33話 魔女
僕はイザベラとリリアとシエラと一緒にどんな病気でも治せる薬を持っている人の所に向かった。
「ディアナいる?イザベラよ。ディアナ!」
家に着きイザベラは扉を叩いた。
「何じゃ、私が気持ちよく眠っていたのに」
黒い魔導服を着た、年の取ったお婆さんが扉を開けた。
「おお、何だ、イザベラか」
魔導服を着たお婆さんはイザベラの顔を見てそう言った。
僕たちは家の中に入った。
「……それで薬が欲しいと」
僕たちは説明し、薬を譲ってくれるように頼んだ。
「無理じゃな」
「ディアナさん、そこを何とかお願いします。何でもしますから」
僕は頭を下げた。
「お前さん、ユウイチじゃろ」
「そうですけど」
「仕様が無い。薬はあげてやろう」
「本当ですか!?」
僕は嬉しくて舞い上がった。
「ただし薬と引き換えにお前の力の半分を寄越してもらおう」
「ディアナ!」
イザベラはアメリアの発言を聞いてそう言った。
「力の半分ってどういうことですか?」
僕は聞いた。
「お前が敵と戦っている時に使っている技の事さ」
「私は色んなな奴の力をこの丸い石に入れてコレクションすることが好きなんだ」
ディアナは笑った。
「分かりました。僕の力を半分をあげるからエリナの病気を治す薬を下さい」
「ユウイチ!」
イザベラは僕の発言に焦った。
「大丈夫だ、イザベラ」
僕はそう言った。
「決まりじゃな」
ディアナはそう言うと、何も書かれていない真っ白のルーレットとダーツ矢を持ってきた。
「ユウイチ、このルーレットに手を当ててくれ」
僕はディアナにそう言われルーレットに手を当てた。そうすると僕が持っている技が自動で書き込まれた。
「お前の持っている技がランダムで二十個がこのルーレットに書き込まれる。書き込まれてない技はこのゲームには必要ないから除外した」
ルーレットに書き込まれたのは魔力固定、ナイトメアフレア、空間魔法、双極、アブソリュート・バースト、死者の安息、風魔法、イル・ネア・ブラスト、アブソリュート・バリア、死の欲動、限定世界、引き寄せる、死と再生、結界、死と滅亡の運命、世界の終わり、限定破壊、回復魔法、魔眼、眼力の二十個だった。
「ルールは簡単。お前が矢を投げ刺さった所に書いてある技を私が貰う。十個、技を貰ったら終了、お前にどんな病気も治す薬を渡そう」
「分かった。でも一つだけ頼みたいことがある」
「何じゃ?」
「遠くない未来、レイスという者が現れるのだがそいつと戦うために力が必要なんだ。もしディアナにあげた力が必要になったらディアナにあげた力を貸してくれないか」
僕は頼んだ。
「駄目じゃ」
僕は断られた。
「レイストいう奴は世界を滅ぼすそれでもいいのか。世界を滅ぼされるとあんたも困るだろ」
「そうじゃな。分かった。お前から貰った力は一つだけ貸してやろう。それで文句は無いだろ」
「分かった」
僕はそう答えた。
「じゃあ、始めようか」
ディアナは不気味な笑みを浮かべた。
「イザベラ、ルーレットを回せ」
アメリアはそう言うとイザベラはルーレットを回した。
「何が出るかな~。何が出るかな~」
ディアナは陽気な声でそう言った。
僕は矢を投げた。ルーレットは回転を止めた。
「………」
「やったあ、死者の安息じゃあ!」
僕が投げた矢は死者の安息が書かれている場所に刺さった。
「じゃあ、お前の力貰うぞ」
ディアナはそう言った。僕は黒い球を渡された。
「その玉を握ってお前の力を込めるんだ。お前が私に物を渡すのをイメージして」
「こうか?」
僕はイメージして黒い玉を握った。
「ほう、中々のものだ。美しい。一級品だな」
「私はこの力欲しかったんだ」
アメリアは黒い玉を手に取るとそれを見て喜んだ。ディアナはコレクションしている箱に黒い玉を閉まった。
イザベラ達は悲しそうにこっちを見ていた。
イザベラは矢を抜いた。そうするとルーレットに書いてあるあ死者の安息の文字は消えた。
「イザベラ、回してくれ」
僕がそう言うとルーレットを回した。
僕は矢を投げた。
双極と書かれている所に刺さった。
僕は黒い玉に力を込め渡した。
「何だ、外れか」
ディアナは黒い玉を見てそう言った。
「じゃあ、僕に下さい」
「嫌だ」
ディアナは意地悪そうにそう言い黒い玉を別のケースにしまった。
「次じゃ、次!!」
ディアナはそう言い、イザベラはルーレットを回した。
「限定世界か…。まあまあだな」
「一応、コレクションしとくか」
ディアナは黒い玉を別のケースにしまった。
「次!」
僕は矢を投げた。
死の欲動に刺さった。
「やったあ、当たりだあ」
ディアナは喜んだ。
「どうだ。自分の大切な力を奪われる気分は」
ディアナは僕を煽った。
僕はそれを無視し矢を投げた。
「眼力か…。外れじゃな」
「ナイトメアフレアか、まあまあだな」
「結界?ゴミだな」
ディアナは次第に不機嫌になっていった。
「いいよ、ユウイチ。その調子」
イザベラは僕にそう言った。
「頑張って、ユウイチ」
シエラは僕にそう言った。
僕は矢を投げた。
世界の終わりの所に刺さった。
「やったあ」
ディアナは喜んだ。
僕はまた矢を投げた。
死と再生に刺さった。
「お前の大切な力どんどん奪われるな。どんな気持ちじゃ?」
「………」
僕は黙った。
「最後だな…」
「ユウイチ、もう止めなさい。良くない方向に行ってるわ。ディアナは貴方の切り札を狙おうと何かを企んでいるわ」
「止めてもいいんだよ。止めたらエリナは助からないけど」
ディアナは不気味な笑みを見せた。
「大丈夫だ」
僕がそう言うと矢を投げた。
(馬鹿が!!このルーレットには最後には絶対私の欲しい力を当てさせる力がある。ユウイチ、悪いがお前の切り札、死と滅亡の運命はこの私が貰った!!)
ルーレットは止まった。
刺さったのは『引き寄せる』だった。
「そんな馬鹿な」
ディアナは信じられない様子だった。
「早く力を込めろ」
ディアナは焦った様子で僕にそう言った。僕は力を込めた黒い玉を渡した。
「これは…。クソがあっ!!」
ディアナは黒い玉を見てそう吐き捨てた。
「守りやがった。お前の母親の力がお前を守りやがった」
「ふざけんな!!」
ディアナは地面に黒い玉を叩きつけた。
「こんなのは無効だ!!」
ディアナは僕にそう言った。
「ユウイチはちゃんとルールは守ったわ」
「でも…」
「もしかして貴方、このルーレットに貴方の欲しい力を必ず当てる細工でもしていたのかしら」
「うっ…」
「約束は守って貰うよ」
「………」
イザベラの言葉にディアナは何も言えなかった。
「……で何の力を一時的に使えるようにするんだ?」
ディアナは欲しい力を手に入れることができなくて悔しがっていたが落ち着いた。
「死の欲動をレイスとの戦いで使いたい」
「分かった」
ディアナはポケットから袋に包まれた飴を手で握り、もう片方の手には死の欲動の力の入った黒い玉を握って両手を前に出した。
「出来た」
ディアナは僕に握っていた飴を渡した。
「死の欲動を使いたいときこの飴を舐めろ。力を使えるようになる」
「この飴、腐らない?」
僕は疑問に思ったので聞いた。
「腐らないように魔法を掛けてる」
「そっか。貰っておくよ」
僕は飴をポケットにしまった。
「あと薬だな」
ディアナはそう言うと、奥の部屋に行き、薬の入った瓶を持って来た。
「ほら持ってお行き」
「ありがとう」
僕は薬の入った瓶を貰った。僕はディアナに感謝した。
(母さん、ありがとう。僕の大事な力を守ってくれて)
僕は外に出て走った。
「力を奪われた後にありがとうなんて初めて言われたよ」
ディアナはそう言った。
「それがユウイチの良いところなのよ」
イザベラはそう言った。
「亡くなったお前の息子に何処となく似ているな」
「ええ、そうね」
イザベラは懐かしむようにそう言った。
「エリナ、エリナ!」
僕は家に辿り着き、エリナを起こした。
「何?」
「病気を治す薬持ってきたよ」
「ほら飲んで」
僕は薬の入った瓶を開け、エリナの体を起こし、飲ませた。
「どうだ?」
僕は心配そうにエリナを見つめた。
「見える…。見えるわ」
「良かった」
エリナと僕は涙を流し抱きしめ合った。
エリナの病気は治った。




