32話 虚ろな目
「はあ…、はあっ…」
小雨が降る暗い夜の日、ドレイクは誰かに襲撃され手傷を負い、血だらけになった。
「悪いがお前は死ななければならない」
どこかで聞いたことのある声でフードを被った男はドレイクにそう言った。
フードを被った男は暗くて顔が見えなかった。
「見逃してくれ、頼む」
「いや、だめだ」
男はドレイクの命乞いを拒否した。
「さようならだ。ドレイク」
フードを被っていた男は剣を振り下ろそうとしたら雷が鳴り、光った。
「馬鹿な…。お前は死んだはず」
ドレイクは雷が光った一瞬死んだはずの人間を見た。そしてドレイクは殺された。
僕はエリナと町で買い物をして家に帰ろうとしていた。
前からエリナの顔に向けて風魔法が向かってきた。
僕はそれに気づき、左手をエリナの顔の前に出し、それを防いだ。
「!」
エリナに放たれた風魔法を僕は防ぎ、僕の左手は血だらけになった。僕の血がエリナに飛び散った。
「大丈夫!?ユウイチ」
「ああ」
エリナは僕の手から流れる血を見てそう言った。
「レッドフィールド卿。お見事です、私の風魔法をよく防ぎましたね」
「でも残念。どうやらもう左手は使えないようですね」
僕に男はそういうと刃物を持った男が四人ぞろぞろと出てきた。
「たったの五人か…。お前らには死んでもらう」
「できますか?今の貴方に」
男は笑いそう言った。
「試してみるか?お前らには苦しめてその後、殺そうと思ったがやめだ」
「エリナを狙ったのを後悔しろ」
僕は眼が赤くなった。優一は右手を伸ばし、男達に向けた。
次の瞬間、真ん中の男以外の四人の男は体に斬撃を浴びて地に倒れた。
「貴様、何をした!」
真ん中の男は何が起こったのか理解できていなかった。
優一は魔眼を使ったのだ。魔眼といっても種類はたくさんあるのだが、優一の魔眼は自分の攻撃の瞬間を感じさせないものだ。倒れた男四人は優一の風魔法によって殺された。
「何って、別にお前は知る必要のないことだ」
「魔力固定」
僕は右手を横に向けた。右手の全指先から黒い魔力が黒い炎のように燃え、浸食するように手を覆った。右手に黒い大剣を出現させ黒い大剣を握った。空気中に漂う魔力を集め、自分の魔力を混ぜ合わせることで大剣を作った。
「死ね」
(なっ…。消えた)
優一は男の目の前から消えた。
「がああっ」
その次の瞬間、黒い大剣が振り下ろされ、斬撃を浴びせた。
男は理解する間もなく死んだ。
「エリナ大丈夫か?」
僕はエリナの元に行き、エリナの顔に付いた僕の血をハンカチで拭いた。
「うん、大丈夫。手治すね」
僕はエリナに手を治してもらった。
「帰るか」
「うん」
僕とエリナは家に帰った。
「帰ったぞ」
僕は家の扉を開け、中に入った。
「お帰り、お父さん」
「ただいま」
レオが僕たちを出迎えた。
「ユウイチ…」
「エリナどうした?」
何かエリナの様子がおかしい。
「ちょっと調子悪いみたい」
エリナはそう言い、倒れた。
「エリナ!」
僕は倒れたエリナを手で抱えた。
「大丈夫か、エリナ!」
僕は揺さぶるがエリナは意識がない。
僕はエリナを抱え、エリナの部屋のベッドに運び、昔から面識のある医者を呼んだ。
「どうだ?エリナは大丈夫なのか?」
僕はエリナの扉の前でエリナを診てくれた女の医者、ミアに聞いた。
「エリナさんの意識は戻ったけど、エリナさんの今、かかっている病気は分からないわ」
僕はそれを聞いた時、絶望した。何故ならどんな病気でも治してくれる凄腕の医者にそう言われたからだ。四の世界の病院に診てもらっても意味はないだろう。
「部屋に入っていいか?」
僕は聞くとエリナの部屋に入った。
「エリナ、大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
エリナはか細い声でそう言った。
「ユウイチ…。私、だんだん目が霞んできて見えなくなってきてるの」
僕はそれを聞いて何も言えなかった。
「先生は私の病気は治らないって言ってた」
「私、死ぬのかな…。怖いよ」
エリナは虚ろな目をして涙を流していた。だんだんエリナが衰弱しているのは言われなくても分かった。
「大丈夫。僕がなんとかするから」
僕は涙を流し、エリナの手を握った。
僕はエリナの部屋から出た。
僕はどうすればいいのか分からなかった。だからイザベラに相談しようと玄関に行った。
僕は家の扉を開けるとイザベラとリリアがいた。
「イザベラ。エリナが!エリナが!!」
僕は泣きながらそう言った。
「分かっているわ、ユウイチ。大丈夫よ」
イザベラは僕にそう言った。
僕と女の医者、ミアはイザベラにエリナの状況を話した。
「私の友人にどんな病気でも治せる魔法の薬を持っている人が居るわ」
「イザベラ、その人の所に連れて行ってくれ」
僕がそう言うとイザベラは悲しそうな顔をした。




