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1話 戦いの女神

 俺はこれから最強の敵である運命王と戦う。俺は奴に為す術無く一度負けた。何故、また奴と戦うって?それは俺には守るべき家族がいるからだ。奴を倒さなければ家族に危害が及ぶ。


 勝算はあるかって?それは戦って見ないと分からない。何故、運命王に負けたのかって?あの時は運悪くポンコツ装備で奴と戦う羽目になったからな、そりゃあ、負けるわ。でもホント死ななくて良かった。装備全部に装備者の運を上げる効果のある加護を付与していたから死なずに済んだ。


 俺はな、運命王に負けるのが変える事の出来ない運命だとしても俺は必死に足掻いて運命を変えてやる。戦いの女神よ、俺に微笑んでくれ。



 王都を出た所の荒野に一人の男が地べたに胡座(あぐら)をかき座って誰かを待っていた。


「そんな所で誰を待っているんだ?」

 白金の鎧に白金の見たことの無い黒い文字が刻まれた首輪を身に付けた僕は運命王の所まで歩きながら聞いた。


「お前…」

 運命王は立ち上がり、ハッと少し驚きながら言葉を紡ぐ…。運命王は既に戦闘形態となっていた。運命王は金の鎧を身に纏い、足は化け物みたいな禍々しい黒い三本の鉤爪になっていた。


「よお、クソ野郎」


「何故、生きている?俺はあの時、確実にお前を殺した筈だ」

 ああ、確かに。あの時、俺は運命王に心臓を一突きにされた。だが運を最高までに上げていた装備のお陰で何とか生き延びる事が出来た。面白半分で作った装備だが役に立った。


「残念。死んでませんでした」

 僕はふざけたような口調でそう言った。


「生きているのなら、死んだ事にしておけば戦わずに済んだ物の…」

 運命王は溜め息を吐くと呆れた様子を見せた。


「まあ、一人でここに来るとは大した度胸だ」

 運命王は褒めた。


「一人じゃねえ…。俺の心には家族の皆がいる。だからお前は怖くねえ」


「手が震えてるぞ。俺が余程、恐ろしいか…」

 僕の手が震えているのを運命王は指摘した。


「ああ、そうだ。震え上がるほど恐ろしいよ。一度負けたからな」

 僕は自分の弱さを認めた。


「自分の弱さを認めるとは恐れ入った。ここに来て早々、負けを認めるか?」


「いいや、俺はここで負ける訳にはいかんのだ。家族がいるんでなあ、俺はお前と戦って勝つ!」


「そうか…。じゃあ、戦うとしよう」

「ああ…」

 僕と運命王は対峙した。


(俺は家族を守る!!)


「暗黒咆哮・V2 タイプ:シールド!!」

僕は叫んだ。空気中にある無数の膨大な魔力が僕を中心に集まる。僕の身体は少し浮かび、魔力は僕に向かって流れ、包み込み、深い黒い渦のような球体となった。


 そして球体は割れ地面に破片が落ちた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。僕の姿は変わり。僕の眼の瞳孔は黒く尖り、角膜は深い赤色になり、眼の光りは失われ冷たい目となった。


 僕の両手にはそれほど大きく無い、二つの白金の盾を持っていた。盾の形は上の部分が平らで両側は下に真っ直ぐで、下の部分は尖っている形だ。盾の裏の上の部分に盾を持つ為の持ち手があり、僕はそれを握りしめた。


 足は化け物みたいな禍々しい黒い三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪だった。足の鉤爪が地面に突き刺さっており、鉤爪のみで身体を支えていた。鉤爪は人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような禍々しい大きな黒い爪であった。


「ほう、あの時とは違うって訳だ」

 圧倒的強者のオーラを放ち、その場に佇む僕の姿を見て運命王は理解した。


「その盾が虚仮威(こけおど)しかどうか試してやる」


「はあああああっっ!!」

 運命王は両手に力を入れ、何かを作り出そうとした。両手に電気が散り、プラズマの玉を作り出した。


「おらあっ!!」

 運命王はプラズマの玉を僕の方へ投げた。


 ジジジジジジッ!!!

 プラズマの玉は物凄い速さで電気を散らしながら僕に向かって行った。


「!」

 僕は左手に握った白金の盾でプラズマの玉を弾いた。プラズマの玉は僕の左後ろの上空に飛んで行き、プラズマの玉は爆散した。物凄い音と共に爆散したプラズマが地面を削り取る。物凄い威力だ。


「その盾、中々の物だな。大体の魔法は弾かれそうだな…」


「じゃあ、拳を使うか…」

 運命王は構えた。


「来い!」

 運命王は僕を指で挑発した。


「!」

 僕は物凄いスピードで運命王に向かって行った。


 ガンッッ!!!

 僕は左手に持っている盾の先端で攻撃した。


「………」

 運命王は右手の掌でガードした。


 バリン!バリンッ!!バリン!!バリン!!

 僕は両手の盾で攻撃し運命王は拳を握り、僕の盾を弾いた。金属が打つかり合う音が鳴り響いた。


「ぐっ!!」

 僕の力に押され運命王は後ろに移動した。


「拳がボロボロだ」

 運命王は回復魔法を使い拳を回復させた。


「次はこれで行こう」

 運命王は空間魔法で金色の大剣二本を出し、握り構えた。


「さあ、始めよう」

 僕は運命王に攻撃を仕掛けた。


「!」

 運命王は僕の攻撃を大剣で防いだ。


 ギンッッ!!

 僕の盾を弾いた。僕はその反動で仰け反る。


「回転斬り!!」

 運命王は身体を右に二本の大剣と共に一回転し大剣をぶん回した。


「ぐっ!!」

 僕は右手の盾の持ち手を逆に持ち力を入れ攻撃を防御した。勢いを付けての攻撃だ。とても重く僕は左に弾き飛ばされた。


「がああっっ!!」

 僕は地面に転げた。


「クソっ。どんな腕力だよ」

 僕はそう吐き捨て立上がる。


(奴が持っている剣は重い。だからスピードで追い詰める!!」

 僕は物凄いスピードで向かって行き、盾を奴に打つけようとした。


 ギンッ!!ギインッ!!ギン!!ギン!!!

二つの大剣と二つの盾の打つかり合う音が鳴り響く。緊迫する戦闘の空気の中、お互いに攻防を見せた。


「おらああっ!!」

「!」

 大剣の力を利用し、僕は運命王の上を飛び、運命王の後ろを取ろうとした。運命王は視線を上げる。


「甘い!!」

 運命王は二つの大剣の持ち手を逆手に持ち、身体を回転させ二つの大剣をぶん回した。


「!」

 僕はぶん回された一つ目の大剣を何とか避けたが、二つ目のぶん回された大剣が迫り来る!!


(やばい死ぬ)

「がああああああっっっ!!!」

 僕は何とか盾で二つ目の攻撃を防いだ。僕は遠くまで弾き飛ばされた。


「今の攻撃を防ぐとは…」

「運がいいのか?それとも…」


「はあ、はあっ…」

 運命王は感心していた。僕は冷や汗を掻き、荒い呼吸を何とか落ち着かせようとした。先の攻撃、下手したら死んでいたぞ。


「どうやら盾での攻撃は止めておいた方が良いようだ」

 僕は両手に持っている二つの盾を地面に落とした。二つの盾は地面に突き刺さった。


 僕が両手の掌を合わせた。


火祟火術(かすいかじゅつ)火景火羅万象(かけいからばんしょう)(ぎょく)

 深い赤色の二頭の大きな龍の頭が僕の両側に現れた。


「全てを喰らい尽くせ!!」

 深い赤色の二つの龍の頭は地面を削りながら運命王に向かって行った。龍の頭は運命王に打つかろうとした。


円風(えんぷう)

「!」

 運命王はそう呟くと深い赤色の二つの龍の頭は運命王に打つかる前に風のような物で破壊された。


「………」

「驚いて言葉が出ないのか?」

 運命王は僕を見てクスリと笑った。


(盾、魔法での攻撃は奴には効かない。それなら!!)

 僕の身体を黒い嵐が包み込む。


「タイプ:ソード」

 二つの白金の盾は消え、一振りの白金の剣を握った。


「!」

 運命王は左手に持っていた大剣を後ろに投げ捨てた。


「どういうつもりだ?」

「ただの気まぐれだ」


「騎士道精神ってやつか?随分と舐められたものだな」

「別に舐めてはいないさ」

 運命王と言葉を交わす。


「そういえば互いに名を名乗っていなかったな。俺の名は優一・レッドフィールド。運命王、お前の名は何と言うんだ?」


「俺の名はクロム」

 運命王、クロムはそう答えた。


「名も名乗ったし、戦いを再開しようか」

「ああ」

 クロムは構えた。


「白金の剣:カノン。暗黒咆哮…」

 僕は剣を能力を顕現した。


「斬り裂け」

 僕は下に向けていた剣を斜め上に振り上げた。風の斬撃生み出し飛ばした。風の斬撃は地面を削り取りながらクロムに向かって行く。


 そして俺はクロムに向かって行った。


 フオン!!

 クロムは円風で攻撃を無にした。


「ああ、無になるって分かっていたよ」

 僕は剣を振るうが大剣で防がれた。


「オラオラオラぁっ!!」

 何度も剣を振り攻撃を繰り出すがクロムは軽く剣で防御した。


「これはどうだ?」

 防御だけでは無く剣での攻撃も繰り出す。

 互いに攻防し、剣同士が打つかり擦れる事で生まれる金属音が鳴り、火花が散る。


(間合いを詰めた)


「喰らい尽くせ!!」

 僕はクロムとの間合いを詰めたので風の斬撃を繰り出す為の言葉を放った。


(馬鹿な。自分ごと)

 僕は自分を巻き込んだ風による最大威力の攻撃を繰り出した。風は地面を削り取り、土煙が立ち込め轟音が鳴り響いた。


 僕は風の勢いで宙に舞い、一回転し地面に着地すると、左手の尖い鉤爪で地面を削りながら勢いを殺した。



「………」

 土煙は無くなった。クロムは先までの装備とは変わっていた。黄色の鎧を身に纏っていた。


(今ので理解した。俺は此奴には勝てない)

 僕は両膝を地に突け呆然としていた。


「ははは。俺には勝てないと理解したか」

 クロムはそう言い。僕の方へ、ゆっくりと歩いて来た。


「終わりだ。死ね」

 クロムは持っている剣を僕に振り下ろした。


「!!」

 クロムの振り下ろした剣は僕には当たらなかった。僕の息子であるテオが僕を庇い斬撃を受けた。テオの身体から血が噴き出す。


「あああっ…」

 僕は斬られたテオを受け止める。テオの身体からは血が沢山流れ落ちる。俺はテオに回復魔法を掛け治そうとするが無意味であった。


「とう…さん」

 テオは僕に向けて喋ろうとする。だが首も負傷しており巧く喋れない。


「今、治しているから喋るな」

「………」

 テオは僕の手を握り、首を少し振った。もう自分は助からないと悟ったようだ。


「とう…さん。たたかっ…てくれ…。かぞくの…だめに!」

 テオは僕の手を握り、眼で必死に訴えた。テオの眼を見ると涙を滲ませていた。


「分かった。テオ、分かったよ」

 僕がそう言うとテオは安堵した表情を見せた。そしてテオは眼の光を失い、眠りに就いた。


「………」

 僕はテオを抱え、何も言わずその場にいた。


「役立たずの息子だったのに最後に役に立つとは…」

 運命王クロムは少しばかり感心していた。


「息子を無駄死にさせた、可哀想なお前に良い言葉を教えてやろう」


「弱い奴は何も守れない」

「………」

 僕は運命王にそう言われても黙ったままだった。


「回復魔法を掛けるのはもう止めろ。其奴は死ぬ運命だ」


「死んだ奴に回復魔法を掛けてても生き返りはしない」

「黙れ…」


「ああ、もう勝手にしろよ」

 僕はずっとテオに回復魔法を掛けていた


「人は生まれる前から其奴が送る人生は決まっている。運命は其奴の役割だ。金持ちの者、貧乏の者、生きる者、死ぬ者。皆、人生を送る中でその役割を果たす」


「何が言いたい?」

 饒舌に語り出したクロムに僕は聞いた。


「運命は予め、生まれる環境で決まっているから運命を変えようとするのは止めろと言っているんだ」

 クロムは僕にそう告げた。


「何が悪いいんだよ…」

「あ?」


「何が悪いっていうんだよ。人の運命を変えるのはいけない事なのか?」


「貧乏で食べ物を真面(まとも)に食べる事が出来ない人。お金がなくて不自由な生活を送っている人。どう足掻いても人生が上手く行かず八方塞がりになってしまった人。人生が上手く行くかどうか分からない暗闇の中で努力を続けている人。聞いただけで胸を締め付けられるような人生を送っている人達はそのまま苦しい人生を送れってか?」


「ふざけるな!!皆、自分の運命を変えたくて日々頑張って歯食いしばって生きているんだよ」


「お前がそういうのなら俺がそんなクソみたいな運命、お前ごとぶっ壊してやる」

 僕の全部の指先から黒いオーラが流れ出て煙のように上に上がった。僕はテオが死んで涙を流しながらクロムを睨んだ。


「………」

 僕は優しくテオを地に置いた。



「俺は運命に抗う」

 僕は構えた。


「直線斬り!!」

 僕は物凄いスピードでクロムに向かって行き、クロムの胸に向けて黒く尖い鉤爪を突き刺そうとした。

「!」

 クロムは僕の攻撃に反応し左手で持ち手を逆さで剣を半分抜き、僕の尖い突きを止めた。


 キキキキキキ。

 爪と剣が擦れる音がする。


「ふんっ!」

 クロムは腕力で僕を弾いた。


「斜め切り!!」

 僕は弾かれた後、地面に着地し地面を蹴り、クロムに目掛けて飛び込み、右手の鉤爪で爪を立てクロムに目掛けて斜め上から斜め下を傷つける攻撃した。


(また同じ事を…)

 クロムは左手に持ち手を逆手に剣を持ったまま同じ攻撃を防いだ。


(弾いてやる)

 クロムは力を入れるその時…。

 僕はクロムの剣に向けての攻撃を手を引き止める。


「おっと」

 クロムは力を入れた瞬間に僕が手を引いた為、剣は僕の首へ向けて流れるように刃が向かった。


「何っ!」

 だが僕はその刃をしゃがみ避けた。クロムの刃はそのまま右に行き、隙が生まれた。


「回転斬り!!」

「がああああっ!」

 僕は上半身を右に曲げると同時に左手でクロムの身体を斬り、右手の黒い鉤爪を六時の方向に持って行き、そこから勢いをつけてぶん回し攻撃をした。黄色い鎧は砕けた。


「ははははは、最高だよ」

 クロムは後ろに移動し笑った。


「ヒーリング」

 クロムは回復した。鎧も元通りになった。


「ここまでやられるとはなあ…。お礼に面白いもん見せてやるよ」

「があああっ!」

 その瞬間クロムは消え、僕の腹に重い拳が打つけられた。僕は膝を落とし、片手を地に突けた。


「何だ?今のは…」

 僕は冷や汗を掻いた。


「あっははは」

「これはなあ、自分自身を雷と同一化させる事で出来る技だ。移動スピードは雷と同じ、大体の奴は眼で俺の動きを捉える事は出来ない」

 クロムは何度も周りを雷のスピードで移動し僕を煽った。


「まあ、お前の負けだ。優一」

 クロムは僕にそう告げた。


「そんな見せびらかして良いのかよ、運命王さん」

「何?」


「最初は見えなかったが、今ので少し見えたぜ」

「んな、馬鹿な。はったりか?」


「いいや。試してみれば分かる」

 僕はそう言い、構えた。


「じゃあ、お前が見えるかどうか試してやる」

 クロムは雷の状態でジグザグに移動しながら僕の方に向かって来た。


「死ねえええ、優一!!」

 クロムは優一の心臓に向けて突こうとした。だがその牙は届かなかった。


「何ッッ!!」

 僕はクロムの手を止めた。


「クソが、見えてるのか?」

 クロムは僕の手を払い除け、後ろに移動した。


「ならもっとスピードを上げてやる」

 クロムはスピードを上げた。


「これなら流石のお前にも見えるまい」

 クロムは僕の周りを目に見えぬ速さで移動して攻撃の機会を伺った。


暗黒流動(あんこくりゅうどう)!!」

 僕は獣の手のように指と指の間を開け爪を立てた。そして僕は身体を奇抜に動かし両手で振り払う動作をし、見えない風の刃を作り出した。


 風の刃は全方向に向けての広範囲攻撃なのでクロムに風の刃が打つかった。何もないこの大地に大風が吹き荒れた。


「何て頑丈な鎧」

 僕はクロムを見てそう思った。


「まあ、大味の技だから仕方ないな」


「斬り裂け!!」

 僕はクロムに向けて斜め上から斜め下に向けて立てた爪を振り下ろす動作をした。風の刃を生み出した。


「………」

 クロムは僕の攻撃を避け走り出した。


「そうか。まだ戦えるのか」

 僕はそう言い走り出すクロムに向けて風の刃を当てようと動作した。クロムの後ろには風の刃が迫り来る。クロムはスピードを上げた。


「斬り裂け!!」

 僕は風の刃を生み出し、クロムに向けて飛ばしたがクロムは全て避けた。


(もう駄目だな…)

 僕は攻撃を止め、その場に佇んだ。


「終わりのようだな。もう重々理解したろ。どう足掻いても運命には抗えないという事を…」

 クロムはそう言い、雷での高速移動を止めた。


「お前、どんな技でも防ぐあの技は今でも使えるのか?」

 僕は聞いた。


「あの技?円風の事か。ああ、今でも使える」

 クロムはそう答えた。


「何で先の戦いで使わなかったんだ?」


「ああ、この技を使うには条件があってだな。だから先は使えなかった」


「そうか…。今は使えるんだな」

「ああ、使えるよ」


「それなら今直ぐに、円風を展開した方が良いと思うぞ」

「どういう意味だ」

 クロムは聞いた。


「最強の術を使うから」

 僕は掌を合わせた。クロムはこれから来る攻撃を察知し円風を展開した。


「………」

 辺りの空気が変わり、空は黒い雲で覆われた。僕とクロムの周りは暗くなった。


火祀火術(かしかじゅつ)火景火羅万象(かけいからばんしょう)火刃(かじん)

 僕は唱えた。するとクロムの周りを全方位囲むように禍々しい無数の深い赤色の火の刃が現われた。

 火の刃は燃えていた。


「死ね」

 そして火の刃はクロム向けて飛んで行った。火の刃は無限に生成され、止むことは無かった。


 ギギギギギギギギン。

 火の刃と風のバリアが打つかる音が鳴り響く。


「何でもっと早くこの術を使わなかったんだろうな」


「この術は大きい化け物に対して使う技だから、すっかり使う事を忘れていたよ。ははは」

 僕はこの技を使った時点で勝ちを確信した。


「アンタの技が幾ら絶対防御のバリアだとはいえ、隙が全くないっていう事は無いよなあ」


「火の刃のスピードを上げて行けばアンタは捌き切れなくなる」

 無限に生成され飛んで行く無数の火の刃を見て僕はそう叫ぶ。


「セコい技だと思うよなあ。ああ、俺もそう思う」


「俺だって、敵と戦う時はスポーツマンシップを持って戦うんだけど、化け物のお前と戦うんだから仕方無いよなあああ!!」


「俺はもう前までの自分に戻れない!!」


「あはははははははは、死ねい!!!」

 火の刃の生成、飛ばすスピードを上げると風のバリアと打つかる事で起きる音が聞いた事の無い音が鳴り響いた。




 十分後…。


 風のバリアが弱まり無数の深い赤色の火の刃が突き刺さっていた。風のバリアはガラスのように割れ、中が見えた。


「はあ、はあっ、はあ、はあっ…」

 運命王クロムは片膝を地に突けて荒い呼吸をしていた。クロムの身体には無数の火の刃が突き刺さっていた。


「先の攻撃を耐えるとは中々の物だ。流石、化け物と言った所か…」


「まだ戦うか?」

 僕は聞いた。


「ああ、戦おう」

 クロムは構えた。


(勘弁してくれ)

 僕はそう思いながらも構えた。

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