76話 暗黒竜眼
「そんな馬鹿な…」
姉妹の女神の姉の方が僕の姿を見て驚いた。
「まさか古代の青い力をお前達に見せる事になるとはな…」
僕は淡々と言った。
「こっちには人質がいる!武器を捨てろ、アルタイル!!」
タナトスは僕を脅した。
「人質?笑えるな」
僕はタナトスの方へ手を向けた。
「何っ!」
タナトスは驚いた。タナトスの身体は樹木で斧を振り下ろさないよう拘束された。
「ぐっ!」
タナトスは力を入れるが樹木の拘束は解けなかった。
「お前等、俺の嫁と息子を解放しろ。そうしないとタナトスを殺す」
「ぐっ…があっ」
僕はそう言いタナトスを縛った樹木に力をキツく入れた。タナトスは樹木の縛る力によって苦しんだ。
神々の従者達は僕の言う事を聞き、嫁と息子を解放した。
「そう、それでいい」
息子は嫁の方へ行き、嫁は息子を抱きしめた。
「!」
僕は黒い大剣の柄を逆手に持ち、自分の後ろに勢いよく突き出した。
「ぐっ…、何で…」
僕の後ろには姿を透明にし、僕の首を取ろうと忍び寄ってきた者がいた。その者の身体に僕は黒い大剣を突き刺した。
「何で予測出来たかっていう顔をしているな。教えてやろう。私の眼は未来を予知する能力を持っているんだ。だからお前が僕に攻撃をしようとしたのは容易に予測出来た」
僕はそう言うと男に突き刺していた剣を抜いた。
「魔眼を持っていたのか…」
まだ息のある男はそう言った。
「いいや、私は魔眼をもう持ってはいないよ」
僕は否定した。
「じゃあ、何なんだ」
男は僕に聞いた。
「僕が今、使っているのは竜眼だよ」
僕の眼の瞳孔は黒く尖り、角膜は深い赤色をしていた。
「冗談はよせ。竜眼を使える者なんて御伽噺に出てくる人物が使っている位だ。現実の世界で人間が竜眼を使っている奴なんて存在しない」
僕がそう言うと男は竜眼を使う者なんて存在しないと笑った。
「だがお前の目の前にいるこの俺は竜眼を持っている」
「そんな、馬鹿な…」
僕がそう言うと男は信じられないようだった。
「俺様はお前達の創造主だぞ。この俺に不可能は無い」
僕はそう言った。
「時間はたっぷりある。僕が竜眼を手に入れた経緯でも話そうか」
僕は話を始めた。
「暗黒の時代。魔族が支配するこの時代も我ら暗黒五強が現れ世界を統治した事で終わりに近づいて来た」
「そんな時、新たな勢力が現れた、竜族だ。我々が魔族を蹂躙したことで息を潜めていた竜族がこの世界を支配しようと、戦争を仕掛けてきた」
「我々は魔族を蹂躙した身、竜族なんてものは取るに足らない存在であった。竜族達も疲弊し、降参しようとした時、奴は現れた。暗黒竜だ。その竜は暗黒の時代に突然現れ、世界を破壊し人々を混乱に陥れた。これには神々も恐れた」
「我ら暗黒五強は暗黒竜と戦うが苦戦を強いられた。そこで私は暗黒竜に停戦協定を提案した。暗黒竜も戦いに疲れたのか停戦協定を承諾した。その後、僕等は暗黒竜に手厚い歓迎をした。暗黒竜は人の姿を象り、僕と一緒に暮らした」
「暗黒竜の性別は女性であった。僕は暗黒竜に名を名付け、自分の嫁にした。その後、僕は暗黒竜と契約する事で全てを超越した眼を手に入れた。その眼を僕は暗黒竜眼と名付けた」
「暗黒竜眼は自分の持っている全ての魔眼の特性を持つ。魔眼を使い分ける時のようなタイムラグは生じないため、最強の眼と呼ばれた。そして暗黒竜眼は暗黒竜の技を全て自由に使う事が出来た。以上が私が竜眼を手に入れた経緯だ」
僕は話を終えた。
「さて、僕の家族を傷つけたお前達の処遇はどうするかな」
僕がそう言い、嫁と息子の傍へ行くと従者は僕が恐ろしいのか僕から逃げるように離れた。
「アルテミス、アルド。暫くここに居てくれ。バリアを張る」
僕はそう言い、青いバリアをアルテミスとアルドを中心に張った。
「早くこれを外せ!!」
タナトスは従者にそう言うが、樹木で縛られた身体は容易に外す事は出来なかった。」
「タナトス様、落ち着いて下さい。今、外しますから」
下位の神の一人が炎で樹木の拘束を焼き、拘束を解いた。
「遅いんだよ!お前!!」
タナトスは下位の神の頭をど突いた。
「タナトス、同じ神なのにど突くなんて酷いじゃないか」
僕はタナトスの行動を見てそう言った。」
「黙れ!!お前等、早くその男を殺せ!!」
タナトスは叫ぶが従者達は迷い、動けなかった。
「何をやっている!!お前等その男を殺せなければ全員、死罪だ!!」
タナトスは叫んだ。従者達は僕に向かって来た。




