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暗黒大景 / ANKOKU TAIKEI【パイロット版】  作者: 火山 千
第1部

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46話 無意味な人生

 次の日。

 僕はイザベラとリリアと一緒に魔女ディアナの所に行った。


「何の用だい?」

 魔女ディアナは聞いてきた。


「瀕死状態の人を回復させる薬が欲しい」

 僕は答えた。


「ああ、お前さんの娘に使うのか。いいじゃろう。お主に薬をやろう」


「ありがとうございます」

 僕は感謝した。


「だが、お前の世界を創り変える事の出来る白い力、死と滅亡の運命(ラグナロク)失われた恐怖(ロストフィアー)と交換じゃ」


「ディアナ!」

 イザベラは焦った。何故ならディアナがその力を何に使うのか分かったもんじゃないからだ。


「分かった。薬は僕の力と交換だ」


「話が早くて助かるのう。これに力を込めろ」

 ディアナは黒い玉を僕に渡し僕は力を込めた。


「はい」

 僕は力を込めた黒い玉をディアナに渡した。


「美しい。今まで見たどんな力よりも美しい」

 ディアナは黒い玉を見てそう言った。」


「ちょっと待ってな」

 ディアナは奥へ行き、薬を持ってきた。


「はい、これ」

 ディアナは薬を渡してきたので受け取った。


「この薬を飲ませればどんな傷を負っていても治るのか?」

 僕は不安になりディアナに聞いた。


「ああ、どんな傷でも治せるぞ。死体でも時間が経ってなければ復活するし」

 ディアナはそう言った。


「それは凄いな。薬の副作用は無いのか?」


「副作用は無いな」


「そうか。ありがたく使わせてもらうよ」


「ありがとう。ディアナ」

 イザベラはディアナと話があるそうなので僕は一人でディアナの家を出て家に帰った。


「力を奪われてありがとう何て言われるなんて、優位な取引なのにまるでこっちが損しているみたいじゃないか」

 ディアナがそう言うとイザベラは笑った。


「そうね。優一にとって自分の力は取るに足りないものなのよ」

 イザベラはそう言った。


「そういえばあなた何故、その老婆の姿なの?」

 イザベラはディアナにそう言った。


「まあ、お前たち以外誰もいないし、元の姿に戻ろうか…」

 ディアナは自分に魔法を掛け、若い姿になった。


「ええっ…、ええー」

 リリアはそれを見て驚いた。


「何をそんなに驚く」


「いや、驚きますよ」

 リリアはそう言った。ディアナの本当の姿は美しかった。


「リリア、あなたは先に帰りなさい。私はディアナと話さなければならないことがある」


「分かりました」

 リリアは一人で帰った。




 半年後…。

「アリス、戻って来い」

 僕は家の庭にある大きな石に座り、手を組んだ。


 みんな僕のいる場所でアリスの帰りを待った。


「アリス、お前はこれで良かったと思っているのか?」

僕の声が聞こえた。


「心残りとか無いのか?無いならまるでお前は俺のために産まれて俺のために死ぬだけの人生じゃないか」

 僕はアリスに問いかける声が聞こえた。


「心残りか…。私はお母さんとお父さんみたいに幸せな家庭を築きたかった」


「お父さんも知っているでしょ。ルイスの事」


「ああ、分かるよ。アリスの幼馴染みの男の子のことだろ」

 僕は答えた。


「私、本当はルイスと結婚したかった」

 アリスは涙を流した。


「私の人生は無意味だった」

 僕は再びその言葉を聞いて涙を流した。


「お父さん、お願い。私を助けて」

アリスは僕にそう言った。


「助けるよ、アリス。お前が未来でルイス君と笑って暮らせるように、俺がなんとかするよ」

 僕はアリスの手を握り伝えた。


「ありがとう、お父さん」

 アリスは僕に感謝した。


(アリス、今、助けてやるからな)

 僕はアリスに向けて力を込めた。


(何だこれは…)

 アリスから光が溢れ出した。


「お父さんが私を助けると決意したから、私は未来から来ることが無くなったんだよ。良かった…」


「そうだな…」

 僕はアリスの手を握りしめ頷いた。


「お父さん、頑張ってね」


「うん、頑張るよ」

 アリスは光となって空に消えた。


(戻って来い、アリス!)

 僕は念じた。

 僕はこの時のために動物を過去に送ったり過去から現在に送る実験をしていた。あの時のようにアリスは苦しむ事はない。


「ユウイチ、その調子よ」

 イザベラは僕の目の前に現れた魔方陣を見て言った。


「戻って来い、アリス!」

 僕は全ての力を注ぎ込んだ。


「!」

 アリスが魔方陣から現れた。


「アリス!」

 僕はアリスを揺さぶったがアリスは冷たくなっていた。アリスは安らかに眠った表情をしていた。


「まだ、間に合うはずだ!」

 僕は空間魔法で薬を出し、アリスに飲ませた。アリスの傷は治った。だがアリスは目を覚まさない。


「アリス、アリス!」

 僕はアリスに回復魔法を掛けた。


「ごほっ」

 アリスは目を覚ました。


「アリス!」

 僕はアリスを抱きしめた。


「お父さん。私、戻れたの?」


「ああ、戻れたよ」


「そっか…」

アリスは悲しそうにそう呟いた。


「アリス、元気ないな。もしかしてルイス君のことか?」


「うん」

 アリスは悲しそうな表情をした。


「ルイス君も年頃だからなあ。アリスが居ない内に他の女の子と結婚しちゃってるかもなあ」


「なーんて、冗談だよ」

 僕がそう言うとルイスはアリスの目の前に出て来た。


「アリス…」


「………」

 アリスは涙を流し、ルイスとアリスは抱きしめ合った。


「私を待っててくれたんだね」


「うん。待っていたよ」


「ありがとう。もう私、どこにも行かないから結婚して」


「ああ、結婚しよう」

 アリスが泣くからルイスももらい泣きした。


 僕らはアリスとルイスのやり取りを見守ったので家の中に戻った。


 

 ルイスとアリスは外で一緒に散歩していた。

「アリス…」


「何?」


「悲しまないで聞いて欲しいんだが、本当は僕はアリスが居なくなった後、他の女性と結婚しようとしていたんだ」


「もちろん。誤解しないで欲しいんだが僕は他の女性と結婚するのは乗り気じゃ無かったんだ」


「………」


「でもその女性とは結局、結婚しなかった」


「何で?」


「もちろん、君と結婚したいからって言って格好付けたいけど、違ったんだ」


「君のお父さんが僕に土下座をしてアリスの帰りを待ってくれないかと頼まれたんだ」


「………」


「僕はアリスを何で過去に行かせたのか君のお父さんを責めた」


「アリスを過去に送り、戻るかどうか分からない人を待てと言われて正直、虫が良すぎるんじゃないかと思った」


「でも君のお父さんは何度も僕の所へ来て、僕に頼んだ」


「…………」


「何日か経って気づいたんだ、自分のことしか考えていないのは自分自身だったことに」


「僕はアリスを愛していると言いながら他の女と結婚して自分たちだけ幸せになろうとしていたんだ」


「………」


「ごめん、アリス」

 ルイスは全てを話した。


「いいよ、ルイス。私、ルイスの本当の気持ちが知れて良かった」


「家族っていうのは傷つけたら謝って、そして許すのが本当の家族だって昔、お父さんが言っていた」


「だから、私はルイスを許すよ」


「アリス、ごめん。本当にごめん」

 アリスは泣くルイスの頭を撫でた。アリスとルイスは家に戻った。

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