13話 至福の朝
「はあ、もう朝か…」
僕はベットから上半身を起き上がらせて、目を擦った。
僕の隣にはエリナが枕を抱え、裸でうつ伏せで寝ていた。
「可愛いな…」
僕はエリナの髪を触り、エリナの耳も触った。
「んっ…、起きたの?」
エリナは掛け布団を持ち、上半身を起き上がらせた。
「朝食作るから待ってて」
エリナは側にある服を着て朝食を作りに部屋を出た。
「………」
僕は服を着て机の前に立った。机の上に置かれていたのは本だった。この本は深淵の書。 カナエの持ち物で石化する前に地面に落としたらしい。
石化したカナエを外に放置するのもアレなので、僕の家の空いている部屋に置いた。
(深淵の書…、自分はどこから生まれたか知ることの出来る魔導書)
僕は深淵の書の中身が気になり、本を開いた。
「があああっ」
僕は深淵の書の中の文字を読んだ。頭に映像が入り込んでくる。自分の過去の映像が…。
次の瞬間。僕は地球を遠くで見ていた。僕は光の球体の中にいた。隣に目を遣るともう一人、女の子がいた。
辺りを見回したが僕とその子以外誰もいなかった。その女の子は僕と目が合うと微笑んだような、そんな気がした。
「うわああっ」
僕は目を覚ますと、さっきの映像は無くなっていた。
(先のは何だったんだ?)
僕は深淵の書を燃やすことにした。この本は誰も読んではいけない。そんな気がした。
僕は外でこの本を燃やし、家に戻り僕は朝食を取った。
黒十字騎士の定例会があるため、僕は家を出て向かった。
僕は城に辿り着いた。
「それでは定例会を始めます」
シャーロットはそう言い、定例会は始まった。
「まず始めにヨミ、エルドラドを始末してくれてありがとうございます」
「フェリクスは皆さんのご存じの通り、エルドラドに殺されてしまいました」
「フェリクスは黒十字騎士の中でも正義感の強い人物で人々に慕われていました。とても…、惜しい人物を無くしました」
「ああ」
シャーロットはそう言ったので僕はそう答えた。皆、頷いた。
「今日は珍しく黒十字騎士、フェリクスは死んだが十名全員揃っているじゃないか」
アリステア・エヴァンズはそう言った。
「それもそうだな。珍しい」
テオドール・ルーズヴェルトはそう言った。
「ここに全員集まったのは不吉な兆しがあったからです。貴方たちはそれを察知したから
来たんでしょ」
エレノア・ガルシアはそう言った。
「そうなのか。私はなんとなく来ただけだから分からなかった」
アリステアはそう言った。
「俺も分からなかった」
テオドールはアリステアと同じくそう答えた。
「う、うん」
シャーロットは咳払いをした。
「話は変わりますが、フェリクスが死にましたので後継者をどうするか決めたいと思います」
シャーロットはそう言った
「誰か候補はあるのか?」
ガブリエル・エルサレムはそう言った。
「………」
黒十字騎士と王、全員が黙った。
「無いようだな」
ガブリエルはそう呟いた。
「バンッ」
部屋の扉が開いた。
「私を黒十字騎士の一人にしてください」
アルス・ウィリアムズは強い意志でそう言った。この男は王女と婚約している騎士だ。
「ああん」
「ここはお前が入ってきて良い場所じゃないんだよ」
ガブリエルは不機嫌な面持ちでそう言った。
「話を聞いたところ、他に候補はないと見受けられます。僕を黒十字騎士の一人にして下さい」
アルスは諦めず懇願した。
「いいんじゃないか」
僕がそう言うと、静まり返った。
「俺は反対だ。王女の婚約者だからといって優遇するわけにはいかない」
テオドールは反対した。
「俺も反対だ」
ドレイクはそう言った。
「まあ、お二人さん。ヨミがいいっているからいいじゃねーか」
(面白い事になりそうだ)
ヴィクトリア・レイノルズは僕の意見に賛同した。
「ではアルス・ウィリアムズを黒十字騎士の一員に加えます」
シャーロットはそう言った。
「最後に。最近、魔王軍は勢力をつけ、王都を脅かしています」
シャーロットは事実を伝えた。
「魔王は私が殺したはず…」
ソフィアは驚いた様子だった。
「魔王はどうやらまだ生きていたようです」
「厄介だな」
シャーロットの言葉を聞いてテオドールはそう言った。
「魔王は俺が殺す」
僕はそう言い放った。
「そ、そうですか…」
シャーロットはそう言った。
「私も手伝おうか?」
カミラ・オーウエンズは僕にそう言った。
「いや、大丈夫だ」
僕はそう言った。
定例会は終わった。その後、ヴィクトリアはアルスに何かを耳打ちした。僕はそれを見て嫌な予感がした。
定例会から一週間が経った。
「ふざけるなあああああああ」
アルスはそう叫んだ。
「お前がリアと寝ていたのは見ていたんだよ」
「………」
ドレイクは黙った。リアはアルスと婚約している王女の名前だ。
「リアは色んな男と寝ているんだよ。お前が種なしで子が成せないからなあああ!!」
「殺してやる」
ドレイクの言葉でアルスは激昂した。アルスは他の兵士二人に腕を掴まれ押さえこまれていた。
「いやあー、気持ちよかったなあ。俺の巨体でベッドでギシギシしてお前の女すごい喘いでいたよ」
「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる」
「やれるもんならなあー」
「離せ」
アルスは兵士の拘束を振りほどいて、携えていた剣でドレイクに向けて振り下ろした。
「がはっ」
ドレイクは左手でアルスの体を殴り飛ばした。
「お前の女、大人しい顔してものすごいエロいんだぜ」
「リアのイクところ見たことあるか? 無いよなああ。おまえの逸物じゃ、満足させられないよなああああああ!!」
「うわああああああああああああああ」
アルスはドレイクに向かって走った。
「がははははは」
ドレイクはまたアルスを殴り飛ばそうとした。
「ぐわああああああああああ」
アルスはドレイクの拳を避け、流れに沿って手から腕へと腕を切りつけた。
「ぐっ」
ドレイクは腕から首にいく剣の刃を間一髪、後ろに移動することで避けれた。
「くそがあああああああああああ」
ドレイクは吠えた。
「その辺にしたらどうだ」
僕は騒ぎを聞きつけてここに辿り着いた。
「ヨミ、お前もこいつに何か言ってやれ。黒十字騎士同士の決闘は違反行為だ」
ドレイクは言った。
「ドレイク、無闇に挑発したお前が悪い」
「ふざけるな。お前も王女と関係持ったことがある癖に」
ドレイクは僕にそう言った。僕を巻き込む気だ。
「嘘ですよね!レッドフィールド卿」
アルスは信じられない様子だった。
「悪いなアルス。本当の事だ。お前が種無しだから関係を持った。王からの命令でな」
「他にも大勢、王女は関係を持ってるから、俺だけじゃない」
僕はそう言った。
「あっ、あ、あ、あ、ああああああああああ」
アルスは壊れた。
「壊れちまった。がははははは」
ドレイクは喜んでいた。
「左手のお返しだ。死ね」
ドレイクは涙を流し壊れたアルスを殴り殺した。
見物人の中に僕の知り合いがいた。
「ヴィクトリア」
僕は名前を呼んだ。
「なんだよ」
「お前だろ。アルスを焚きつけたのは」
僕は責めようとした。
「だから何? 私が悪いっていうのか?」
「人をおもちゃ扱いするな」
僕はそう言い諭した。
「お前も王女をおもちゃ扱いしたくせに」
ヴィクトリアは笑いながらそう言った。
「もう、いい」
僕はそう言い、その場を去った。




