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82話 人の皮を被った化け物

 数日後…。アリスは妹と二人と名をクロと名付けた小さな黒い竜一匹を連れ街に買い物に出かけた。


 アリスにあまり外に出るなと僕は言っていたがルイス君と離ればなれの生活に耐えれなくなり、しばしば僕に隠れて兄弟、姉妹と出かけているようだった。僕が注意してもお父さんは大袈裟だなあ、なんて言葉が返ってくるだけであった。


「お姉ちゃん、アイス美味しいね!」


「そうだね」

 僕とアリアの娘のアテナはアリスと一緒に帰り道にアイスを食べながら家に向かっていた。


「今日の昼ご飯、何かなあー?」


「何だろうね」


「カレーかオムライスが良いな」


「じゃあ、昼食はお母さん達に頼んでアテナの好きな物にしよっか」


「本当!?やったあ!」


「アテナは本当に天真爛漫可愛いなあー」

 アリスは口にアイスを咥え、アテナの頭を撫でた。

 アテナは嬉しそうにしていた。


「お姉ちゃん、天真爛漫って何?」


「純粋で明るいっていう意味だよ」


「そうなんだー」

 アテナはアイスを食べながら頷いた。


「!」

 急にアリスとアテナの真下に魔方陣が現れた。


「アテナ!!」

 アリスは咄嗟にアテナを魔方陣の外に押し出した。


「わわわ」

 アテナはアリスに押され、魔方陣から出て転びそうになった。


「お姉ちゃん?」

 魔方陣と共にアリスは消えた。地面には買い物袋とアリスが食べていたアイスが落ちていた。

 アテナは買い物袋をそのままにして家に向かって全力で走った。

 


 数分後…。


「お父さん!」

 アテナは自宅に辿り着き扉を開け、僕を呼んだ。


「どうした、アテナ!父さん!!」

 僕とエリナの子であるカイルはたまたま家のドアの近くにいたので息を切らしたアテナを見て側に駆け寄り僕を呼んだ。


「アテナ!!」

 僕は呼ばれ玄関に来てアテナの徒ならぬ様子に僕は声を上げた。他の皆もここへ集まってきた。


「お姉ちゃんが!お姉ちゃんが!!」

 アテナは僕達に何かを伝えようとしたが息も切れていて気も高ぶってそれどころではなかった。


 僕の子供が機転を利かせコップに水を入れ持って来た。それをアテナに飲ませ、気を落ち着かせた。僕はその後、アテナの口から事の顛末を聞いた。


 僕は支度をし、家を出た。僕は妖刀:黄泉を左手に持ち、氷白顕在で高速特化型の姿となり、風魔法を使い空中を自由自在に飛びアリスを探し回った。


 アリスの魔力を感じ取り、そこに辿り着くが誰も居なかった。


 僕は再び飛び去った。僕は風魔法を使い、アリスを探しながら敵を分析した。


 どうやら敵はアリスを敵が居る場所に空間転移させる時に沢山の別の場所を経由させる事でアリスの魔力の残滓を残すことで時間稼ぎをしようとしているようだ。


 敵の狙いはアリスの命だ。僕の今の姿、氷白顕在は暗黒顕在よりも長時間、高速移動する事に適している。僕は氷白第四顕在までしたがアリスを見つけるには時間が無い。


「氷白最終顕在:デスグラシア・ヴァイスルドラオーバー」

 高速移動中の僕の身体は白い竜の姿から白色と氷の色の混じった姿になった。白色と氷色の混じった今の姿は前の姿よりも格段にスピードが速くなる。これが今出せる最高の速さだった。


「アリス、待ってろ。今、行くぞ!!」

 僕はそう叫び、何とかアリスが殺される前に辿り着こうとしていた。



 その頃、アリスは色々な所に空間移動を一気にさせられ酔い地面に両膝と両手を突いた。


「貴様、私に何の用だ?」

 アリスは重い身体を上げ、立ち自分をここに飛ばした男に聞いた。


「用?僕は君を殺したい。その為に遙か遠くから来た」

 男は言った。


「そうか…。」


(私は今まで正義を振りかざし敵となりそうな奴を殺してきた。どうやらその付けが回ってきたようだな…)

 アリスはそう思った。


「何で僕が君を殺そうとするのか聞かないのかい?」

 男は聞いてきた。


「私を殺す理由を聞いても無意味じゃない?だって私、物覚え悪いから聞いてもすぐ忘れちゃうし、貴方は大層な理由で私を殺しに来てると思うけど私は貴方を殺しても何も感じない。私を殺す理由を聞いたところで無意味だと思うけど」

 アリスはそう男に言った。


「君が地べたに付いたのを見た時は人違いをしているのかと思ったけど、今の発言を聞いて安心したよ、罪悪感なく君を殺せる。流石、奴の曾祖母だけの事はある」

 男はそう言った。


「君は僕が君を殺す理由を聞くのは無駄だと言う、だがな、お前にはその理由を聞く義務があるんだよ!」

「………」

 男の言葉にアリスは黙った。


「俺は遙か先の未来から来た、タイムトラベルしてな。何故、この俺がお前を殺そうとする理由はお前の一族に俺の家族を全員殺されたからだ。お前等、一族は俺の家族が遠く無い未来、邪魔な存在となるからと言って普通に暮らしていた僕達、家族を殺した」


「父親や母親、親戚を殺したのは理解したくは無いがまだ分かる。お前等一族はまだ幼い、八歳の弟と四歳の妹を無残な殺し方をした」


「お前等一族は鬼だよ。何を考えたらあんな酷い事が出来る?」


「俺は家族を殺された日に誓い復讐しようとした。でもあんたら一族には俺では敵わなかった。だから俺はタイムトラベルして元凶であり、一族で最弱であるアンタを殺しに来た」


「アンタの父親と母親を見たがあれは誰がどう見ても善人だったよ。善人の子供は善人かと思いきやお前と話して分かった。お前、異常だよ。人の皮を被った化け物だよ」


「違う…」

 アリスは否定した。


「この人殺し」

 男はアリスにそう言った。


「違う…」

 アリスは信じたくなかった。自分が人殺しの元凶だという事に…。


「お前はただの人殺しなんだよ!!」

 男は涙を流しながら叫んだ。


「お前が死ねば悲劇は起きなくなる。だから死んでくれ」


「習合第一顕在:ラー・アトゥム」

 男は唱えると装いが変わり、黄金の装飾品を身に纏った。


「我が最強の武器、顕現せよ。黄金の槍」

 男の手に黄金の槍が現れた。


「魔力固定」

 アリスは右手を横に向けた。右手の全指先から黒い魔力が黒い炎のように燃え、浸食するように手を覆った。


 右手に黒い大剣を出現させ黒い大剣を握った。空気中に漂う魔力を集め、自分の魔力を混ぜ合わせることで大剣を作った。


「………」

 ここら一帯の地から黒い魔力が吹き出した。この世界の空気中、地中にある無数の膨大な魔力がアリスを中心に集まる。アリスの身体は少し浮かび、黒い魔力はアリスに向かって流れ込み、黒い球体となりアリスを包み込んだ。


 細くて小さな一匹の黒い龍が飛んで黒い球体を一周した。黒い球体の周りに黒い閃光が光った。


「暗黒第四解放:死と滅亡の運命(ラグナロク)・オーバー」

 アリスは唱えた。そして黒い球体は割れた。アリスの頭の上に黒い天使の輪が現れ、アリスの宙に浮いていた足は地面に着いた。


「じゃあ、始めようか」

 男は不気味な笑みでそう言った。

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