18話 暗黒解放:死と滅亡の運命
王都は地面や空気中から魔力が吸い上げられ、地面が割れ目に見えるほどの膨大な魔力がある場所に集まっていた。王都の建物が壊れ地面から黒い魔力が吹き出した。
「ここか。王都の…いや世界の地から吹き出した魔力が吹き出したのが集まっているのは」
黒十字騎士全員がゲートを通り出てきた。そのの内の一人、テオドールはそう言った。
この場所は円形闘技場のようで石製の地面で観客席は無く吹き抜けていた。地面は宙に浮いており、空には世界中から集まった魔力は丸い魔力の集合体に集まっていた。黒い魔力の集合体と円形の石畳と青い空しかそこにはなかった。
「なあ。何をしようとしているんだ、優一…」
テオドールは僕にそう言った。
僕は二つの黒い大剣を持ち、円の中心で佇んでいた。
「本当にあいつが世界を混乱に陥れているのか?」
ガブリエルは言った。
「どう見てもそうでしょ」
ソフィアは答えた。
「まさか、優一と戦う事になるなんて」
シャーロットは言った。
「戦う?そんな甘っちょろくないんだよ。優一を殺すんだよ。首をはねるんだよ」
ヴィクトリアは意気揚々にそう言った。
「しかし殺せるのか?優一は強いぞ。ラストと双璧をなすほど強いからな」
「付けが回ったわね。私達は強い敵が出ると優一とフィリックスに任せていたから」
ドレイクはそう言い、その後、エレノアはそう答えた。
「やらなきゃ、世界は滅ぶ。たとえ勝てなくても手傷を負わせれば何か変わるかもしれない」
「確かにそうだな」
アリステアがそう言うと、ドレイクは納得した。
「おーい、優一聞こえてるかあー」
カミラは優一に聞こえるように大きな声で言った。
「………」
優一は何も答えなかった。
「意識が無いようだな」
カミラはそう言った。
「話している場合じゃないな…。魔法で一斉攻撃をして仕留めるぞ」
テオドールは空に浮かぶ今もなお集められている黒い魔力の球体を見てそう言った。
「合図するから合わせろ」
テオドールの合図で魔法を優一にぶつけるようだ。
「せーの」
テオドールは合図した。
「ダーク・メテオ」
「ヘル・ブースト」
「グローム・アルペレータ」
「ワグニル」
「ライカン」
「インフェルノ」
「スーパー・ソニック」
「ジェット・トルネード」
「ウルトラ・ノヴァ」
みんな手を前に突き出し、魔法を呼び出す技名を言った。
「どういうことだ…」
ドレイクはみんなの魔法が出ないことに驚きを隠せなかった。
「どうやらこの空間では空間魔法以外は使えないようね」
ソフィアは言った。
「魔法が出ないとただの中二病みたいだな」
アリステアはそう言った。
「確かに…」
テオドールは冷や汗をかいた。
「ガブリエルは何を言ったのかな?ダーク・メテオ(笑)」
「恥ずかしいから何も言うな」
ヴィクトリアはガブリエルを揶揄った。
「お前ら準備は良いか」
「ああ」
ガブリエルはそう言い、みんなは空間魔法を使い自分の武器を出した。
「行くぞ…」
ガブリエルがそう言うとみんな武器を構えた。
「首を切り落としてやる」
ヴィクトリアがまず最初に切り込んだ。優一は左手に持った剣で防いだ。
(優一はこっちを見ていない)
透かさずカミラが剣を 振るったが、優一は右手の剣を逆さに持ち、剣を防ぐ。
「………」
優一は左手の剣に力を入れ、ヴィクトリアを振りはらった。そして左手に持った黒い大剣をカミラに斜め下に振り下ろそうとする。
「ギィッ」
カミラに向けて振り下ろした剣はガブリエルが防いだ。
(今だ)
優一は二人の剣で塞がっている。
「おらあっ」
ドレイクは自慢の右手のパンチを優一の顔面に繰り出した。
「………」
優一はしゃがみ込み、それを避けた。優一は逆さに持っていた大剣を元に持ち直し、優一は右回転し、黒い二本の大剣をぶん回した。
「ううっ」
ドレイクとガブリエルとカミラは黒い大剣に当たり弾き飛ばされた。
「これが無かったら危なかった」
ドレイクはそう言った物とはルビウスの首飾り。自分を害する魔力はすべて無効化する物だ。
ここにいる黒十字騎士のメンバーは優一対策に身につけていた。だが黒十字騎士に配られたルビウスの首飾りは複製品だ。本物とは違うので優一の黒い大剣はじりじり二ならなかった。
(優一の注意が逸れてる今なら)
優一の後ろに回り込んでいたソフィアは優一の首を刈り取ろうとしていた。
「………」
(こいつ、後ろに目があるのか?)
しかし優一はソフィアの剣を左手に持っている剣で後ろ見なずにガードした。
「がああっ」
次の瞬間、優一は右手に持っていた黒い大剣を右回転し横に振り回した。ソフィアは黒い大 剣に当たり、弾き飛ばされた。ソフィアは黒い大剣の打撃で口から血を出した。
「ソフィアあああっ」
テオドールは叫び、優一に剣を振るった。優一はそれを全て避け、テオドールを剣の勢いで吹き飛ばした。
「攻撃をやめるな」
シャーロットとアリステア、エレノアは僕に剣を振ってきた。僕はそれを受け止め、弾いた。
「邪魔だ、退け」
紫のオーラを纏ったヴィクトリアは剣を振り下ろした。身体からも紫の雷が流れ、剣にも流れた。
「………」
優一は激しく振るわれる剣撃を黒い大剣で受け流した。
「今よ」
アリステアとエレノアは優一の両腕にしがみ付き、優一の動きを止めた。
「よくやった」
「ダナシス・ネァイリング」
ヴィクトリアの魔力を剣に流すことで剣の斬撃の威力を上げた。剣からは紫のオーラが流れた。優一に斬撃を浴びせようと剣を振り下ろした。
「………」
優一は自分を中心に円形の防御バリアを作り出し、ヴィクトリアの攻撃を防いだ。
「はああああああああっっ」
ヴィクトリアは剣をバリアで防がれるが、諦めてはいなかった。ヴィクトリアは叫び、優一のバリアを斬ろうとした。
「オーバー」
ヴィクトリア叫んだ。ヴィクトリアの剣から流れ出るオーラは紫から緑に変化した。ヴィクトリア自身、ここで自分の力の強さが上がるとは思ってもみなかった。
剣と身体に纏わせる事の出来るオーラの強さは順番が決まっている。オーラの強さは次の順番で強くなる。まず初めは青色、その次に強いのは紫色、それより強いのは赤色か緑色になる。赤色か緑色かは分岐するのでどちらになるのかは分からない。最後は白色、まだ誰もその到達点には達したことが無い。これらのオーラは修行すると身につく。
「………グッ」
優一のバリアはヴィクトリアに破壊され左腕は切り落とされた。エレノアは優一の腕が切られる瞬間回避した。優一の左腕と黒い大剣は地面に落ちた。
「みんなやったぞ」
テオドールは喜んだ。為す術がなく世界が滅亡するだろうとみんな思っていたが、勝機が見えてきた。
「大丈夫か、ソフィア」
「大丈夫よ」
アリステアは心配した。
「今度は、全員で攻撃だ。全員で一斉に攻撃すれば奴も一溜まりもないだろう」
ガブリエルはそう言った。
だがしかし黒十字騎士全員は目にすることになる希望から絶望にたたき落とされるその瞬間を。
「暗黒解放:死と滅亡の運命」
優一は唱えた。空に浮かぶ大量の魔力の球体から魔力が優一に向かって注ぎ込み、優一の腕を治した。優一は浮いているかどうか分からない位に宙に浮き。足はつま先立ちをし、浮いていた。優一を中心に黒い魔力は流れ込み、球体となり優一を包み込んだ。
「………」
黒い球体は壊れた。優一の頭の上には黒い天使の輪が浮かんでいた。黒い二本の大剣からは黒い魔力が漏れ、身体から黒いオーラが漂った。
「何だよ、あれ…。やばくねえか」
テオドールは言葉を紡いだ。
「もう終わりね、私達」
エレノアがそう言うとみんな戦う気が薄れていくような気がした
「まだ、諦めるな」
「私達はこの世界を守るためにここに来たんだろ」
カミラがそう言うと、みんな何だか力が湧いてくるようだった。
「そうだ。俺たちは最強の黒十字騎士だぞ」
ドレイクは自分を鼓舞するように言った。
「奴を殺すにはみんなで一斉に攻撃するしかない」
「行くぞ」
ガブリエルがそう言うと、黒十字騎士、全員が優一に囲うようにしてきた。
「………」
黒十字騎士は走り出し、優一の周りを囲うようにしてきた。
「死ねえェェェェェェ」
ヴィクトリアは真正面から剣を振り下ろしてきた。優一はそれをいなし、剣で斬撃を受け止めた。ヴィクトリアの攻撃は止まることを知らない。ヴィクトリアに纏う緑のオーラが輝きを放っていた。
「……くっ、…っ、……っ」
優一はヴィクトリアの剣撃を受けていたが、反撃に出た。優一の二刀流の連続の剣撃にヴクトリアは押されていた。優一は幽霊のように宙に浮いていたので舞うかの如く、連撃を繰り出した。ヴィクトリアは押されていた。周りも共に戦いたいが戦いに入る隙が無かった。
「どはあっ…」
優一は左手に持った剣を振り上げ、ヴィクトリアの剣を弾き飛ばした。そして右手の黒い大剣でヴィクトリアの腹に剣を打つけた。ヴィクトリアの首に掛けていたルビウスの首飾りの複製品は粉々に砕け散り、ヴィクトリアは遠くに弾き飛ばされた。ヴィクトリアは意識を失った。
「一人で先走るからだ」
ガブリエルはそう言い、黒十字騎士の面々は協力して優一を倒すために剣を振り下ろした。だがいくら数が集まろうと優一には意味が無かった。
「………」
次々から来る剣撃を黒い大剣で受け、一人、また一人、黒い大剣で相手を薙ぎ倒した。
優一は黒十字騎士、全員倒した。
「みんな、生きているか?」
今にも息絶えそうなか細い声でテオドールはみんなに言った。
「ああ、生きてるよ。あばら骨がズタズタだけどな…」
ガブリエルはそう言った。
「お前、それやばいじゃん」
テオドールは言った。
「このまま伏せてようぜ。誰かがこっちに向かっている。膨大な魔力を感じる」
テオドールはそう言い、「ああ」とだけガブリエルは答えた。
「やっと辿りつけましたね」
黒い魔導服を着た女、ルナはそう言った。ルナは大人の姿でいた。
「優一、来たよ」
悲しそうな顔をしたエリナはそう言った。エリナは黒いドレスを着ていた。
アリアとシエラも武装していた。
「魔力固定、双極」
エリナの両手に黒い大剣が出現した。
「行くぞ」
アリア達は武器を構え、優一に向かって走り、剣を振り下ろした。
「…………」
優一はアリア達と剣を交えた。
「……っ、……っ。があっ」
ルナに狙いを定め、剣を振った。ルナは剣を普段振ることが無いので押されていた。優一は容赦なく、ルナに腹蹴りし、ルナは吹っ飛んだ。
「優一!」
シエラはルナがやられたことに激昂した。シエラから振り下ろされた剣を左手に持った黒い大剣で受け止め、右手に持っている黒い大剣で振りはらい、シエラも吹き飛ばされた。
「………」
アリアとエリナは連携し、優一を倒そうとした。
「………、人道羅刹」
「グッ…」
アリアは鋭い斬撃を繰り出してくるが、しかし優一相手にアリアは本気になれなかった。だから隙が出来た。優一はアリアの剣を力で弾くとアリアはバランスを崩した。優一は二本の黒い大剣を捨てると、アリアの腹に拳を打つけた。アリアは吹っ飛ばされた。
「引き寄せる」
僕の手に黒い磁力が流れ、二本の黒い大剣が反応しこちらに引き寄せられた。
僕は黒い大剣を手に取った。
「………」
優一とエリナは剣を交えた。優一は力でエリナの黒い大剣を弾き飛ばした。
「ううっっ」
エリナは剣を弾かれ、優一の黒い大剣が振り下ろされエリナを真っ二つにしそうになる。エリナはガードしようと左手に持っていた黒い大剣を地に落とし両手で自分を守ろうとした。
(お父さん、だめえええええええ)
優一はどこからか分からないが声が聞こえた。
優一はピタリと止まった。エリナはもうダメかと目を瞑っていた。エリナは何も起こらなかったので恐る恐る目を開けた。
「………」
優一は涙を流していた。
「もう、疲れた」
優一はぽつりとそう言った。
「そうだね。疲れたよね」
エリナは涙を流しながら優一の顔を触った。
「帰りたい」
虚ろな目はいつもの優一の目に戻った。
「うん。帰ろ」
エリナの優しい言葉で優一の涙は止まらなかった。僕達は戦ったこの場所から自分の家に戻った。この戦いで誰も死ななかったのが救いだった。僕は迷惑を掛けたので黒十字騎士のみんなに謝り、僕は黒十字騎士をやめようとしたがやめることにはならなかった。僕は意識が無かったとはいえ、ひどいことをしてしまったのでアリア達に謝った。




