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暗黒大景 / ANKOKU TAIKEI【パイロット版】  作者: 火山 千
第1部

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38話 幻の白い花

 数日後。僕たちは普通の日々を過ごしていた。

 

 僕は昼間から寝ていたが起きてダイニングに向かった。ダイニングからなんだか騒がしい声が聞こえた。


「どうしたんだ?」

 僕はシエラの息子、ロキに聞いた。


「ラミアが帰ってこないんだ」

ロキは焦った声でそう言った。ラミアとは僕が育てていた龍の名前だ。ラミアはずっと僕たちに人間になれる事を隠していた。でも子供達が生まれ、生活していくうちに龍から人間に変身出来るのがバレた。


「何で、ラミアが帰って来なくなったんだ?」

 僕はロキに聞いた。ロキは事情を話した。ラミアはレオに幻の白い花、スノウを取って来るように言われ、ラミアはスノウを探しに出て行ったそうだ。



「レオ。何でお前は無茶な事を言ったんだ」

僕はレオに言った。


「ラミアが俺と結婚したいだとか毎日のように言うから、幻の花、スノウを取ってこれたら結婚してもいいぞと言ったんだ」


「お前は何をしたか、分かっているのか。幻の花、スノウは崖に咲く白い花なんだぞ。スノウを取りに行って何人死んだと思っている!」

 僕がそう言うとレオは顔が真っ青になった。


「とりあえず、僕が探しに行くから、お前たちは家で待ってろ」

 ロキは僕も探しに行くと言っていたが危ないので行かせなかった。

 僕は一人で遠くにラミアを探しに行った。



 辺りは暗くなった。僕は玄関の扉を開けた。ラミアを抱きかかえて。


「父さんが帰ってきた」

 クロスは僕を見てみんなに聞こえるように言った。みんなぞろぞろこちらに来た。


「ラミア!」

 ロキは近づいた。


「父さん、ラミアは大丈夫なんだよね」

 僕はロキに聞かれ、僕は首を振った。


「そんな…。うわああああああああああ」

 ロキは膝から崩れ落ち泣き叫んだ。


 

 その次の日、葬儀を行った。ラミアは花を取ろうと崖から落ちて首を強く打ち付け死んだ。


「何だよ。その目は。みんなして俺が悪いみたいに」

 レオはそう吐き捨てた。


「この人殺し」

 ロキは呟いた。


「何だ?文句でもあるのか?ロキ。ラミアが勝手に死んだだけじゃないか」

「ふざけるな!お前のせいで」

 ロキはレオに殴りかかろうとした。シエラは抱きしめロキを止めた。


「人の命をなんだと思ってやがる。ラミアはお前のせいで死んだんだよ。お前が無茶な要求をしたから。返せよ、ラミアを元通りにしろよ」

 ロキは泣きながら叫んだ。


「ふふ、ラミアは人間じゃないんだよ。ドラゴンだ。それに俺の女だ。だからラミアがどうなろうと俺には知ったことではない。ラミアも俺のために死ねて本望だろ」

 レオは無残にもそう言った。


「殺してやる。お前みたいな奴は殺してやる」

 ロキは怒りで今にもレオを殺しそうな勢いだった。


「………」

 アリアはそれを聞いて涙を流していた。


「母さん。……、母さん!」

 アリアはその場から出て行った。レオは追いかけようとしたが僕が止めた。

 僕はアリアの部屋に行きアリアを慰めた。



「レオ、ちょっといいか」

 僕はレオを呼び、家を出て庭の石に一緒に座った。

 僕は空間魔法で缶コーヒーを二つ取り出した。レオに一つ渡した。僕とレオは缶コーヒーを飲んだ。


「お前は自分のしたことは理解しているのか?」

「父さんも、俺を責めたいのかよ」

「まあ、ちょっと待てよ」

 レオは僕の説教を聞きたくないのか家に戻ろうとしたのを僕は止めた。


「母さん、泣いていたよ」

 レオはそれを聞いたとき悲しそうな顔をした。


「母さんはレオ、お前のことをもの凄く可愛がっていたからお前があんな言葉を言ったのを聞いて悲しくなったんだろうな」

 僕はレオを可愛がるアリアのことを思い出した。


「結局、俺が悪いんだろ」

「いや、別にお前は悪くない。レオは多分僕に似たんだろうな。僕だってお前の立場だったら同じことを言うと思う。だからお前のことをとやかく言うつもりはないよ」

 レオは驚いた。父親なら怒ると思っていたから。


「お前は女の子に愛してるって言われたことはあるか?」

 僕は唐突に聞いた。


「ラミアに昔、言われたことがある」

「そうか」


「女の子の愛しているっていう言葉は結婚してても言われない位、特別な物なんだ。結果的にラミアを殺したお前はその性格を直すか、隠すかしないともう一生、誰からも愛されることは無いだろうな。お前を愛してくれるのはラミアぐらいだ」

「………」

 レオは黙った。


「ラミアがどんな死に方をしたか知ってるか?みんなには言わなかったがラミアは苦しんで死んだ。誰もいない寂しい場所で一人ぼっちで藻掻き苦しみ、絶望しながら死んだんだよ」

 僕がそう言うとレオは泣いていた。


「なあ、レオ。ラミアを今から助けれるとしたらお前は助けるか?」


「それってどういう意味?」


「これは時の石。時間を遡り運命を変えることのできる代物」

 僕はレオにネックレスに通してある石を見せて渡した。


「ラミアを助けるかどうかは、お前が決めろ」

 僕はそう言い残し、家に戻った。


(ラミア、ごめん。俺が悪かったよ。今から助けに行く)

 レオは時の石で時間を遡った。


「レオ、私と結婚してよ」


「嫌だ。ゲームの邪魔しないで」


「いいじゃん、レオー」


「じゃあ、幻の白い花スノウを見つけたら結婚でもなんでもしてやるよ」


「分かった。レオ。約束だからね」


「ああ、見つけれたらな」


(ん?何だ?この光景前にも同じことがあったような)


(思い出した。俺は時の石で時間を遡ったんだ。ラミア!)

 レオは走って追いかけた。靴も履かず外に出た。


「待ってくれ!」

 レオは叫んだ。


「何だ。レオ」

 ラミアは慌てるレオにそう言った。


「行かなくていい、行かなくていいんだ」

 レオはラミアを抱きしめ言った。


「ごめんよ。ラミア、今まで冷たくして。俺が間違ってた」

「レオ…」

 レオは涙を流した。


「どうやら、仲直りは出来たようだな」

「何でみんな…」

僕はそう言うとレオは振り返り驚いた。みんな外に出てレオ達を見ていた。


「時の石を使ってもみんなの記憶は無くならないよ」

僕はそう言った。


「じゃあ、ラミアも…」

「記憶あるよ」

「そうか。それでも僕を愛しているのか?」

「うん、愛してるよ」

 レオはラミアにそう言われ涙を零した。



「ロキいる?」

 シエラはロキが部屋に閉じこもっているので心配になって部屋に入った。


「母さん…」

 ロキはベッドから立ち上がった。


「ラミアちゃん生き返って良かったね」

「うん。良かった…。生きてて」

 ロキは落ち込んでいた。


「これで良かったの?」

 シエラは聞いた。


「良かったんだ…これで…良かったんだ」


「僕は愛していた。ラミアのことを愛していたんだ。だからラミアが幸せならそれで良かったんだ」

「………」

 シエラは何と声を掛ければいいのか分からなかった。


「何で僕じゃあ、ダメなのかなあ」

 シエラは息子の苦しむ姿を見て可哀そうになり抱きしめた。


「僕、生きるのが辛いよ。苦しいよ」

「大丈夫。いつかちゃんとロキのことを見てくれる人がきっと現れるから」

 シエラは涙を流しロキをしっかり抱きしめた。ロキを放したらどこかへ行ってしまいそうだったから。

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