21話 時の石
みんなで花見をした数日後、僕の嫁であるアリアは息子を置いて家を出て、失踪してしまった。
僕たちはアリアを探したが帰ってくる様子も無く、途方に暮れていた。
「………」
僕はアリアの部屋に入りアリアの机を見ていた。机の上には本や何かを書き留めた紙が散乱していた。
「時の石…」
僕はアリアの書いた紙を見てそう呟いた。アリアの机に置いてある物は全て時の石に関する物だった。
時の石とは時を操る事ができ、自由に過去を変える事が出来る代物だ。その時の石が僕が住んでいる国の同盟国であるアルベルト王国でお披露目されるようだ。
アリアはどうやら時の石を狙っているようだ。もしアリアが盗もうとし捕まったとしたら処刑されるだろう。それ位、時の石と言う物は貴重な物のようだ。
僕ら家族はアリアを家に連れ戻すために家を出てアルベルト王国へ向かった。
アルベルト王国は僕の住んでいる国と同盟国と言っても僕が住んでいる国から何日もかかる。
アルベルト王国に向かう途中の場所に汽車があるのでそれを目指して馬車でそこまで向かった。
「暑い」
馬車の中なので熱気がこもっていた。馬車は二台使っているので馬車内の密度はそうでも無かった。」
「見えてきましたよ、旦那」
馬車を操る御者が僕にそう言った。僕はアルベルト王国へ向かう汽車の停留所に辿り着いた。
僕らは馬車を降り、ここまでの運賃を御者に渡した。
僕たちは停留所で汽車を待っていた。僕たちが今いる所は何も無く、ただ線路が敷かれていた。本当にここに汽車が来るのか心配であった。
「来たみたいですよ」
僕が地べたに座っているとルナはそう僕に言った。遠くの方から黒い汽車が汽笛を鳴らし、こちらに向かって来た。
「やっと来たか…」
僕は立ち上がると目の前に汽車が止まった。
僕の息子は僕の母、レイカに抱っこされながら汽車を見て目を輝かせていた。僕達は汽車に乗った。
「凄い、凄いよ」
「凄いねえ」
レオはキラキラした目で窓から見える景色を見ていた。レイカはレオの言葉に微笑みながら返した。
「この調子なら目的地には三時間、四時間で着くだろう」
僕は窓から景色を見ながらそんな事を思った。
「ヨミ、起きて」
エリナにそう言われ僕は目を覚ました。どうやら僕は寝てしまったようだ。
「俺、寝てたのか…。どうした?エリナ」
僕は眠たい目を擦り、起きた。
「車掌さんに聞いたらもうすぐアルベルト王国に着くって」
「そうか」
エリナがそう言うので準備をした。
「あれがアルベルト王国か…」
汽車の窓からアルベルト王国が見えた。
アルベルト王国に辿り着いたので僕達は汽車を降りた。
「凄いね」
僕達はアルベルト王国の街を歩いた。僕達が住んでいる国とは違い、賑やかで商業が栄えていた。
僕達は商店でこの国の特産品の食べ物を食べた。そして今日宿泊するホテルに辿り着き、客室を取り荷物を置いた。
「時の石のお披露目は明日の昼だから、みんな今日は観光しよう。僕はアリアを探す手がかりを見つけないといけないから別行動だけど」
「みんなで探さなくて良いの?」
僕は皆にそう言うと、シエラは聞いた。
「ああ、良いさ。一人行動で情報収集した方が何かといいし」
「そう…」
シエラは何だか申し訳ない気持ちになった。
「この国は安全そうだが何が起こるか分からない、一人行動は危険だ。だから皆と離れずに観光するんだぞ。水月、皆を頼んだぞ」
「任せるのじゃ」
水月はそう言い、僕は水月にこの国の通貨の入った財布を渡した。
「シエラ、カミラ。何かあった時、戦えるのはお前達だけだ。任せたぞ」
「「分かった」」
僕がそう言うとシエラとカミラは頷いた。
「夕食までにはこのホテルに戻るから、皆でご飯を食べながら話をしよう。じゃあ、みんな観光楽しんで!」
僕はそう言い皆と別れた。




