79話 レイジの涙
「はあ、はあ…」
ライカは自分に紫のバリアを張り、青い斬撃を防いだ。
「………」
レイジは全ての力を使い果たし、ただ呆然とそこに立ち尽くした。レイジの眼の角膜は普段の眼とは違い、金色だった。
「魔眼か…」
先の青い斬撃の威力が途中で増したのは魔眼のお陰だった事にライカは気づいた。
「………」
レイジはその場に仰向けに倒れた。ライカはレイジの傍に来た。
「お兄ちゃんの力、貰うね」
ライカはそう言い、レイジの頭に触った。青い力はライカの物となった。
「………」
レイジは泣いていた。
「力を奪われたから泣いているの?」
ライカは聞いた。
「違う…。お前を守れなかったから泣いているんだ」
レイジは答えた。
「お兄ちゃん、先の斬撃の威力が途中で上がったのはその魔眼の所為なの?」
「いいや。魔眼の所為では無いよ、ライカ」
「お父さん」
僕はこの場所でライカとレイジが戦っている事に気づきこの場に来た。
「レイジのその眼は真眼と呼ばれている物だ」
「真眼を使用しながら技を使うと技の威力が倍以上になる最強の眼だ」
僕はそう言った。
「お兄ちゃんの眼の力も私に頂戴」
ライカはそう言い、レイジの眼の力も奪おうとした。
「誰かを守りたい、そう強く願うと稀に現れる眼だから例え、眼の力を奪ってもお前は使えないよ」
「ちぇっ」
僕の言葉を聞き、ライカはガッカリした。
「レイジ、大丈夫か?これを飲め」
僕は空間魔法で回復薬を出し、レイジに飲ませた。
「立てるか?」
僕はそう言い、レイジを立たせた。
「後は俺に任せろ。お前はゲートで家に帰りなさい」
僕がそう言うとレイジは頷き、ゲートを開いて自分の家に戻った。
「ライカ、お前はやり過ぎだ」
僕はレイジをここまで追い詰めたライカに怒りが増した。
「力を奪うなら僕から力ずくで奪え」
僕はライカにそう言った。
「そうする」
ライカは少し笑いが混じったような声で言った。
「魔力固定」
僕は右手を横に向けた。右手の全指先から黒い魔力が黒い炎のように燃え、浸食するように手を覆った。
右手に黒い大剣を出現させ黒い大剣を握った。空気中に漂う魔力を集め、自分の魔力を混ぜ合わせることで大剣を作った。
「お父さん、全力で来て。私も全力で行くから」
「ああ、そうする」
僕はそう言った。
ここら一帯の地から黒い魔力が吹き出した。そして魔力の色は青く変わった。
この世界の空気中、地中にある無数の膨大な魔力が僕を中心に集まる。
僕の身体は少し浮かび、青い魔力は僕に向かって流れ込み、包み込み青い球体となった。
青い球体は中が透けていて僕の姿が見えた。二匹の大きな黒い鮫が青い球体の周りを泳いだ。
僕の頭の上に青い天使の輪が現れ、青の球体の周りに黒い閃光が光った。
「暗黒第四解放:死と滅亡の運命・死を操る」
僕は唱えた。そして青い球体は割れた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。
今まで見た力とは別格の力となっているのは誰が見ても言える位、異質な力であった。
「最高だよ。お父さん」
ここら一帯の地から黒い魔力が吹き出した。そして魔力の色は緑に変わった。
この世界の空気中、地中にある無数の膨大な魔力がライカを中心に集まる。
ライカの身体は少し浮かび、緑の魔力はライカに向かって流れ込み、緑の球体となりライカを包み込んだ。
緑の球体は中が透けていてライカの姿が見えた。緑の球体を無数の百足が緑の球体の上を這った。
ライカの頭の上に緑の天使の輪が現れ、緑の球体の周りに黒い閃光が光った。
「暗黒第四解放:死と滅亡の運命・アナザーオーバー」
ライカは唱えた。そして緑の球体は割れた。ライカの宙に浮いていた足は地面に着いた。
「失われし古代究極魔法:世界を焼き尽くす炎」
僕は黒く燃える黒い大剣を振った。そうすると黒い炎の斬撃がライカに目掛けて飛んできた。
「はは」
ライカは父さんと戦える喜びを噛み締めた。
ライカは黒い大剣に有りっ丈の力を込めた。ライカの周りに緑の稲妻が走った。ライカの剣の持ち手から刀身にかけて緑の閃光が走る。ライカの黒い大剣は緑のオーラが渦みたいに流れた。
「究極魔法:イル・ネア・ブラスト・アナザーオーバー」
ライカが剣を振り下ろすと緑の斬撃を放った。
黒い炎の斬撃と緑の斬撃が打つかり合った。そして地面は削り取られた。
「!」
無数の緑の斬撃が僕に向かって飛んできた。
「まだ、まだあ!!」
ライカはこちらに最高出力の斬撃を僕に向けて放った。僕もそれに合わせて黒い炎を出した。
黒い斬撃と緑の斬撃が打つかり合う。この場に人が居たら一溜まりもないだろう。
「お父さん!!」
ライカは僕の方に飛び込んで来た。
ギギギギギ。
僕とライカの剣が打つかり合い、火花を散らした。
「!」
僕は黒い大剣から黒い炎を出し、ライカに打つけた。ライカは黒い炎の攻撃を少し受け、僕から距離を取った。
「大丈夫か?ライカ」
僕は聞いた。
「お父さんって意外と容赦無いよね」
ライカは呟いた。
「手加減した方がいいか?」
「いや、いいよ。お父さん」
ライカはそう答えた。
「!」
僕は黒い百足に身体を巻き付けられ動けなくなっていた。
「今だ!!」
ライカは僕に向けて緑の斬撃を飛ばし打つけようとした。
「アブソリュートバリア」
僕は青いバリアを張り、黒い百足をバラバラにした。そして緑の斬撃を防いだ。
「お父さん、そのバリアは狡い。ずっとそれを出されたら勝負にならないよ」
ライカは僕にそう言った。
「悪い、悪い」
僕は謝った。
「そういえば特性変質をまだ教えてはいなかったね」
僕はそう言った。特性変質とはその名の通り、攻撃技の特性を変質させる事でバリアを容易に貫通する事が出来る技術だ。
「お父さんはバリアと特性変質を使った技を使うのは無しね!」
「分かったよ」
僕は頷いた。
「じゃあ、これを使うかな」
「究極魔法:森羅万象」
僕は手をライカに向けた。そうすると地面から樹木が現れた。そして樹木で作られた無数の木の龍がライカの方に飛翔した。
「ぐっ…」
ライカは黒い大剣で木の龍を防いだが、木龍の威力により遠くの方へ飛ばされた。
「ライカ、お前はバリアを使って良いんだぞ」
「私もバリアを使わない」
「そうか」
僕はそう言った。
「暴れろ」
地面から樹木が出て樹木で無数の木の龍は作られ、無数の木の龍は地面を削り取りながらライカの方に飛翔した。
「おらあっ!」
ライカは常に黒い大剣から最大出力の緑のオーラを出し、ライカに向けて放った木の龍を斬り、こちらへ向かって来た。
「!」
僕はもう木の龍を出すのを止めた。ライカもそれに気づき立ち止まった。
「お父さん、どうしたの?」
ライカは僕が突然攻撃を止めたので聞いてきた。
「ライカ、お前は本当に強くなったな。俺は自分の子供に優劣をつけるつもりは無いがライカ、お前には戦いの才能がある。流石、俺の子だ」
「お父さん…」
ライカは父さんに認められ、嬉しかった。




