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暗黒大景 / ANKOKU TAIKEI【パイロット版】  作者: 火山 千
第1部

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31/117

31話 ずっと空から見守っているよ

 ルナは空間魔法で死者の書を取り出した。

 この死者の書は数日前、僕とある敵と戦った時に手に入れた戦利品だ。この黒い本は死者を蘇らす事が出来る。死者を操る敵と戦うのに僕は苦戦を強いられた。敵は死ぬ間際、今後、僕の前に死の国から蘇った者達が敵として襲う呪いを掛けられた。僕はこの呪いを解く方法を探したがまだ見つかっていない。


「じゃあ、やりますよ」

 ルナは死者の書を広げ、書に書かれている文字を唱え、魔術を発動させた。


「ここは…」

 ある一人の男が死者の国から現世に呼び戻された。


「ライラ…。そうか私は蘇ったのか」

 男は周りを見て自分の状況を理解した。この男の正体はライラの夫でありアリアの父親であった。


「………」

 ライラは何も言わず、涙を流していた。


「お父さん…」

 アリアは呟いた。


「もしかして君はアリアなのか?」

「うん。そうだよ」

 アリアは答えた。


「大きくなったなあ」

 男はアリアを見て嬉しそうな表情をした。


「お父さん、何でお母さんを待ってくれなかったの?」

「………」

 アリアの父親は黙った。


「それはだな…」

 父親は重い口を開いた。


「ライラ、君が僕を愛していないと思ったから私は先に天国に行った」

 父親の言葉にアリアは切れ、父親を殴った。


「悪いと思っていたよ」

 父親はアリアに殴られ地面に腰を突いた。


「お母さんはお父さんの事を愛していた。お母さんはいつだってお父さんの事を思っていたんだ!!」

 アリアは父親の胸ぐらを掴み、立ち上がらせた。そして手を離した。父親はライラに近づき、目の前に立った。


「すまなかった、ライラ」

 涙を流しているライラを見てライラがどの位、私の事を愛していたかが分かった。


「いい、いいんだ」

 ライラは腕で涙を拭うが、涙は止まらなかった。


「ライラ、一緒に天国に行こう」

 ライラは夫の言葉に頷き、夫はライラを抱き締めた。そして二人を光が包み込んだ。


「どうやら時間が来たみたいだ」

 父親はそう呟いた。

「アリア。レオを狙ってすまなかった。私も必死だったんだ、許してくれ」

 ライラはアリアに謝った。


「いい、そんなの気にしてない」

 アリアはライラと父親の側に来て抱きついた。


「アリア、私はお前を愛している。ずっと空から見守っているよ」


「お前のお陰でライラとやり直せた、ありがとう」


「お母さん、お父さんっ!!」

 母と父の言葉にアリアは涙を流し強く抱き締めた。

 そしてライラと父親は光の粒となって消えて行った。


 

 その後…。

 アリアが無事、僕の元へ戻ってきたので今日もホテルに宿泊する事になった。

 僕は懲りずまた、混浴露天風呂を貸し切った。僕の嫁達は脱衣所で服を脱ぎ、浴場へ入った。

 僕は十分経ったら、脱衣所に入っていいと言われたので入り服を脱いだ。


「入って良いぞ、優一」

 水月の声が聞こえた。

 僕は疲れていたので何も考えず風呂に入る扉を開けた。


「なっ!!」

「あら」

 僕が扉を開けると目の前でまた僕の母であるレイカが自分の身体を洗っていた。


「この変態!!」

 エリナはまた僕がレイカの裸を見たので、風呂桶を投げつけて来た。


「うがあっ!!」

 エリナが投げた風呂桶は僕の顔面に当たった。僕は後ろに倒れた。


「すまんな、優一」

 水月は倒れた僕を見て大笑いした。


「酷すぎるだろ」

 みんな僕の情けない姿を見て笑った。




 数日後…。僕たちは自宅に帰り着き、日常を過ごしていた。僕は他の嫁達に頼み、僕とアリアとレオの三人で過ごす事を許してもらった。

 

 僕はお勧めのピクニックの場所を知っているのでそこへ三人で行った。僕たちはそこに辿り着いた。そこには美しい花園が広がっていた。

 

 僕たちはレジャーシートを敷き、座った。僕たちは持ってきたサンドイッチを食べ、甘い飲み物を飲んだ。息子は初めて見た美しい花園に興奮し、靴を脱ぎ花と戯れた。僕とアリアはそれを微笑ましく見ていた。


「アリア。君に伝えたい事がある、聞いてくれるか?」

「ああ、何だ?」

 僕はアリアの隣で花と戯れる息子を見ながら言った。


「僕の第二の人生は君との出会いから始まった。僕はアリサが死んで人生が終わったと思っていた」


「だけど違った。アリア、君が僕を支えてくれたから未来に希望を持つ事が出来たし、君と幸せな日々を過ごす事が出来た。僕はこれからもそんな日々を過ごしたい」


「だからもうどこにも行かないでくれ。僕の側から離れないでくれ。アリア、君は僕の全てなんだ」

「………」

 僕は恥ずかしくてアリアの目を見て話さなかった。だがふとアリアを見るとアリアは涙を流していた。アリアは僕が見ている事に気づき涙を服で拭った。


「アリア愛しているよ」


「わ…、私もユウイチの事、愛してる」

 アリアは言葉を噛みながら、僕に伝え太陽のような笑顔を見せた。その言葉だけで僕の心は救われた。

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