25話 息子の命
十分程の時間が経ち。ついにアリアを見つけた。
「待て、アリア!!」
僕達は森を抜け広い見晴らしが良い場所に辿り着き、仮面の女は立ち止まった。
「お前、アリアなんだろ」
僕が聞くと仮面の女は付けていた仮面を取った。
「アリア。お前は時の石で何をするつもりだ」
僕は聞いた。
「時の石で過去へ戻り、アリサを助ける」
アリアはそう答えた。
「アリサを助ける?お前とアリサは赤の他人なんだぞ」
「私はアリサの事でずっと苦しんでいるユウイチを見ていられない。だから私は…」
「俺はお前にそんな事、頼んでいない!!」
「ああ、その通りだ。だが私の意思で決めた事だ。時の石は手に入れた。これで過去を変えられる。だから邪魔をしないでくれ」
アリアはそう僕に言った。
「過去を変えたとしてどうする?過去を変えたらこの世界には僕は来なくなり、アリアと出会わない。レオは生まれなくなるんだぞ」
「………」
僕は言葉を紡いだ。
「レオがノマドに首を絞められ殺されそうになった時、レオは僕を呼んだんだ『お父さん』って。生きたいって声にならない声で言ったんだ」
「アリア、お前はレオが生まれてきてどう思ったんだ?アリアがお腹を痛めてまで産んだレオは俺の小さな不幸で搔き消される命なのか?」
「違う、違うに決まってる!」
「レオは僕とアリアに祝福されて生まれてきたんだ!!」
僕は声を荒げてそうアリアの心に訴え掛けた。
「………」
アリアは涙を流していた。
「レオの命が犠牲になってでも過去を変えたいのか?」
僕はアリアに聞いた。
「違う、違う」
アリアはレオの顔を見て色々な思いが込み上げた。
「お母さん…」
レオがお母さんの側に行きたそうにしていたから僕はレオを地に下ろした。レオは母さんの側に歩いて行った。
「レオ!!」
アリアはレオを抱き締めた。
「レオ、ごめん。私が間違っていた」
「お母さん…」
レオは涙を流しながら謝る母にどうすれば良いのか分からなかった。
「お母さん、家に帰ろ」
「ああ」
アリアはそう答えた。
「!」
「レオ!!」
急に僕の目の前が黒い炎で真っ暗になった。アリアとレオは黒い炎に直撃した。
「なっ…」
僕は急な出来事に何も言葉が出なかった。
そして黒い炎は消えた。
「アリア、レオ!!」
僕は走りアリアとレオの側に駆け寄った。
「レオは大丈夫だ」
アリアは黒い炎が来た瞬間、レオを抱き締め黒い炎から守った。アリアの身体は灰色になった。
「ユウイチ、レオを頼む」
「アリア!!」
アリアは死を悟ったのか、そう言い残し灰となり崩れ消えて行った。
「あああっ、あああああああああ」
僕は消えて行ったアリアを見て嘆いた。アリアは消え、時の石が地面に落ちた。僕は時の石を握りしめた。
「時の石よ、僕の思いに応えてくれ」
僕は時の石を握りしめ強く念じた。
時の石は光り出し、僕は過去へ戻った。
「!」
「レオ!!」
アリアの声が聞こえた。
「!」
僕はアリアの側に行き、黒い炎を風魔法で防いだ。
「大丈夫か?アリア」
僕はアリアに聞いた。




