101話 氷の中に封印された少女
「メアから何も連絡が無いので僕はメアを探しに世界を回った。十数年後、僕はようやくメアを見つけた。メアは南極の奥地に氷で封印されていた。僕はどうにかしてメアを助けようとするが力の無い僕にはどうする事も出来なかった」
「僕は寒さを凌ぐために氷河の洞穴に入り、火を起こし、身体を温めた。そうしていると足音が聞こえ、大男が現れた。大男が私も温まって良いかと言うので僕は良いよと言った。大男は僕の言葉にありがとうと感謝し、洞穴に入り火で暖まった。大男と私はたわいも無い話を始めた。大男は雪男の子孫でこの氷河に住んでいるらしい。僕みたいに客が来るのは珍しいそうだ。何でここに来たのか聞かれ、僕は娘を探しに世界を回り、ようやく見つけたら娘が氷で封印されているからどうにかしようとしていると大男に話した。大男は僕の娘が何故、氷漬けになっているのか訳を話し始めた」
「十数年前のある晴れた日、大男は狩りをし、アザラシを寝床へ持ち帰ろうとしていた。凄い轟音が聞こえたので何が起きたのか見に行くと人同士で戦っているのを目撃した。大男はひっそりとと戦いを見ていた。七人の男と女が混じったパーティーと一人の女が戦っていた。一人の女と言うのはその氷漬けにされている紫髪の女であったそうだ。一人の女は力で七人を圧倒するがやはり数では負けているが故、段々と押されていった。大男から見れば一人の女を大人数で袋叩きしている弱い者虐めをしているように見えたそうだ。大男は何も出来る事が出来ず、ただ見ている事しか出来なかった。紫の女は最終的に氷の中に封印され、氷の溶けないこの場所に運ばれたそうだ」
「僕は大男の話を聞き、どんな奴が僕の娘を袋叩きし虐めたのか特徴を聞いた。特徴を聞くと誰がやったのか見当が付いた。メアを袋叩きしたのは僕と血が繋がった息子や娘達であった。僕の心の中は怒りで満たされ、今にも切れそうだった」
「数時間後、吹雪は止み晴れたので僕はメアを氷の中から助けようとシャベルで氷を割ろうとしたが氷は傷一つも付かなかった。僕が今回、受肉した時に上手く受肉出来なかったため力の大半を使えず、僕にはこの氷を溶かす事は出来なかった。僕は氷を破壊してメアを助ける事は諦め、次に受肉する時に助けようと思い、その場から立ち去った。僕は家に戻り、メアと栞を助ける方法を模索していた。僕は何年も一人で部屋に籠もった。僕のこの時の生涯はこれで終わった」
「これで話は終わり」
僕は話し終えた。
「何でお父さんの子供がメアさんを袋叩きにしたの?」
僕の娘は率直な疑問を僕に打つけた。
「本当の理由は分からないが、多分、メアが闇と一体となったからだと思う」
「メアと戦った奴の一人は神威と言って特に闇を嫌っていたからメアを排除しようとしたんだと思う」
僕は答えた。
「お前達、イアから昔話を聞いただろ。夢を壊すかもしれないが太陽の勇者ワタルもメアを袋叩きをした奴らの一人だ」
「………」
皆、僕の言葉を聞いて黙った。僕の娘達は涙を流していた。まあ、あれだけイアに太陽の勇者の話を聞いたんだ、仕方が無い。
「太陽の勇者、ワタルって何百年も前の人物だろ」
僕の息子は僕にそう言った。
「ああ、そうだ。」
「メアを袋叩きをした奴ら全員、不老となった者だ」
僕は息子の問いに答えた。
「ん、何だ?」
僕は小さい頃の姿のメアの姿をした闇に服を引っ張られた。
「付いて来いって事か…。」
「どこへ行くんだ?遠いのか?」
僕が立ち上がり聞くと闇は頷いた。
「エリナ、今日の僕の分の昼ご飯は無しでいいから、夕方には戻って来る」
僕はそう言い、闇と共に家を出た。




