3話 冬祟冬術:冬景崩山激流・玉
「お前の力、もっと見せろ」
僕がそう言い放つとメアは気を引き締めた。
「火神竜眼。能力顕現:火之迦具土神」
僕は竜眼の能力を顕現した。僕の装備している鎧の隙間から深い赤の光のオーラが漏れた。火神竜眼の能力は火属性の技の攻撃力を上げる事が出来る。
「黒竜の氷霧」
メアはここら一帯に氷の霧が発生させた。この技の効果で氷の技の威力を上げた。
「火と氷どちらが上か決めようじゃないか」
「火祟火術:火景火羅万象・玉」
僕が両手の平を合わせると深い赤色の二頭の大きな龍の頭が僕の両側に現れた。
「冬祟冬術:冬景崩山激流・玉」
メアも両手の平を合わせると深い青色の二頭の大きな龍の頭がメアの両側に現れた。
「俺に言いたい言葉はあるか?」
僕はメアに聞いた。
「私はお父さんの積み上げてきたものを守る」
「そうか…」
「全てを喰らい尽くせ!!」
僕はメアに向けて深い赤色の龍を放った。龍は地面を削り取りながらメアに向かって行った。
メアも二頭の竜を放った。竜同士が打つかり合い、辺りには水蒸気が立ち込めた。
(俺の勝ちだ!!)
水蒸気が段々消えていった。先、使った大技は攻撃の後に追加攻撃をするように僕が組んだ技だ。だから今頃、メアの身体には無数の深い赤色の火の刃が刺さっているだろう。
「!」
「何っ!?まさか…」
水蒸気が消え、メアの姿が見えた。メアの目の前に石で出来た円形の盾が現れていた。
「冬景竜眼。能力顕現:古代鏡」
メアは自分の目の前に攻撃を跳ね返す鏡を出現させた。
「があああっっ!!!」
「あああああああああああああああ!!」
メアの身体では無く僕の身体に無数の深い赤色の火の刃が突き刺さった。僕は余りの痛みに悲鳴を上げた。
「四方紫電竜」
メアは間髪を入れず、唱えた。僕を中心に囲むように紫色の四頭の竜の頭が現れ、四つの竜は大きく口を開け、高圧電流を僕に浴びせようとした。
(死ぬっ!!)
「暗黒竜眼。能力顕現:火月!!」
僕は眼の能力を顕現させた。
「死ねえええええええええええええええ」
メアが叫ぶと紫の四頭の竜の口から高圧電流を僕に浴びせた。物凄い電流が街に駆け巡った。 普通の人間なら即死レベルだ。いや丸焦げになって身体の形の原型を留めていないであろう。
「まさか俺がここまで追い込まれるとはな…」
「そんな馬鹿な…」
僕が無傷で佇んでいるのを見てメアは驚きを隠せなかった。
「どうやら先の大技がお前の切り札だったようだな」
「………」
「どうした?俺が怖いか?」
僕が一歩前に足を進ませるとメアは後ろに後ずさりした。そしてメアは地面に尻餅をついた。
「メア逃げろ!!!」
そう声を張り上げた方を見ると男が二つのトルネードを僕に打つけてきた。そして上から一人の男が降りてきた。僕は声が聞こえ、攻撃を感知したため僕を中心に球体のバリアを張り攻撃を防いだ。
(なんやこいつ…)
僕は突然現れた知らない男を見てそう思った。
「メア、早く逃げるんだ!!」
男はメアにそう叫び、僕に向かってトルネードを打つけた。
(だから効かねえつーの)
僕はそう思いながら近づいていき、そして男の首元を手で掴んで勢いよく地面に叩きつけた。
そして僕は男を横に放り投げた。僕は空間魔法でこの街の住人の男共を五人出した。急にここに出された男共は皆動揺していた。僕はナイフを五本出し、地面に落とした。
「アイツをそのナイフで痛めつけて殺せ」
僕は顎で指示した。
「何でアンタの言う事を聞かないといけないんだ?」
僕は掴み掛かってきた一人の男を無数の火の刃で突き刺した。
「早くやれ、やらないなら俺がお前達を殺す」
僕がそう言うと、四人の男達はメアを助けに来た男をナイフで痛めつけ始めた。
「嫌だ嫌だ、やめてくれ。痛い痛い痛い痛い。僕が悪かった、だからやめてくれ」
男は口に出来ないほど痛めつけられた。
「お父さん、やめて」
メアは涙を流しながら僕にそう言った。
「メア。やっと俺の気持ちが身に沁みる程、分かっただろ」
「お父さん、お願い。やめて」
男の叫び声が聞こえる度メアは涙を流して僕に懇願した。そして痛めつけられていた男の声は聞こえなくなった。
「お前が安易にちっぽけな正義の為にここに来て俺に説教を垂れた所為で彼はこうなった」
「全部、お前の所為だよ!!」
僕は屈み、両手をメアの肩に置き、メアの身体を揺らしながらそう言い放った。メアは心が壊れた。僕はメアを置いて歩き出した。
「殺してやる…、殺してやる!!」
メアは叫んだ。そして立上がった。僕は立ち止まり振り返り、メアの方を見た。メアの剣は深い赤色の小さな炎となりメアの胸の中に入り込んだ。
「暗黒再臨・火境V2」
メアは叫んだ。空気中にある無数の膨大な魔力がメアを中心に集まる。メアの身体は少し浮かび、魔力は僕に向かって流れ、包み込み、宝石のような深い赤色の渦のような球体となった。
そして球体は割れ地面に破片が落ちた。メアの宙に浮いていた足は地面に着いた。メアの姿は変わり、深い赤色の見たことの無い文字が刻まれた首輪を身に付けた姿となった。メアの目の光りは失われ、冷たい目となった。
足は化け物みたいな禍々しい深い赤色の三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪だった。足の鉤爪が地面に突き刺さっており、鉤爪のみで身体を支えていた。鉤爪は人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような禍々しい大きな爪であった。先までの力とは別の次元の力となっているのを誰が見ても言える位、異質な力であった。
「メア最高だよ。俺もお前と同じ最強の力を見せてやる」
僕の剣は深い赤色の小さな炎となり僕の胸入り込んだ。
「暗黒再臨・火境V2」
僕に向かって膨大な魔力が流れ込む。
バリンッッ!!
だが僕の身体がガラスを割れたようなエフェクトが起きた。僕の火境の力は完全に壊れもう使えなくなった。
「んな、馬鹿な!!」
僕は力が離散し自分の力も抜け、片膝を突いた。
「どうやらハルとの戦いの所為でそうなったようね」
「父さん。大切な力が壊れて今、どんな気分?私の気持ちが分かった?」
「お父さん。自分の行いの罪は回りに回って自分に返ってくるものなんだよ。父さんは私から大切な人を奪ったように人に言えない事、今まで沢山してきたんでしょ。だからアリサさんを失ったんだよ」
「全部、お前の所為だよ!!」
メアは叫んだ。
「………」
メアの言葉を聞き、僕は悔しくて涙を流した。僕はアリサとの過去の楽しい思い出を思い返した。そしてアリサが死ぬ瞬間も…。僕は悲しくて唇を噛み締め、怒りで拳を強く握りしめ身体を震わせた。
「私、大切な人を亡くして父さんの気持ちが分かった」
「黙れ…」
「父さんの今の気持ち分かるよ」
「黙れ!!」
「お前に何が分かる!!アリサは特別だったんだ。僕の全てなんだ!!」
僕は叫んだ。