72話 紅葉狩り
「遠山先生!!」
僕は信じられなかった。黒十字騎士のメンバーに呪いを掛け、イザベラを殺そうとし、僕の娘を殺そうとした奴が遠山先生だった事に…。確かに時間を司る魔法は古代魔法と呼ばれてて、おいそれと使える物では無い。だから時間魔法を使った時、気づくべきだった。僕は遠山先生がオレガノの正体だという事は有り得ないと勝手に決めつけていた。
「何で貴方が…」
「………」
遠山先生は黙ったままであった。僕が遠山先生の顔を見ると遠山先生の髪は白髪で顔は老けていた。
「答えて下さい!!」
僕は叫んだ。
「君にまだその答えを言う訳にはいけない。私を倒したら教えよう」
遠山先生はそう僕に言った。
「冗談なんですよね。僕を驚かせるためのサプライズなんですよね」
僕は現実を信じられなかった。
「残念ながらサプライズでは無いよ」
遠山先生は答えた。
「先生、あんたは僕の恩人だ。だから僕はもう先生とは戦えない」
僕は涙を流した。
「甘えるな!!」
遠山先生はそんな僕に怒鳴った。
「私を殺さないとお前の家族全員死ぬぞ!!」
遠山先生の鬼気迫る気迫に僕は押された。
「分かりました。僕は次の一撃で貴方を殺します」
「そうだ。それでいい」
遠山先生は落ち着いた声でそう言った。
「狂気に満ち、揺らめく黒き業火に全てを喰らい尽くす災いを齎す破滅の力。大禍津日神と化す、我が力よ。我が呼び声に応え給え」
僕は唱え始めた。
「運命に呪われし我が力。全てを破壊し尽くし新たなる世界を創り変え給え。攻撃不可避の呪術をこの大技に付与する」
そして遠山先生も唱え始めた。そして両者とも最後まで唱え終えた。
「どんな理由があろうと俺は貴方を許せない。だからこの最強の一撃を貴方に打つける」
僕はもう迷わない。俺の家族を守るために遠山先生を殺す。僕の黒い大剣に黒い炎が纏った。
「そうか。私もこの最強の一撃で迎え撃とう」
遠山先生は黒い大剣に有りっ丈の力を込めた。遠山先生の周りに青いオーラの色の稲妻が走った。剣の持ち手から刀身にかけて青い閃光が走る。遠山先生の黒い大剣は青いオーラが渦みたいに流れた。
「失われし究極魔法:世界を焼き尽くす炎!!」
「古代究極魔法:イル・ネア・ブラスト!!」
黒い炎と青い斬撃が打つかり合い、地を削り取った。
「オレガノォォォォォォォォ」
「優一ィィィィィィィィィィ」
僕らは叫んだ。そして辺り一帯を破壊し尽くした。
オレガノとの戦いは終わった。
「先生…」
僕は地面に倒れている遠山先生の傍に駆け寄り、片膝を突いた。
「優一くん、君の力は最高だった。これで最悪は回避できる」
遠山先生は掠れた声でそう言った。
「先生、何で貴方はこんな事をしたんだ?」
僕の率直な疑問だったので聞いた。
「君には全てを話そう」
遠山先生は話し始めた。
「私は遙か先の未来から来た。未来ではある男が世界を破壊し尽くし、世界の滅亡の危機が訪れていた。優一くんの家族、私の息子達も戦うが敗れ殺された。私は過去へ何度もタイムトラベルし、未来を変えようとしたが上手くいかなかった」
遠山先生はそう言った。
「僕は奴と戦って死んだのか?」
僕は聞いた。
「いや、死んでいないよ。ただ、君は自分の力を大半、自分の子供に上げたから君は奴には勝てなかった」
遠山先生は答えた。
「優一くん、君の家族や友人を狙った理由を言ってなかったね。未来では奴は君の大切な人を狙い君を追い詰めた。君は大切な人を失い、戦意喪失して奴と戦うことを止めた。だから私は過去に戻り、君の心を強靱な物とするために君の大切な人を狙った」
遠山先生は僕が知りたかったことを全て答えた。
「君にこれを渡す」
遠山先生は僕に黒い球を渡した。
「これは?」
「これは古代の力を封印した物だ。この球を割れば君が封印した古代の力と記憶が元に戻る」
遠山先生は答えた。
「遠山先生、貴方は古代の力を手に入れて奴と戦ってどうだったんです?」
僕は聞いた。
「残念ながら奴には全く歯が立たなかったよ。私は古代の力を手に入れたけど適合はしなかったからね」
「僕が古代の力を手に入れても奴には勝てないんじゃないですか」
「いや、勝てるさ。私は勘違いをしていた。君が家族を持った所為で弱くなったと思った。けれど違う、君が家族を大切な人を守ろうとするその強い思いがあれば、誰にも負けない力になるんだ」
遠山先生はそう僕に言った。
「時間のようだね。僕の意識はもう直ぐ無くなり、死ぬ」
「いいんだ。もう私は疲れた」
僕が遠山先生の傷を治そうとしたが止められた。
「優一くん…」
「何です?」
僕は遠山先生の手を握り聞いた。
「君の大切な人を狙ってすまなかった。それから勝手な事を言うが聞いてくれ」
「私は…、もう、私の息子が死ぬところなんて見たくない。だから…、未来を変えてくれ」
「分かりました。必ずみんなが笑って暮らせる未来にします」
「ありがとう、優一くん…」
僕はそう言うと遠山先生は安心したのか眠りについた。そしてもう二度と目は覚まさなかった。
僕はその後、遠山先生に全てを話した。そして遠山先生の指示で未来から来た遠山先生の遺体を木々が生い茂る墓地に埋めた。遠山先生と話し合い、オレガノの正体が未来から来た遠山先生だと皆には言わない事にした。それから眠らせる呪いに掛かっていた黒十字騎士と王は目を覚ました。そしてこの戦いは終わった。
十一月の下旬になり、段々と寒くなっていく頃だが今日は暖かいのでみんなを集めて紅葉狩りをすることになった。紅葉の木に囲まれた場所に辿り着き、僕たちは紅葉の葉っぱの絨毯の上にレジャーシートを敷いて食事と飲み物を出した。みんな座り、自分の飲み物を注いだ。
「今日はみんな集まってくれてありがとう」
僕は始めにそうみんなに言った。
「円卓の騎士やオレガノと戦ったがみんな怪我無く無事で良かった」
「今日は無礼講だ。いっぱい食べて沢山飲んでくれ。みんな乾杯の準備は出来たかな?」
僕はみんなの顔を見た。みんな準備は出来たようだ。
「みんなのこれからの輝かしい未来に乾杯!」
「「乾杯!!」」
僕がそう言うとみんなで乾杯した。
みんな食事を食べ始めた。
僕が飲み物を飲んでいる時、ルナを見るとルナはいつもより元気が無いように見えた。
「ルナ、どうしたんだ?調子が悪いのか?」
僕はルナに聞いた。
「調子は悪くない。いつかまた敵が現れて子供達が傷を負うかもと思うと気が気じゃなくて…」
ルナはそう言った。
「ルナ、心配するな。次に敵が現れても俺がみんなを守るから大丈夫だ。俺が一人で戦う」
「何言っているんだよ、父さん。僕たちもいるよ」
僕がそう言うとテオはそう言った。
「いや、決めたんだ。僕はもっと強くなって自分の子供の手を借りずとも戦うって」
「父さんは間違っている。何で俺らを頼らないんだよ。俺たちは家族じゃないのかよ。助け合うのが家族だって教えたのは父さんだろ。父さん一人で抱え込むなよ!!」
「ロキ…」
僕はそんな事を息子に言われるとは思っていなかった。
「………」
僕は息子の言葉に涙が自然と流れた。
「ロキの言う通りだよ。父さん一人じゃない、僕たちもいるんだ」
ルークはそう言った。
「そうだよ、父さん」
クロスはそう僕に言った。
「ありがとう、みんな。まさか自分の子供に泣かされる時が来るとはな、ははは…」
僕は流れてくる涙を服で拭った。
(俺は本当にいい子供に恵まれたな。俺一人じゃないか。確かにそうだな。でもな俺は本当は子供に戦わせたくないんだ。自分の子が傷つくと胸が締め付けられるんだ。そんな思いはもう御免だ。だから俺はもっと強くならないといけないんだ。例え、子供達の思いを無下にしたとしても…)
僕は誓った。
僕はふと上を見上げ赤く染まった紅葉を見た。風が吹き、赤い紅葉の葉がひらひらと落ちてきた。
「紅葉は美しいな」
赤々と彩られた美しい紅葉を見て季節の美しさを感じた。
ここまで読んで下さりありがとうございます。「面白い」「続きが気になる」と思ったら、感想やブックマーク、広告の下にある☆☆☆☆☆を押して応援していただけると嬉しいです!読者様の声が聞きたいので感想を沢山書いてくれるととても嬉しいです。全ての感想に必ず返信いたします。皆様の評価が励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします<(_ _)>




