117話 暗黒大景
「ハル!来い!!」
ハルと僕は互いに向かって行った。
ガンッッ!!!
ハルは右手の盾を僕に向けて突き出ながら突進した。僕はハルの盾の攻撃を拳で受けた。
「おらあああっ!!」
ガッガッガッガ。
ハルは身体を回転させ両手に持つ盾をぶん回した。僕は後ろに後ずさりしながらガードの姿勢を取り自分を守る。
「ぐらあああああっ!!」
ガキンガキンガキンガキン。
ハルは防御の姿勢を取ってる僕に両手の盾での攻撃をする。
(硬い!なら!!)
ハルはしゃがみ僕の足に目掛けて両手の盾での攻撃を打つけようとした。
「!」
だが僕はジャンプし盾の攻撃を避けた。
「その盾をそんな風に使うんじゃねえ!!」
両手の手同士を握り、上から下へ重い拳をハルの背中に振り下ろした。
「がああああっっ!!」
ハルは拳を叩きつけられ、物凄い力だったので地面が割れた。僕は後ろに移動した。
「うがあああああっ!!」
ハルは血を流しながら僕に向けて盾の先端での攻撃を仕掛けてきた。
「隙を見せたな」
「!」
僕はハルの盾攻撃を躱した。僕が避けたことで力の行き場が無くなり、隙が生まれた。
「発勁!!」
そしてハルの横腹に素手での打撃を繰り出した。
「がああっっ!!」
ハルは弾き飛ばされた。
ズズズズズズ。
ハルは盾を地面に打つけながら勢いを殺した。
「装備破壊」
ハルは片方の盾を地面に突き刺し僕に手を向けた。僕はガラスのように割れた。そして僕は動けなくなった。
「神速!!」
ハルは盾を再び握り、物凄いスピードで僕の前に来た。
「双盾連打」
ハルは無防備な僕の身体に 両手の盾を何度も打つける連続攻撃を繰り出した。
「があああっ!!」
僕はこの攻撃を無防備な状態で受けた為、大ダメージを受け血を吐いた。
この攻撃で鎧は砕けボロボロになった。僕は最後の攻撃で吹っ飛び、地を転がった。
「決まったな」
「弱すぎ」
ハルの元に仲間が集まった。
「ん?何だ」
僕は立上がった。
「ボロボロなのにまだやるのか?」
仲間の一人が僕を見てそう言う。
「なあ、ハルよ。お前は分かってないから俺が教えてやる」
「………」
ハルは黙って聞く。
「母さんがお前の為に剣では無く盾二つを作った理由はな、お前が剣で人を殺さず二つの盾でこの世界で暮らす人々を守る存在になって欲しかったからだ」
僕はアリサの思いを伝えた。
ハルは過去を思い出す…。
地球全体が見える暗い場所で一つの光の球があり、その球体の中でアリサとハルとハルの妹のアキの三人で地球を見渡していた。
「ハル、貴方の為に装備一式作ったの。貴方がもし戦う事になったらアキや弱い立場の人達をちゃんと守ってね。約束よ」
「うん」
ハルはその時は幼かったから深くは考えていなかったが頷いた。
「ハル。お前はそんな母さんの思いを無下にするのか」
僕は自然と涙を流し、男泣きしていた。
「うわ、また泣いているよ」
「格好わる」
「母さんの思いとかwくだらねえww」
「「クスクス」」
「おいおい皆、余り笑ったるなよ」
ゲラゲラゲラゲラ。
皆、俺の言葉に笑った。僕は拳を握りしめ、その場に立っていた。
「笑うな…」
「あ?何だって?」
「俺の嫁を笑うんじゃねえ!!!」
僕は耐えきれず叫んだ。
「あははははは。俺の嫁を笑うんじゃねえ、だって」
ゲラゲラゲラゲラ。
僕は笑われた。
「余り嘗めるなよ、小僧共。ぶっ殺してやる」
「暗黒咆哮・V2!!」
僕は叫んだ。空気中にある無数の膨大な魔力が僕を中心に集まる。僕の身体は少し浮かび、魔力は僕に向かって流れ、包み込み、深い黒い渦のような球体となった。黒い球体を中心に赤い脈動が放たれる。
そして球体は割れ地面に破片が落ちた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。僕の姿は変わり深い赤色の鎧を身に纏った姿となった。眼の光りは失われ冷たい目となった。
「暗黒大景」
僕は両手を地につけ獣の姿勢になり唱えた。すると僕の両手両足の指先から黒いオーラが流れ出て煙のように上に上がった。
「あーあー。演出が激しいなあー」
一人の男がそう言い前に出る。
「ライ」
仲間の一人が男の名前を呼ぶ。
「其奴は俺がやるからお前らは見ておけ」
男はそう言い、身体から雷を発した。
「おっさん、死ねえええええエええええ」
男は眼にも止まらぬ速さで僕の方へと向かって行った。そして僕に向かって鋭い突きが来る。
「暗黒の衝撃」
パアン!!!!
何かが弾ける音が鳴り響いた。
「ん?あ?」
攻撃された男は理解が追いつかなかった。男は顔面に優一の拳が炸裂し、弾けた音が鳴ったのだ。
「あ…」
男は後ろに倒れ絶命した。
「野郎、やりやがった」
ハルの仲間達はざわめく。
「おい、どうするんだよ。ライはこの中でも上位に入る位、強いんだぞ」
「なあ、ハル。どうするんだよ」
「なあ!!」
仲間の男はハルに聞いた。
「足手纏いは要らない。あと母さんを笑うな」
ハルは深い赤色の火の刃を仲間の後ろに作り出し、後ろから貫いた。
「「がああああっ!!」」
ハルの仲間は血を吐いたそして地に伏せた。
「裏切るの…?」
仲間の一人の女が聞いた。
「俺には仲間なんていない」
ハルはバッサリと仲間を切り捨てた。




