41話 心残り
二ヶ月後…。
僕は相変わらず平和に暮らしていた。大人のアリスは僕の家族によく馴染んでいた。
大人のアリスは相変わらず僕が外に出ると僕に付いてくる。
「アリス姉!」
ルークはそう言い、こちらに来た。
「これ忘れ物」
ルークはエコバッグを渡してきた。
「ありがとう」
「うっ…、何だよ」
アリスはエコバッグを受け取り、ルークの頭を撫でた。よくアリスはことあるごとにルークの頭を撫でる。もしかしてアリスのお気に入りはルークなのかもしれない。ルークは口では嫌がっているがアリスに頭を撫でられるのは満更でもなさそうだ。
僕とアリスは買い物をしに町に行った。
「お父さん!」
アリスは叫び、僕を突き飛ばした。
「アリス!」
僕を攻撃から守り、アリスは血だらけになった。
「はははは、ユウイチを狙っていたんだがまあ良い。死ねええい、裏切り者」
そいつは僕らにそう言った。冥府の十二使徒の生き残りの一人だろう。僕は風魔法でそいつを殺した。
「お父さん…」
アリスは薄れていく意識の中で言った。
「アリス、これを飲め」
僕は空間魔法で回復薬を出し、アリスに飲ませた。
回復薬は全然効かなかった。
「大丈夫だ、アリス」
僕はそう言い回復魔法でアリスを治療するがアリスからは血がどんどん流れていった。
「お父さん、私はこうなると知っていた」
「どういう意味だ?」
僕は聞いた。
「私がいた未来ではお父さんは冥府の十二使徒に死の魔法を受けて瀕死状態になったのだけどお父さんは生き延びた。ただ、お父さんの力、死と滅亡の運命はもう二度と使えなくなってしまった」
「レイスとの戦いではお父さんは新たな力を得たけどレイスはお父さんよりも上手だった。だから私はお父さんが力を失わないように行動した」
「良かった。これで未来が変わった」
アリスは涙を流していた。
「アリス、お前はこれで良かったと思っているのか?」
「心残りとか無いのか?無いならまるでお前は俺のために産まれて俺のために死ぬだけの人生じゃないか!」
僕はアリスに問いかけた。
「心残りか…。私はお母さんとお父さんみたいに幸せな家庭を築きたかった。お父さんも知っているでしょ。ルイスの事」
「ああ、分かるよ。アリスの幼馴染みの男の子のことだろ」
僕は答えた。
「私、本当はルイスと結婚したかった」
アリスは涙を流した。
「私の人生は無意味だった」
アリスがそう言うと、僕は何も言えなかった。
「お父さん、お願い。私を助けて」
アリスは僕にそう言った。
「助けるよ、アリス。お前が未来でルイス君と笑って暮らせるように、俺がなんとかするよ」
僕はアリスの手を握り伝えた。
「ありがとう、お父さん」
アリスは僕に感謝した。
(何だこれは…)
アリスから光が溢れ出した。
「お父さんが私を助けると決意したから、私は未来から来ることが無くなったんだよ。良かった…」
「そうだな…」
僕はアリスの手を握りしめ頷いた。
「お父さん、頑張ってね」
「うん、頑張るよ」
アリスは光となって空に消えた。
(違うよ、アリス。お前は未来から来ることが無くなったから消えたんじゃ無い。もしそうなら今、僕の記憶の中にある大人のアリスの記憶は消えるはずだ)
「ごめん、アリス、ごめん」
僕は情け無く涙を流した。
「アリアが笑って過ごせるように未来を変えてやる」
僕はこの理不尽な世界に怒りを露わにし、拳を握りしめた。手からは血が流れた。
僕は家に帰った。
「アリスちゃんは?」
エリナに聞かれた。
「アリスは死んだ」
僕がそう言うとエリナは持っていたコップを地面に落とし、ジュースが零れた。
子供達はダイニングから追い出し。アリア、エリナ、シエラ、ルナ、カミラ、水月に事情を話した。
「俺はアリスの生きた人生は無意味だと言わせるために育てた訳じゃ無い」
「守りたかった。アリスの幸せを…、アリスの未来を…」
僕は泣いていた。




