100話 栞とメア
僕らは朝ご飯を食べ終わり、コーヒーを飲んで一息ついていた。
「お父さん!!」
僕の娘が僕を呼んだので僕は声のする方へ顔を向けた。
「どうした?」
「お父さん、こっち来て」
僕は娘にそう言われ、手を引かれ家の外に出た。
「みんな集まってどうした?」
「お父さん…」
僕の子供達が僕の家の敷地内の木が生えている場所に集まっていた。
「この木の後ろに小さい女の子が隠れているの」
僕の娘がそう言った。
「出ておいで」
僕は木の後ろに隠れているものにそう言った。
「………」
木の後ろから小さい女の子が出てきた。
「!」
木の後ろから出てきた女の子は小さい頃の僕の娘のメアだったから僕は驚いた。
「メア、どうしたんだ。お前は封印されていたはず」
僕がメアの両肩に手を置いて聞いた。メアは首を横に振った。
「そうか。お前はメアじゃないんだな」
僕がそう言うと、少女は頷いた。
「外で話すのもなんだしリビングで話そう」
僕らは家に入りリビングに集まった。
「お父さん、その子は誰なの?」
僕の娘はそう僕に言った。
「この子は僕の娘のメアの小さい頃の姿を象ったただの闇だ」
僕はそう答えた。
「闇って何なの?」
僕の子供が僕に聞いた。
「闇というのは人の心から生まれる、憎しみ、嫉妬、恨みなどの負の感情から生まれた物の事だ」
「僕の娘のメアは昔、闇と一体となった。だから闇が実体化した姿はメアの姿なんだ」
僕はそう皆に話した。
「何でメアさんは闇と一体となったの?」
僕の娘が僕に聞いた。
「話が長くなるが聞くか?」
「「うん」」
僕は皆に聞き、皆頷いた。
「じゃあ、話すね」
僕は話し始めた。
「昔、僕はこの世に受肉し、栞という女を口説き落し夫婦となった」
「栞は地味な顔をした女だったが僕はその地味な顔が好きだった。栞は僕に尽くしてくれるし質素な生活でも文句の一つも言わなかった」
「栞と生活していく中である日、栞が僕の子を身籠った。そして栞は女の子を産んだ。僕は生まれた子供にメアと名付けた」
「僕は栞とメアと一緒に暮らし、子育ては大変だが幸せだった。メアも大きくなり家族三人で支えながら暮らしていたがそう上手く行かなかった。ある日を境に栞の様子がおかしくなった」
「僕とメアは栞の話を聞いた。どうやら栞は自分の未来を知ったらしい、その未来とは栞は生を全うし、その後、地獄へ行く事になる未来だ。僕は栞が地獄行きになる事は知っていた。だからそれをなんとか回避させようとしていたがその方法は見つからなかった」
「この世界には欠陥が存在している。その欠陥とはどんなに現世で善行を重ねても何千万人に一人は絶対地獄へ行く事になってしまう事だ。何故、そうなってしまうのか世界を創った僕でさえ分からなかった。その何千万人に一人に栞は選ばれてしまった」
「栞は自分の未来に嘆き悲しみ、祟り神となってしまった。栞は化け物となり、全てをを破壊した。僕はそれを見かねて栞を封印し騒動を収めた。メアは何も出来ない僕を責め、家を出て行った」
「メアは母親を地獄へ行かせないようにする方法を見つけるため闇と一体化し、闇そのものとなった。闇と融合する事で世界中から情報を集める事が出来るようになった。
「僕は何年もメアが栞を助ける方法を見つけ帰ってくる事を信じ待っていた。だが何年待ってもメアが帰ってくる事は無かった」




