114話 信念
過去の回想は終わる…。
「お前、名前は何という?」
僕は父を鎖に繋ぎ私物化している人物に聞いた。
「私はラルカード・ロボン。貴方が最も恨む一族の一人ですよ」
男は答えた。
「ロオオオオボオオオンンンンンンンン!!!」
僕は怒り狂い叫んだ。過去の記憶が蘇った。
俺は母さんが死んだ後、ロボンの一族を皆殺しにした。どうやらその子孫は密かに生き延びていたらしい。
「殺してやる。今すぐに!!」
黒い大嵐が僕を包む。僕は黒い鎧と四大死宝と文字が刻まれた黒い首輪を身につけた。
「ロボン、死ねえええええ!!」
僕は鋭い鉤爪をロボンに向かって行き、刺して殺そうとした。
「!」
僕の父さんが僕の攻撃を手で止めた。
「離せ!」
「何でだよ…。何で父さんが止めるんだよ」
僕の手首をしっかりと父さんは握り、僕の動きを止めた。
「其奴は俺たち家族を滅茶苦茶にした奴の子孫なんだぞ!」
「なあ、父さん離してくれよ。離してよ!!」
僕は涙を流して膝を落とした。
「おい、一発キツいのお見舞いしろ」
「!!」
ロボンはそう呟くと、父さんは僕の腹に勢いよく蹴りを打つけた。僕は吹っ飛んだ。
「があああっ!!」
僕は地面に手を突き、血を吐いた。凄く重い攻撃だった。
「おい、クロム。街を破壊しろ」
ロボンは僕の父、クロムに命令するとクロムは街を破壊し始めた。
「やめろ…。やめてくれ…」
僕の父が街を破壊すると街の人々は逃げ惑った。僕はその光景を見て言葉を紡いだ。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!」
僕は大きな火の球体を父さんに向けて放った。父さんは火の球体を避けた。
「!」
「避けろ!!」
火の球体を放った先に小さな子供がいた。僕は危ないと思い叫んだ。
「!」
ドオン!!
僕の父は物凄い速さで小さな子供所まで走り、子供を包み込む体勢になり、僕の攻撃を身を以て防いだ。
「………」
父さんは小さな子供を守った。父さんの背中は火の球体の所為で黒くなっていた。
俺は思い出したあの言葉を…。
(ウル、お前は他人を守れる男になれ)
「ううううっ…」
僕は膝を突きながら泣いた。自分の力の無さに…。父さんはどんな姿になっても自分の信念を貫いたんだ。
「お母さあああん」
小さな子供は自分の母を見つけ走って行ってしまった。
僕は過去を思い出した。
あれは家族でピクニックに行った時の事だ。
僕と父さんと母さんは草木が生い茂る森を抜けた開けた場所で布を広げ僕を真ん中に座り、母さんの手作りのサンドイッチを食べた。
「ウル。サンドイッチは美味しい?」
「うん。とても美味しいよ、母さん。お父さんはどう?」
僕は父さんに聞いた。
「ああ、とても美味しい」
「良かった」
母さんは父さんの言葉にとても嬉しそうだった。
食事を食べ終え、三人は景色を見ていた。
「なあ、ウルよ。お前は成長したらどんな人間に成りたい?」
「どうしたの?父さん、急に」
「何となく聞いてみたかっただけだ」
父さんはそう言った。
「うーん。僕は父さんみたいに成りたいな。父さんが僕と母さんを守るために一生懸命働いて守っているように僕も大人になったら自分の嫁と子供を守れる人間になりたい」
「家族を守るのも大切だが、他人も優しくする事も大切だ。お前は他人を守れる男になれ」
「うん」
「じゃあ、父さんと約束だ」
僕と父さんは手を握って誓った。
「父さん…」
「何だ?」
「いつも家族の為に働いてくれてありがとう」
「ああ」
「母さん」
「ん?」
「いつも美味しい料理を作ってくれてありがとう」
「うんっ」
「父さんと母さんは僕の誇りだ。僕は父さんと母さんの元で生まれて来て良かった」
僕は感謝を伝えた。
「「ウル!!」」
「お前は…、俺の…、誇りだ!」
「ウル。愛してるわ」
父さんと母さんは涙を流していた。そういう僕も涙が止まる事はなかった。




