75話 道連れ
「魔力固定」
僕は右手を横に向けた。右手の全指先から黒い魔力が黒い炎のように燃え、浸食するように手を覆った。
右手に黒い大剣を出現させ黒い大剣を握った。空気中に漂う魔力を集め、自分の魔力を混ぜ合わせることで大剣を作った。
「暗黒解放:死と滅亡の運命・ゴースト」
僕は剣を持った右腕を横に伸ばし、剣を斜め下に向けた。
そして唱え、僕の頭の上に青い天使の輪が現れた。剣から青い魔力が漏れ、体の周りからは青い閃光が光り、そして消えた。
「拘束しろ」
タナトスがそう言うと十人の従者が僕を力で地に伏せさせた。
「では、処刑を始めましょう」
タナトスは再び斧を振り上げた。
「やめろ、やめさせろ」
「誰も惨めな姿の貴方の言う事は聞きませんよ」
僕の言葉にタナトスは嘲笑った。
「お前らは黙って俺の言う事を聞け!お前らを作ったのはこの私なんだぞ」
僕は地に伏せながら叫んだ。
「貴方は私たちの創造主だと言い、今まで驕った態度でいた。ここまで来ると本当に貴方は惨めですね」
タナトスがそう言った後、空の色が変わった。また誰かが来たようだ。
「てんどおおおおおおお」
雲に乗った小さな女の子が僕に気がつき手を振った。従者と共に雲に乗っていたがここへ降り立った。
「アマテラスか?」
「うん、そうだよ。天道、久しぶり」
小さな女の子は高天原を統べる神、天照大神であった。天道と言うのは僕が昔、受肉した時に使っていた名だ。
「天道どうしたの?もしかして困ってる?」
アマテラスは僕に聞いてきた。
「ああ、困っているんだ。こいつらが俺の息子を処刑しようとしているんだ。アマテラス、皆を説得してくれ」
僕は藁にも縋る思いでそう言った。
「嫌じゃ」
「えっ…」
アマテラスは僕の頼みを断った。
「鬼神と呼ばれ恐れられていた奴がここまで落ちぶれるとはな、本当にガッカリじゃ」
「アマテラス…」
僕は絶望した。
「弱者が気安く、我の名を呼ぶでない。さっさとそいつを殺してしまえ」
アマテラスはそう言い、僕の息子の処刑を見物しようと待っていた。
「ハハハハハハハハハ」
僕は笑った。
「遂に頭がおかしくなったか」
創造主がここまで追い詰められておかしくなったんだとタナトスは思った。
「ハハハハハハ、今からお前ら全員ここで死ぬんだよ!!」
「戯れ言を」
僕が息子を殺されるストレスでおかしくなったのかと皆思った。
「ばーか、ばーか。お前ら全員死んじゃええええええええ」
僕の言葉に神々は気味悪がった。
「究極魔法:暗黒彗星!!」
僕が唱えると空から暗黒の彗星が沢山、落ちて来ようとした。みんなそれに気づき神々は逃げ惑った。
「お前ら全員、道連れだあああああああああ。アハハハハハハハハハハ」
僕は叫んだ。
「!」
沢山の暗黒の彗星は空中でピタリと止まった。
そして空間魔法が複数展開され、沢山の暗黒の彗星は引きずり込まれ消えた。
「ディオーネ、ありがとう。助かった」
タナトスは天空の女神であるディオーネに感謝した。
「クソガアアアアアアアアアアアア」
僕は攻撃を無効かされ、叫んだ。
「まさか破壊魔法を使うとは思っていなかったよ。流石、創造主様。いや、暗黒五強の一人アルタイルと呼んだ方がいいか?」
「………」
僕は黙った。
「創造主様ってあの暗黒五強の一人だったんですか?姉さん」
神々の中にいる姉妹の妹が姉に聞いた。
「ええ。そうよ」
姉は答えた。
魔族が世界を支配し、神々も魔族に恐れた時代があった。それえを暗黒の時代と言った。その暗黒の中でも光り輝く最強の強さを持つ者が五人現れた。その五人を暗黒五強と呼んだ。
「アルタイル、貴方は危険な存在だ。嫁と息子共々、あの世に送ってやる」
タナトスはそう言った。
「話が違うぞ!!」
僕は叫んだ。
「全て貴方が悪いんですよ」
タナトスはそう僕に言った。
(僕の今持ってる青い力の第四解放をしても嫁と息子を守りながら此奴等を蹴散らす事は難しい。俺には力が足りない。だから俺は圧倒的な力が欲しい)
僕は口の中をモゴモゴし、噛んだ。そして舌を出した。
「!」
僕の出した舌の上には黒い球が割れた破片があった。そしてこの黒い球に入っていた力が発現した。
黒い怨霊みたいな物が僕の周りに漂った。僕を力ずくで伏せさせた従者達は避け、僕から離れた。
「くっくっくっくっ、全て思い出した」
黒い球には僕の古代の力と記憶が入っていた。僕は思い出した。僕が古代の遺跡にいつか来る身の危機のために自分の力と記憶を封印した事を…。
「もうお前達は終わりだ」
ここら一帯の地から黒い魔力が吹き出した。そして魔力の色は青く変わった。この世界の空気中、地中にある無数の膨大な魔力が優一を中心に集まる。
優一の身体は少し浮かび、青い魔力は優一に向かって流れ込み、青い球体となり優一を包み込んだ。
青い球体は中が透けていて優一の姿が見えた。二匹の大きな黒い鮫が青い球体の周りを泳いだ。
「暗黒第四解放:死と滅亡の運命・死を操る」
僕は唱えた。そして黒い球体は割れた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。
今までの力とは別の次元の力となっているのは誰が見ても言える位、異質な力であった。




