106話 火祀火術:火景火羅万象・火刃
辺りを見えなくしていた霞は消えた。神威は無傷であった。
「ん?何だ?」
「おかしいな。術が発動してない」
僕は驚いた。
「火刃」
「!」
「がああっ…」
僕はそう呟く神威の身体に無数の深い赤色の火の刃が内側から出現し、貫通した。火の刃は燃えていた。
「ああ、発動した」
「火羅万象に組み込んでいた筈なのにおかしいな」
僕は昔、火羅万象に火刃の技を組み込んでいた。火羅万象を使うと火刃の技が後から出るようにしていた。それなのに出なかった。
「火刃」
「………」
僕は唱えても何も起きなかった。
「偶々、出なかったのか。組み合わせした技の繋がりが薄くなったからか」
「まあ、いい」
僕はそう言い、苦しむ神威を見ていた。
「水神結界!!」
神威は叫び、水の結界を纏い、深い赤色の刃を水で消した。
「冷水の渦」
「!」
神威は刀印を左手で結ぶと地面から水が溢れ出し、僕を中心に水が纏わり、水の球体となった。僕は何とか水の渦から抜け出そうと藻掻いた。
「そうはさせない」
僕の身体は浮かび上がり、どんどん水の渦は大きくなっていった。
「水縛り」
僕は完全に水の球体に閉じ込められた。水の球体は渦のように流れているのでとても泳いで脱出するのは困難であった。
「黒竜の大嵐」
自分を包み込む黒く冷たい大嵐を作りだし、水を弾いた。僕は水の渦から抜け出せる事が出来た。
「黒竜の氷柱」
僕は間髪入れず唱えた。先、弾いた水をを無数の氷の柱に変えた。そして神威に向かって放った。
「くっ………」
神威は水のバリアでは氷柱は防げないと思い、降り注ぐ無数の氷柱を避けた。
「どうだ?良い運動になるだろ」
「ハッハッハッハッハ」
僕は神威を嘲笑った。
僕は氷柱を打ち終え、地に降りた。
また地面から水が溢れ出した。溢れた水は先よりも多かった。」
「水神激流・水景」
神威は手を組み、唱えると神威の後ろから深く青い大波がこちらに向けて押し寄せて来た。
「黒竜の吐息」
僕は地面に手をつき獣のような姿勢で構え、大きく息を吸いそして口から広範囲の黒い炎を吐き出した。
深い青色の大波と黒い炎が打つかりあった。力は互角であった。
「「………」」
神威と僕は互いに見つめ合っていた。
「俺は自分の術に拘っていた。父さん、アンタに勝つにはこの術を使うしかないな」
「大禍津日神」
神威は両手の平を合わせ唱えた。神威は大きく真っ黒な四つ足の化け物の姿となった。
「ほう、この術か。どうやら僕を本気で殺しに来ているようだな」
僕は化け物となった神威を見て言葉を発した。
「!」
化け物となった神威は口を大きく開け、真っ黒な魔力の粒子を集め、砲撃を放とうとしていた。
「仕方ない、この技をお前に見せてやろう」
僕がゆっくりと両手で印を結ぼうとすると僕と化け物の周りの地から深い赤色の炎が禍々しく天高く燃え上がっていた。
「火祀火術:火景火羅万象・火刃」
僕は手の平を合わせ唱えた。大きく黒い化け物となった神威の周りに無数の大きく深い赤色の火の刃が出現し、身体に火の刃が一斉に刺さった。 無数の火の刃は禍々しく深い赤色で燃えていた。
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
化け物は身体を無数の火の刃で貫かれ痛みで悲鳴を上げていた。化け物が集めていた魔力の塊は飛び散り、消え失せた。化け物は立つ力が無くなり、地面に伏せた。




