34話 失ったもの
その日の夜、イザベラ達は優一が持っている力の半分をなくした今、レイスを倒すためにどうすれば良いのか話し合っていた。エリナはその話を聞いてしまった。
「ユウイチいる?」
エリナが扉をノックして僕の部屋に入ってきた。
「どうした?眠れないのか?」
蝋燭が灯った薄暗い部屋で僕は本を読んでいたが読むのをやめた。
「私を助けるために優一の力の半分、奪われたって本当?」
エリナは今にも泣きそうな顔をして言った。
「ああ、本当だよ」
僕はそう答えた。
「ごめんね、ユウイチ。ごめんね」
エリナは涙を流した。
「いいんだよ、エリナ。僕はエリナを助けたいと思ったから条件を飲んだんだ」
僕はベッドから立ち上がり、エリナを抱きしめた。
「ユウイチ、ユウイチ」
エリナは泣いていた。
「エリナ、僕が失った力はもう僕には必要ないものばかりだったからいいんだ」
「本当に?」
「本当だよ。僕の大切な力も奪われそうになったけど母さんの力が身代わりとなって僕の大切な力を守ってくれたんだ」
「だからエリナは悲しむ必要は無いんだよ」
僕はエリナの頭を撫でた。
「もう夜は遅いし、一緒に寝よう」
僕はエリナとベッドで寝そべると僕はエリナを抱きしめ、エリナの頭にキスした。
数日後…。シエラはイザベラとリリアとお酒を飲むと言っていたので空間魔法で送った。
「ゴクゴク。ぷはあーっ」
シエラは沢山、ビールを飲んでいた。
「飲み過ぎよ。シエラ」
イザベラはシエラがどんどんビールを飲むので心配だった。
「どうしたの?シエラ。ユウイチに何かされたの?」
リリアは聞いた。
「ううん、されてない。それが嫌なの」
「ユウイチは何も私のために何もしてくれない。それが不満なの」
「へえー、エリナのためにユウイチが必死だったのが不満なんだ」
リリアは笑った。
「エリナじゃなくて私が病気なら良かった」
「……、シエラそれは言い過ぎよ」
リリアはシエラから放たれた言葉に戸惑った。
イザベラは一瞬、ものすごい目つきでシエラを見た。シエラはそれに気がつかなかった。
イザベラは怒りを抑えた。
「もうお開きにしましょ」
「まだ、もっと飲みたい~」
「リリア、送ってあげて」
イザベラはそう言い、リリアはシエラを空間魔法で自宅に送った。
シエラは自宅に戻ると自分の部屋で寝た。
翌日。シエラは起きて部屋を出た。
「おはよう、優一」
「おはよ」
「シエラ。お前、昨日飲み過ぎだぞ。ほどほどにしないと体に悪いぞ」
「分かっているわよ。いちいち口に出さないで」
シエラはそう言うと僕は黙った。
「何よ…、これ」
「どうしたんだ?」
僕がシエラの異変に気づき、声を掛けた。シエラはユウイチの中にあるヒビの入った今にも砕けそうなガラス玉が見えた。玉はさっきユウイチに言った言葉で割れた。
「ユウイチの中にガラス玉が見えるの」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃ無い!」
僕はシエラを心配し、手をシエラの頬に当てるとシエラはユウイチの手を叩いた。
シエラがそうすると優一の中に見えるガラス玉がまた割れた。
「どうしたの?」
「シエラがおかしいんだ」
エリナはそう言うとみんな集まった。
「いやあっ、こっち来ないで」
シエラは近づいてきたみんなを見ると拒絶した。シエラの目にはみんなの胸のあたりにガラス玉が見えた。
「シエラ。一旦、ソファーに座ろう」
僕はそう言い、シエラをソファーに座らせ、温かいココアを飲ませた。
「どうだ落ち着いたか?」
「うん」
シエラは気が動転していたが落ち着いた。
「シエラ。一体どうしたんだ。ゆっくりいいから教えてくれ」
僕がそう言うとシエラは話した。
「………、そうか。今のシエラには僕の中にガラス玉が見えていて、傷ついたらカラス玉もそれに応じて割れるってことか…」
「ルナ、人の心が見えるような魔法ってあるのか?」
「いいえ、聞いたことが無いです」
「そうか…」
「シエラ、イザベラの所に行くぞ」
僕はシエラと共にイザベラの所へ空間魔法で行った。
「シエラはここで待っててくれ」
僕はシエラにそう言い、城の中のソファーに座らせた。
「入って良いわよ」
イザベラの部屋をノックすると入って良いと言われた。僕は扉を開け中に入った。
イザベラは僕を見ると僕の目の目の前に来た。
「シエラに人の心が見えるようになる魔法を掛けたのはイザベラか?」
「ええ、そうよ」
イザベラは答えた。
「お願いします。シエラに掛けた魔法を解いてくれませんか?」
僕はイザベラに土下座をし、お願いをした。
「ユウイチ!」
イザベラは僕の行動にびっくりした。
「お願いします。お願いします」
僕は地に頭をつけイザベラの服の裾を握り涙を流し懇願した。
「ユウイチ、頭を下げないで」
イザベラは慌てた様子で膝をついた。
「私はユウイチを苦しめたい訳じゃないの。シエラに掛けた魔法は解くから…、だから顔をあげて」
僕は顔をあげた。僕は涙を流していた。
「ごめんなさいね。ユウイチ」
イザベラは泣きながらそう言った。
イザベラの部屋の外にはシエラが立っていた。シエラは話を聞いていた。自分のせいでユウイチが苦しむことに涙を流し、膝から崩れ落ちた。
「シエラ、待たせて悪いな。どうしたシエラ、目が赤くなってるよ」
「あなたも目が赤くなってるよ」
「えっ、あそっか」
僕は目を掻いた。
「もう人の心の中は見えなくなった」
「そっか。それは良かった」
僕は安堵した。
「ユウイチ、いつも酷いことばかり言ってごめんね」
シエラは謝った。
「良いんだよ、シエラ。だって僕とシエラは家族じゃないか」
僕はそう言った。
「じゃあ、帰ろっか」
「うん」
シエラは僕の手を握り、空間魔法で家に戻った。




