58話 震え
レオとロキの前にガヴェインが立ち塞がった。
「暗黒解放:死と滅亡の運命」
ロキは剣を持った右腕を横に伸ばし、剣を斜め下に向けた。そして唱え、ロキの頭の上に黒い天使の輪が現れ、黒い大剣から黒い魔力が漏れ、体の周りからは黒い閃光が光り、そして消えた。
「暗黒解放:死と滅亡の運命・凍りつく世界」
レオは剣を持った右腕を横に伸ばし、剣を斜め下に向けた。そして唱え、レオの頭の上に氷の天使の輪が現れ、黒い大剣から氷色の魔力が漏れ、体の周りからは氷色の閃光が光り、そして消えた。
「世界の終わり」
ガヴェインは唱え、頭の上に黒い王冠が現れた。ガヴェインの周りに黒いオーラが漂った。
「くく、知ってるぜ、その力。昔、父さんが言っていたよ」
ロキはそう言った。
「何を言ったんだ?」
ガヴェインは聞いた。
「父さんはお前のその力が弱すぎるから捨てたってな」
ロキは相手を嘲笑うようにそう言った。
「クソガキがあっ、この私を舐めやがって!ぶっ殺してやる!!」
ガヴェインはロキとレオに向かって走り出した。
「氷操」
レオは手を前に出し、氷を作りだし、操った。作り出した、氷はガヴェインに向かって言った。
「避けやがった」
ガヴェインは氷を避けたので少しレオは焦った。ガヴェインはロキに向かって来た。
「死ねえええええええええ」
ガヴェインは剣を振りかざしていた。
「くっ……」
ロキは黒い大剣でガヴェインの剣を受けた。
「ちっ…」
レオはガヴェインに黒い大剣を振り下ろした。ガヴェインはそれを避けた。
「ぐっ……」
今度はレオに剣を振り下ろした。それをレオは受け止める。ロキは剣をガヴェインに向けて振った。
「くくっ…」
ガヴェインは後ろに下がり距離を取った。
「ロキ、こっちは二人だ。父さんが来るまで時間稼ぎをしよう」
「ああ」
レオがそう言い、ロキは頷いた。
「おい、お前何ぬるい事言ってんだよ」
「もしかしてお前達、敵と戦ったことあまり無いんだろ」
「「………」」
レオとロキは何も言わなかった。
「手が震えてるけど、どうした?生きるか死ぬかの戦いで今にも家に帰りたくなったのか?」
「「………」」
「確かに私はお前達のその天使の輪の力を持ってはいない、だが私はこの力で幾人も殺してきた」
「「………」」
「お前達、この私が怖いんだろ」
「「………」」
レオとロキは不気味なガヴェインの言葉に怯んだ。
「そうだよなあー、お前達はまだ子供だ。敵と戦えというのも酷だよなあー」
「この私に誠意を見せたら、お前達を見逃してやらん事もない」
ガヴェインはそう言った。
「本当か?」
レオは聞いた。
「ああ、本当だよ」
ガヴェインは答えた。
「誠意を見せるって、俺たちは何をすればいい?」
レオは聞いた。
「んー、まずお前達が私の力を馬鹿にしたのを謝ったら許してやるよ」
「ガヴェインさん、貴方の力を馬鹿にしてごめんなさいってな」
ガヴェインはそう言った。
「どうする、兄貴」
ロキはレオに小さな声で聞いた。
「謝れば、俺たちは見逃してくれる。俺たちじゃあ、場数を踏んだあいつには勝てない」
レオはそうロキに言った。
「「ガヴェインさん、貴方の力を馬鹿にしてごめんなさい」」」
レオとロキは立ったまま、頭を下げた。
「違えだろうが!謝るっていうのはなあ、土下座して涙を浮かべながら見逃してくれと懇願する事なんだよ!!」
ガヴェインは怒鳴った。
「ほらどうした?早く、私に情け無く許してと懇願しろよ」
「ああん!どうした、土下座は??」
ガヴェインは意気揚々にそう言った。
「なんで…」
ロキは何かを言おうとした。
「ああん、何だ聞こえねーよ」
ガヴェインはそう言った。
「何でテメーにそこまでしなきゃいけねんだよ!」
ロキはそう言い放った。
「兄貴、土下座する必要はない。父さんが来るのを待つ必要も無い。奴はどうせこっちが二人いるからハッタリをかましているだけだ。俺と兄貴でお前を殺す」
ロキはそう言った。
「ロキ、俺が大技で道を塞ぐから一緒に逃げるぞ」
「何でだよ」
「奴には勝てない、そんな気がするんだ」
レオはガヴェインに聞こえない小さな声でロキに言った。




