだったのです。アルタイルは暗黒竜のイルに勝ちました。そしてアルタイルは暗黒竜に怒りを静めるようにいい、自分の嫁になれと言いました」


「何でアルタイルはイルに嫁になるように言ったの?」

 僕の娘はイアに聞いた。


「それはイルが可愛かったからだと思うけど。どうなの?お父さん」

 イアは僕に聞いた。


「まあ、イルが僕の好みの顔をしていたからかな。俺の事はいいから、話を続けて」

「分かった」

 イルはそう答え、話を続けた。


「暗黒竜のイルはアルタイルに負けたので素直にアルタイルの言う事を聞きました。アルタイルは先の戦闘で疲れ切っていたイルを抱きかかえ風魔法で氷白竜のネアの元へ飛んで行きました。風魔法でネアの元へ飛んで行く途中、イルは自分の嫁になれと言うアルタイルの言葉の真意を考えたが分かりませんでした。イルはアルタイルにお姫様抱っこされたからか顔がリンゴのように赤くなりました。イルの夢心地な気分もネアの元に辿り着くと消え失せました。ネアの元に辿り着くとネアは今にも死にそうな状態でした。あの時、兵士に矢で射られた傷にバイ菌が入り化膿し熱が出たのです。アルタイルは回復魔法を掛けたり回復薬を飲ませるが一向に治る気配はありませんでした。暗黒竜のイルは後悔し復讐をしている場合ではなかったと泣きました。氷白竜も暗黒竜を見て貰い泣きしました。アルタイルは『大丈夫だよ』と言い、氷白竜の身体に手を当て青い光がアルタイルの周りで光ると青い力で氷白竜の病を治したのです。氷白竜は元気を取り戻しました。暗黒竜と氷白竜は病気が治り、喜びました」


「暗黒竜と氷白竜は今まで住んでいた巣穴を捨てアルタイルと一緒に暮らしました。竜の姿だと一緒に暮らせないため人型となりました。三人は何気ない日常を過ごすがそうはいきませんでした。アルタイルと一緒に暮らす内、氷白竜のネアもアルタイルの事が好きになってしまいました。竜族は一夫一妻制と決まっているのでアルタイルの事が好きなイルとネアは互いに人型で決闘する事で勝った者がアルタイルと結婚すると決めました。イルとネアは互いに殴り合いました。今まで姉妹のように助け合って生きてきたのに何で殴り合わないといけないのか、殴り合う中でイアとネアは自然と涙が溢れました」


「酷い、酷すぎるよ」

 イアの話を聞いて僕の子供達は嗚咽し涙を流した。


「お父さん!!」

 僕の娘のエリカは涙を流しながら僕を呼んだ。


「まあ、僕を責めるなら続きを聞いてからにしてくれ」

 僕がそう言うと、イアは話を続けた。


「アルタイルは自分の所為でイルとネアが傷つけ合っている事に耐えられなく悲しみ、決闘を止めました。アルタイルは異空間から二つの花を出し、イルに太陽の花、ネアに月の花を渡しました。アルタイルはこう言いました。イルは僕をいつも照らしてくれる太陽で僕の心を温めてくれる。ネアは夜に輝く月で僕の心を落ち着かせてくれる。僕にはどちらか欠けても困るんだ、だから戦うのはもう止めてくれ。アルタイルは涙を流し言いました。アルタイルの言葉を聞き、イルとネアは泣き、もう家族で戦うのはやめました。その後、アルタイルはイルとネアの二人と結婚し、子供も出来ました。イルの子供をイア、ネアの子供をネルと名付けました。こうして五人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、終わり」


 イアは話を終えると僕の子供が明かりを付けた。


「めっちゃ、感動した」


「良い話だったね」


「うん、うん」

 みんなイアの話を聞いて感動していた。珍しくルナが涙を流していたので僕は少し驚いた。


「イア、お姉ちゃん。また明日もお話聞かせて」


「僕も聞きたい」


「分かった、分かった」

 子供達が目をキラキラさせながらイアに詰め寄りそう言うのでイアも少しばかり嬉しかった。みんなでこの物語の感想を話した後、みんな解散し寝床に就いた。

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