62話 もう一つの人格
レイジとランスロット卿の戦いは白熱していた。その戦いを近くでエリナは見ていた。
「削れ」
ルークは赤い雷を纏った黒い大剣を振り回すと、纏っていた赤い雷が地面を削り取り、ランスロットに目掛けて赤い雷が来た。
「くっ……」
ランスロットは赤い雷を剣で防いだ。
「あと何回、赤い雷を使えるかな。使えなくなった時がお前の死だ」
ランスロットはそう言った。
確かに今、円卓の騎士の中で最強のこの男に互角で戦えるのはこの赤い雷のお陰であった。
(このままだとルークがやられちゃう。誰かルークを助けて)
エリナは藁にも縋る思いで祈った。
「削れ!!」
ルークは赤い雷を纏った黒い大剣を振り回すと、纏っていた赤い雷が地面を削り取った。
しかし、途中で赤い雷は無くなり無防備になった。
「終わりだ」
ルークは黒い大剣をランスロットに弾き飛ばされた。
(だめ…、だめ。助けて、ユウイチ)
ルークはランスロットに近寄られて、死の恐怖で尻餅ついた。
エリナは自分の子供の命が取られる瞬間を今にも見ることになりそうであった。
ルークは母の存在に気づきエリナを見た。
「母さん…」
ルークは呟いた。ランスロットは剣をルークに振り下ろそうとした。その瞬間、今、見ている景色が灰色になり時間が止まった。
「どうなってるの?」
エリナは思った。
「今、貴方が見ているのは時間が停止した世界だよ。古代魔法で私が時間を止めた」
エリナに似た女性は言った。
「貴方は誰?」
エリナは聞いた。
「私は貴方のもう一つの人格だよ。私の名前はイシス、よろしくね」
イシスはそう言った。
「貴方が私のもう一つの人格?」
「うん、そうだよ」
「私は転生魔術で転生したけど何かしらの理由で魂が分裂しちゃって転生前の記憶がない魂、貴方が生まれたんだ」
「そして私は主人格では無く、貴方の心の中でもう一つの人格として貴方の送る人生を見ていた」
「そうなんだ…。いや、貴方と話している場合じゃなかった。ルークを助けないと」
エリナは焦っていた。
「イシス。貴方、ユウイチをここへ呼ぶ事は出来る?」
「悪いけどそれは出来ないよ」
「そっか」
エリナの唯一の希望は絶たれた。
「イシス、私はどうすればいい?」
エリナは聞いた。
「エリナが私に人格の主導権を譲れば、私があの男と戦い、倒す事が出来るよ」
「どうする?私に主導権を譲ってルークを生かすか、それとも見殺しにするか」
イシスは聞いた。
「貴方に主導権を譲るわ」
エリナは即答した。
「ふーん、根性あるじゃん。流石、もう一人の私」
「これではフェアにならないな」
「一時的に貴方の身体を借りて戦うから、終わってユウイチが来たらどっちがこの身体の主導権を得るかユウイチに決めて貰いましょ」
イシスは言った。
「それで良いわ。早くルークを助けて」
「うん、分かった。ルークを助けるよ」
ここでエリナの意識は深い所に沈んだ。




