83話 透き通った水面
数分後、アリスと男の戦いは決着がついた。アリスは男に負け、地べたに這いつくばっていた。
「お前、本当に奴の曾祖母なのか?弱すぎる」
男はアリスにそう言った。
「あーあ、ガッカリだよ。」
男はアリスの惨めな姿を見て溜め息を吐いた。
「お前、今何を考えている?」
「父親が助けに来てくれると思っているのか?」
「それとも自分がこれからする罪を後悔しているのか?」
男はアリスに聞いた。
「………」
「黙ってないで、何か言えよ」
男は黙っているアリスに蹴りを入れた。
「命乞いをしてみろよ」
「………」
男はアリスの髪を掴み、持ち上げ言った。アリサは黙っていた。
「もういい。何も言わないなら死ね」
男はアリスの髪を手から離し、黄金の槍でアリスの背中から心臓を突いた。
そして黄金の槍を抜いた。血が噴き出し、地面に血溜まりが出来た。アリスの目は光を失った。
「ここは…」
アリスは周りを見渡すと辺りは一面が水で空は雲があり透き通った空模様だった。
水が透き通っているから地面の形が見えた。
「私は死んだのか…」
「いや、死んで無いよ」
アリスの言葉を男が答えた。
「貴方は誰?」
アリスは聞いた。
「私の名はラグナロク。お前がクロと呼んで可愛がってくれた、小さな黒い竜だよ」
「でも姿が…」
「ああ、これは君と話しやすいように人間の姿になったんだよ」
男は答えた。
「クロ!!」
アリスはクロの元に走り、クロに抱きついた。
「私、死んじゃった。まだやりたい事、沢山あるのに」
アリスは泣いていた。
「大丈夫だよ、君は死んでいない。僕が君の刺された心臓を治したから」
「本当?私死んでない?」
「ああ、死んでいないよ」
クロはアリスの頭を撫でた。
「アリス、よく聞いて」
「君が意識を取り戻したら君は死んだフリをするんだ。でないとまた殺される」
「僕は君の元から離れ、優一の所へ行きここの場所に連れてくるから君は一人で死んだフリをするんだ」
クロはアリスにそう言った。
「一人…。怖いよ。側にいてよ」
アリスは泣いていた。
「アリス。僕が行かないと君は助からない。大丈夫だから息を殺して待つんだ。分かったね」
「分かった」
「良い子だ」
クロはアリスの頭を撫でた。
アリスの意識は戻った。自分の身体から黒い天使の輪の力が抜けていくのを感じた。
(奴の曾祖母は殺した。これで奴は生まれない)
(後はユウイチがここへ来る前にずらかるか…)
男は少し歩き、アリスから離れた。
「お前、生きてるな!俺の目は誤魔化せないぞ!」
男はそう言った。
「………」
アリスは動じず、静かにしていた。
「本当に死んでいるのか?」
男は感が冴えており、アリスが生きていると思いハッタリを噛ましたがアリスは動かないので死んだか半信半疑だった。
男はアリスの側に近づいた。そしてアリスの足に黄金の槍を刺した。
(うぐっ…)
アリスは必死に耐えた。声は出さなかった。
「これでは分からんな…。もう一回心臓を刺せばいい事だ」
男がアリスの心臓を刺そうとした時、黒い天使の力が防御した。
「お前!、生きているな!!」
男は叫んだ。
「おい、お前。娘を虐めるのはその辺にしとけよ」
「お父さん…」
僕が男に向けてそう言うと、アリスは僕を見てそう口にした。
「死んだふりをしやがって、クソが!」
男はそう叫んだ。
「娘から離れろ!」
僕は左手に持っていた刀を鞘か抜き、男に斬りかかった。
男は僕が振り下ろした刀を避け、後ろに移動し僕から距離を取った。
「来るとは思っていたがこんなすぐに来るとは思ってなかったよ」
男は僕にそう言った。
「ユウイチ、君はここへ来るのに大分力を使ったようだね。息が上がっている」
「はあ…、はあ………」
男は僕にそう言った。
「ユウイチ、君は一族の中で最強と恐れられていたから俺は戦いたく無かったがどうやら大丈夫なようだね」
男は僕を見てそう言った。
「何、安心しているんだよ。俺はお前より格上だぞ」
僕は男にそう言った。
「そうは見えないが」
男は自然に煽った。
「じゃあ、試してみろよ」
僕は男にそう言い、刀の切っ先を相手に向けた。
「古代究極魔法:過冷却斬衝」
僕はそう唱え、僕の刀は冷気を発した。
「死ね」
僕は刀を振り、白い氷の斬撃を三発飛ばした。
「そんな温い攻撃、俺には効かない」
男はこちらの方へ走りながら、黄金の槍で白い氷の斬撃を全て破壊した。
「くっ…」
男は僕に十分近づき槍を突いてきた。僕はそれを避ける。
「ふふふっ」
男の黄金の槍と僕の刀が何度も打つかった。男は不気味な笑いをした。
「バテバテじゃねーか」
男は息が上がっている僕にそう言った。
「仕方ない」
「妖刀:黄泉。能力顕現:黄泉がえ…」
「そうはさせない。武器破壊っ!!」
僕は自分の今、持っている妖刀:黄泉の能力を使おうとした。
だがしかし男は槍を僕に振り下ろし、僕は刀で防いだ。
そして男は僕が唱え終わる前に僕の刀を折り、僕に斬撃を浴びせた。
「があああっ」
僕は肩から縦に切られ、痛みで叫んだ。深くは斬れていないが血が流れた。
僕は後ろに移動し男から距離を取った。
「くそがっ」
僕は流れる血を押さえ、そう吐き捨てた。
「……、役立たず」
僕は自分の折れた刀を見るとそう言い、刀を捨てた。




